角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#146 寄贈or略奪?アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ

2016-06-05 07:01:24 | ぶらり図書館、映画館
〈数奇な運命を辿った名画に秘められた真実の物語が、今、明かされる──。〉

『黄金のアデーレ 名画の帰還』観ました。

〈20世紀が終わる頃、ある裁判のニュースが世界を仰天させた。アメリカに暮らすマリア・アルトマン(82歳)が、オーストリア政府を訴えたのだ。
 “オーストリアのモナリザ”と称えられ、国の美術館に飾られてきたクリムトの名画〈黄金のアデーレ〉を、「私に返してほしい」という驚きの要求だった。伯母・アデーレの肖像画は、第二次世界大戦中、ナチスに略奪されたもので、正当な持ち主である自分のもとに返して欲しいというのが、彼女の主張だった。共に立ち上がったのは、駆け出し弁護士のランディ。対するオーストリア政府は、真っ向から反論。
 大切なものすべてを奪われ、祖国を捨てたマリアが、クリムトの名画よりも本当に取り戻したかったものとは──?〉

(黄金のアデーレ 名画の帰還 公式サイト;作品情報
 →http://golden.gaga.ne.jp/about.html

という映画で、

〈二つの国と時代をドラマティックに行き来し、判決の興奮とその予想外の余韻を見事に描き切る。最後に明かされる真実は、観る者に前へと進む力 をくれる希望と感動の実話ヒューマンドラマ〉

になってます。

看板に偽りナシ。
良い映画でした。

とくに物語の背景に関する知識がなくても大丈夫だと思いますが、

第二次大戦期のオーストリアの歴史だったり、
クリムトの絵画や、シェーンベルクの音楽に興味のある人には、
さらに楽しめると思います。

マリアとランディは、
米国内でオーストリア政府を訴えることになるわけですが、
それを受理するかどうか自体が最高裁判所まで争われます。

国と国との関係や、
法の適用はどこまで「遡れる」のか、
という、まあ、難しく込み入った話なわけですが、

以下、遣り取りの一部です。

ランディ「主席判事 そして皆さん
     “免責法”は“過去に遡る”だけのものでしょうか?」

主席判事「“過去にも遡れる”という言い方もできる
     “どういう場合に司法権を行使できるか”が問題なのかな?」

ランディ「・・・ご質問の意味が分かりません」

主席判事「・・・私にも分からん 分かる者は?」

ランディ「政府の懸念は よく分かります
     “虫の入った缶を開ける とその始末が大変”
     しかしオーストリアと米国は協定国で 協定法も整備されている
     缶を開けて 虫を1匹つまみ出して すばやくフタを閉めればいいんです
     被告側は我々を牽制しようと 国際紛争の危機まで持ちだした
     冷静に考えてください
     これは自分の物の返還を求める 1人の女性の訴えです
     安らぎを求めて この国に来た女性です
     正義を与えて下さい」

主席判事「・・・ありがとう シェーンベルク君」


この後の展開は、楽しみにとっておくとして、

ナチス・ドイツ(オーストリア)が「統治行為」として繰り広げた、
ユダヤ人(および他の少数民族)に対する迫害・虐殺と、

日本(人)が行った(とされる)諸々の事例(慰安婦募集とか捕虜虐待とか)との、
その違い(!)や、

ドイツは国家として謝った(それはウソなのだけれど)のに、
日本は謝罪していない(それもウソなのだけれど)のは何故なのか、

なんてことを考えてみるのも良いのではないかと、
映画を観ながら、ちょっと思いました。

黄金のアデーレ 名画の帰還 予告編


・・・ ・・・ ・・・ ・・・

*こちらは、肖像画それ自体の運命について、すっきりと整理された記事です。

 ウィーン発 ボウ:VOL.22 さよならアデーレ
 →http://www.officeboe.co.jp/wien/wien22.html



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