角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#193 書庫の片隅から『この世界の片隅に』。こうの史代さん原作コミック

2017-04-16 07:24:57 | ぶらり図書館、映画館
映画『この世界の片隅に』東京テアトル(2016)*1


我ながら、
猛烈に今更感漂いますが、
今日は『この世界の片隅に』についてのお話です。


まずは、この予告編を。

『この世界の片隅に』(11/12(土)公開)本予告

*2


いや世の中、
何が起きるか分かりませんね。

実は、こうの史代さんの原作コミックがウチにありまして、
買ったのは(ウチの)奥様なんですが、

「上・中・下、全部初版(第1刷)だからね」

なんて自慢してます。

本当言うと、
上・中巻は、発売から1年後くらいに、
某リサイクル書店で入手したものなんですが、

ま、そこは良いでしょう。


というわけで、
『この世界の片隅に』の原作コミックから、
あくまでも主観的に(!)、良いなあと思った場面をご紹介します。




『この世界の片隅に』〔上〕 2008年2月12日 第1刷発行


第9回 19年5月 主人公すずと、その義母の会話より。

(「昭和19年 皇紀2604年 5月27日 土曜 海軍記念日」のひめくり)

有難うね すずさん

ここは周作さんとお姉さんの母校なんですね

ええ
尋常小学校から国民学校へ変わっても ここは昔のまんまじゃ
・・・周作が4年生の時 うちの人が一ぺん解雇されてね
同じ組の人も ようけ失業して引っ越しんさった
大ごとじゃったよ
大ごとじゃ思うとった あの頃は
大ごとじゃ思えた頃がなつかしいわ



欄外に、
〈昭和5年(1930年)ロンドン会議での軍縮条約により、呉海軍工廠(軍直属の工場)はその翌年4千人近くを人員削減しました。この条約は、昭和11年の暮れに失効となります〉
という解説があります。

政治が庶民の暮らしに影響を与える、
それは避けられないことですね、
けど、それもどうってことはないのかも、

という描写でしょうか。



この世界の片隅に 中 2008年8月11日 第1刷発行


第15回 19年9月 すずと、その夫(周作)との会話より。

(呉の繁華街。「歓迎!海ノ勇士」というのぼりが立ってます)

すずさん?

あの・・・小学校の同級に水兵さんになったんが居って 会うたらどうしよう思うて・・・

へ? どうしようって 普通に挨拶したらええが 何も恥ずかしい事あるまいて

はあ ほうなんですが ほいでも何か・・・
夢から覚めるとでも思うんじゃろか

夢?

住む町も仕事も苗字も変わって まだ困る事だらけじゃが 
ほいでも周作さんに親切にして貰うて お友達も出来て
今 覚めたら面白うない 今のうちが ほんまのうちならええ思うんです

・・・なるほどのう
過ぎた事 選ばんかった道 みな 覚めた夢と変わりやせんな
すずさん あんたを選んだんは わしにとって多分 最良の現実じゃ



こういう感じ、好きなんです。




この世界の片隅に 下 2009年4月28日 第1刷発行

第43回 水鳥の青葉(20年12月)すずと近所のおばさんの会話より。晴美さんというのはすずの姪

欄外解説
〈青葉は19年12月に負傷して帰港以後は「特殊警備艦」として軍港近くに繋留されました。7月の呉沖海空戦に参戦、切断・着底〉
〈終戦前後は食糧だけでなく調味料も不足しました。海水を味付けに使ったりしましたが、尿から食塩を抽出する方法まで新聞に紹介されたりしています・・・〉


北條さんは知らんかね
8月に隣保館の横で 兵隊さんが行き倒れとったんじゃが
どうも4月に陸軍へとられて広島へ行ったうちの息子じゃったらしい
あの子の友達から 9月に貰うた手紙でようやっとわかった
自分の息子じゃと気づかんかったよ うちは
あんたも目の前で晴美さんを・・・
さぞや無念じゃったろうね

・・・はい
なんでうちが生き残ったんかわからんし
晴美さんを思うて泣く資格はうちにはない気がします
でもけっきょく うちの居場所はここなんですよね
生きとろうが 死んどろうが
もう会えん人が居って ものがあって
うちしか持っとらんそれの記憶がある
うちはその記憶の器として この世界に在リ続けるしかないんですよね
晴美さんとは一緒に笑うた記憶しかない
じゃけえ笑うたびに思い出します
たぶんずっと 何十年経っても

うんうん ほんまよ・・・
だいいち 泣いてばかりじゃ勿体ないわい 

塩分がね



ホントにね、
何気ない日常を淡々と描いているのですが、
しみじみとくる場面が時々紛れ込んでる、
油断ならないコミックです。

真に「反戦・平和」を願うなら、
直接ソレを叫んだり、大勢で練り歩いたりするのは、
やっぱり、ちょっと違うよなあ、と改めて思いました。


長らく、
ウチの書庫(物置?)の片隅に埋もれていたコミックですが、

映画が話題になったのを機に引っ張り出され、
長女と次女が読みました。

ちなみに映画は、
次女が映画館で観ました。「良かったよ〜」だそうです。
自分はレンタル始まるのを待ってます。


ああ、それにしても、
映画制作費のクラウドファンディング、
知ってたら「投資」したのになあ。




*1)映画.com:この世界の片隅に
http://eiga.com/movie/82278/

*2)映画『この世界の片隅に』公式サイト
http://konosekai.jp/


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