角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#165 ソレはそれだけじゃない・・・『誤解だらけの遺伝子組み換え作物』

2016-09-18 06:32:49 | ぶらり図書館、映画館
『誤解だらけの遺伝子組み換え作物』



〈遺伝子組み換え作物の実態に、総勢30名のジャーナリストが迫る!〉

〈日本と海外のジャーナリスト、学者、消費者、生産者の総勢30人が科学的な事実に基づき、
 日本を含む世界の現状を分かりやすく紹介した画期的な内容!〉


(エネルギーフォーラム:誤解だらけの遺伝子組み換え作物
 →http://www.energy-forum.co.jp/eccube/html/promotion/

看板に偽りなし!

何はともあれ、目次を。


Ⅰ部 なぜ誤解はいつまでも続くのか?
 ―遺伝子組み換え作物に関する論争 小島正美

Ⅱ部 日本ではなぜ理解が進まないのか?
 1章 遺伝子組み換え作物とは何か?
 2章 生産者と消費者の目
 3章 記者たちはどう見ているのか?

Ⅲ部 遺伝子組み換え作物の真実
 序章 つくり話からの解放
 1章 遺伝子組み換え作物は怖くない
 2章 21の問い
 3章 人間の進化と遺伝子の移動
 4章 巨大企業と表示の義務化論争
 5章 科学をゆがめているのは誰か?



で、それぞれの章にいくつかの論文・論考が編まれているのですが、
真面目に読むと、相当に時間がかかりますね。


なので、個々の内容というよりは、
編者の姿勢についてご紹介しようと思います。

何しろ今日、
「誤解だらけ」は、遺伝子組み換え作物に限ったことではないので。


さて編者、小島正美さん(毎日新聞記者)ですが、

「Ⅰ部 なぜ誤解はいつまでも続くのか?―遺伝子組み換え作物に関する論争」の、 
「はじめに」で、正直に書いています。

なぜ、この本を世に出すのか。
それは、大半の人が遺伝子組み換え作物の実態をよく知らないからだ。でも、本当のことを言えば、私自身も以前はよく知らなかったことを告白したい。

左派的な市民団体に共感
考えてみれば、恥ずかしいことに、それまで私は一度も組み換え作物の現場を見ることなく、マイナス面ばかりを書いてきた。つまり、左派的な市民団体に共感し、市民団体が用意した資料やデータを基に記事を書いていたわけだ。
では、なぜ市民団体に親近感をもっていたのかといえば、良い記事(カッコよい記事)というのは、「市民(または弱者)の視点にたつこと」と「市民の共感を得ること」の2つが重要だと考えていたからだ。

現場を知らない記者が偏った情報を発信
過去の私がそうだったように、組み換え作物に関するニュースを発信する記者たちが、組み換え作物に関する正確な知識をほとんどもたず、知識不足に基づく偏った情報を流しているからだ。
日本には新聞、テレビ、週刊誌の記者だけでも1万人以上はいるだろうが、組み換え作物の現場を見たことのある記者は、おそらく30人以下だろう。肝心なニュースを伝える記者のほとんどが組み換え作物の現実をよく知らないわけだから、しっかりした情報が市民に届くことはありえない。偏っているのは、むしろメディア側の人間かもしれない。


最近は、もうロクな人がいないと思っていた新聞記者さん達ですが、
少し、希望を持ちました。

小島さんに倣って、
原子力発電とか、放射性物質とか、あるいは沖縄とか、
色々、誤解を解こうとする記者が現れると良いんですけどね。


あと、
個々の論文からは、マイク・ベンジーラさん(大学教授)の、
「遺伝子組み換え作物を知る」だけご紹介します。

科学的な説明というよりも、
それを受け取る側の姿勢についての話で、
彼が大学の授業で話したことを記しています。

「どんな主張であれ、必ずそれに関する研究と称するものが見つかるものだ。問題は、その研究報告を自分で読んだのか、それとも、人の言うことをオウム返しにしているだけかということだ。実際、あんなもの読めるのか? 告白するが、君が言っている研究のいくつかを読んで見ようと、私も挑戦してみたがね、何を言っているのか、さっぱり分からなかったよ。自慢じゃないが、私は英語学の修士を持っているのだけどね」。

「次に、自問すべきは、それらの研究の正否を評価する知識や資格が自分にあるのかということだ。もちろんない。この教室の中の誰も、ある科学研究が適正に行われたのかそうでないのか、適切な対照実験が行われたのか等々、判断できない」。

「私たちは、一般人だ。必要な知識があるわけがない。私は、君が言っていた研究に感銘は受けなかったけど、遺伝子組み換えに関する研究など何千件とあるからね。インターネットで調べて、丸1日かけて気に入ったものを選り分けて行けば、きっと君が信じたいこと、あらかじめ思い込んでいる通りの主張を支持するような研究結果が見つかるはずだよ」。



そうして、さらに、

私たちは、生来、信じやすい生き物なんだ。疑うことよりも信じることを選択しやすい。だから、君たちは一生涯をかけて、どのような信念を自分のものとし、何を唾棄すべきか、慎重に判断していかなければならない。

と説明しながら、以下の言葉を学生に聞かせます。

「一本の研究を信じてはいけない。必ず、その研究に反対する者を探し、なぜ反対しているのかを知るべし」
ハリエット・ホール博士Harriet Hall

「自分の頭にしまい込んでしまう前に、何を入れるかは極めて慎重に選択しなければいけない。ひとたび頭に入れ込んでしまったものは、決して出てこないから」
トマス・カーディナル・ウオルセイ氏 Thomas Cardinal Wolsey


で、最後にダメ押し。

「信念というものは、釣針のごときもの。呑み込むのは容易だが、咳払いくらいで厄介払いできる代物ではない」


なるほど、自戒、自戒、です。


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