■企業業績悪化、商品値上げ、消費減退…「悪い円安」が日本経済を襲う
Yahoo!ニュース 2021/12/8 週刊ポスト
https://news.yahoo.co.jp/articles/069fea62a531fcb618a7a34852de5b9c1e6eaa4e
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原油価格の高騰もあって、ガソリン代や日用品が値上がりしている。
賃金が上がらないなかで、物価が上昇すれば生活は苦しくなる一方だが、はたして、今後の日本経済はどうなるのか。
経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。
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本稿執筆時点で、外国為替市場の円相場は1ドル=113円台後半の円安ドル高で推移している。
日経平均株価は3万円を割り込んだままで、日本国債の値下がりも進み、日本は円安・株安・債券安の「トリプル安」に見舞われている。
その一方で、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んで世界的に経済活動が再開したため、原油の需要が急拡大して原油価格が高騰し、欧米ではインフレ傾向が強い。
日本も円安が重なってエネルギー価格や原材料などの輸入品価格が上昇し、インフレになる可能性が高まっている。
周知の通り、日本銀行は2013年1月から2%の物価上昇率目標を実現するために大規模な金融緩和を続けているわけだが、これから怖いのは欧米との相対的な金利差でさらに円安が進み、インフレに歯止めがかからなくなることだ。
しかも、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が量的緩和の規模を縮小して2022年からゼロ金利を解除(利上げ)する方針を明らかにした。
アメリカの金利上昇は世界的な金利上昇につながるので、日本も利上げに踏み切らざるを得なくなるだろう。
金利上昇は、過去最高の1992兆円(2021年6月末時点)に膨らんでいる個人金融資産を消費に出動させるためには追い風となる。
しかし、世界の資金が米ドルに還流してアメリカのインフレが加速すれば、日本も国内需給とは関係なく、アメリカに誘発されたインフレになる。
それがコントロール不能な状況に陥ったら、国債を大量に抱え込んでいる日銀がインプロージョン(内部爆発)を起こしてジ・エンドだ。
その時は、公的年金積立金の50%を国内の債券と株式で運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も道連れである。
そもそも安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」とそれに呼応した日銀の黒田東彦総裁による異次元金融緩和の「アベクロバズーカ」は、円安とインフレを誘導するためだった。
つまり、円安で輸出産業が潤えば賃金が上がり、景気が良くなるという論理だった。
しかし、アベノミクスのスタートから9年が経過しても、そうはなっていない。
結果的に今は原材料の輸入コスト高による企業の業績悪化、商品の値上がり、家計へのシワ寄せ、消費減退など、円安のメリットよりデメリットのほうが大きい「悪い円安」になっている。
しかも、日本の賃金は20年以上にわたってほとんど上がっていない。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、日本の一般労働者の2020年の平均月給は30万7700円で、2001年からわずか1900円増えたにすぎない。
また、OECD(経済協力開発機構)の調査では、2020年の購買力平価ベースの平均年収は、日本が35か国中22位の3万8515ドル、韓国が19位の4万1960ドル、OECD平均が4万9165ドル、1位のアメリカが6万9392ドルである。
日本の平均年収は、韓国より約40万円、OECD平均より約120万円、アメリカより約350万円も低くなってしまったのだ。
安倍元首相は、在任中にアベノミクスの成果を強調して「今世紀に入って最も高い水準の賃上げを実現している」と繰り返し喧伝していた。
それに対して私は本連載で賃金の国際比較を示して何度も反論してきたが、結局、安倍元首相は自らの非を認めていない。
岸田文雄首相も基本的にアベノミクスを継承する方針だから、結果は同じだろう。
現在の円安は日本の国力が衰えていることの象徴である。
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企業業績悪化、商品値上げ、消費減退…「悪い円安」が日本経済を襲う
Yahoo!ニュース 2021/12/8 マネーポスト
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