角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#094 「難民救済」の善と偽善

2015-09-23 06:50:42 | メディア論
#refugeeswelcome(難民歓迎)
WIR HELFEN(私たちが助けます)

は、良いとして、
Bild(絵・写真・眺め・象徴)

・・・何それ?

実は、こんな風刺画を目にしまして。


「カイ・ディークマンが、“難民歓迎”キャンペーンで彼を聖人の列に加えられないかと問い合わせてきてるぞ」
「“善人面して”彼と話すことを提案しとけ」


くらいの意味になると思うんですが、
カイ・ディークマン?誰?

ということで、ちょっと調べましたら、
カイさん(なんか、カイ・シデンみたいなんで、さん付けで)、
「BILD」の編集長だそうで、
何となく、事情が見えてきました。

風刺画の方は、
ドイツの週刊誌「DER SPIEGEL」のモノです。
(Wikipedia:デア・シュピーゲル→https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%AB

’15-9/19号は、(↓)こんな表紙。


マザー・テレサの格好をしたメルケルさん(独首相)ですね。
「Mutter Angela Merkels Politik entzweit Europa」
(マザー・アンゲラ メルケルの政策がヨーロッパを分断する)
なんてタイトルを打ってます。
(SPIEGEL ONLINE→http://www.spiegel.de/)

一方の「Bild」はタブロイドの日刊新聞。
(Wikipedia:ビルト(新聞)→https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%AB%E3%83%88_(%E6%96%B0%E8%81%9E)

'15-9/17付が、(↓)こんなでした。


中段には、
「Krawalle an Ungarns Grenze」
(ハンガリー国境で騒乱)
とあります。
(Wild.de→http://www.bild.de/

実は、ドイツではこんな話があったそうです。

〈ビルトはドイツサッカーリーグ機構(DFL)、さらにブンデスリーガのスポンサーを務める物流会社ヘルメス(Hermes)の協力の下、ブンデスリーガ1部と2部の全クラブが、今週末のリーグ戦で「WIR HELFEN #refugeeswelcome(われわれが助けます #難民の皆さんようこそ)」というロゴが入ったユニホームを着用するというキャンペーンを立ち上げていた〉

〈ビルトは過去に難民の受け入れに対して否定的な記事を掲載しており、今回の「われわれが助けます」キャンペーンでは、ワッペンに同社のロゴも小さく入っていることから、危機を利用してイメージをV字回復させようという意図が透けて見えるとの声も出ている〉

〈こうした批判があるなかで、ビルトのカイ・ディークマン(Kai Diekmann)編集長は16日、ツイッター(Twitter)に「ザンクトパウリが#難民は御免と言って『われわれが助けます』キャンペーンをボイコットしている。難民に心を寄せられないとは、なんたる恥!」と投稿して火に油を注ぎ、ドイツのサッカーファンの怒りを買った〉


(AFPBBNEWS:ビルトの難民支援にノー、クラブとファンの一部がオウンゴール浴びせる
 →http://www.afpbb.com/articles/-/3060919

ああ、なるほど。

「高級」週刊誌と「大衆」タブロイド紙、なので、
別段ライバル関係ということでもない、と思いますが、
メディア同士、やり合っているのですね。

けれど、
開けっぴろげで何となく羨ましい感じ。

それこそ「ドイツを見習え」と、
日本のメディアに言ってやりたいくらいのモンですね。

ちなみに、
BildのTwitterは、今(↓)こんな写真を使ってます。

(→https://twitter.com/BILD

で、
その編集長カイ・ディークマンさんのが(↓)これ。

(→https://twitter.com/KaiDiekmann

い、いやあ、潔いですねえ。

所属する会社と、編集長とはいえ個人のページ、
一心同体?
いや、公人としてツィートしてるのかな。
私には、ちょっと真似できない。
(無名なので、真似する意味がないのだけれど)

ここまでヤレちゃうからこそ、
風刺画の対象にもなるのでしょう。

まあ「ジャーナリスト」としては、
それもある意味、名誉なことなのかも、です。

ところでカイさん、
(↓)こんなツィートもしてました。


1 Mio Fluechitlinge auf dem Weg zu uns.
Wer sind sie? Woher kommen sie? Was erwarten sie?
BILD stellt 33 von ihnen vor

(100万人が私たちのところへ向かっています。
 彼らはどういう人?どこから来たの?何を待っているの?
 ビルトは、彼らの内33人を紹介します)


・・・ ・・・ ・・・ ・・・

彼を偽善者だと言うのは簡単です。
実際、そうなのかもしれません。

ただ、もし、
公的機関に頼ることなく、個人として、
この33人に救いの手を差し伸べる人が出てくるのなら、
それは、やっぱり素晴らしいことだと思います。

偽善でも、善は善。
売名行為だとしても、
それで人を救えるのなら、貴いことに違いありません。

例によって、
「ドイツを見習え」「政府が何とかしろ」
なんて言うだけで、

自分は何もせず、お金も出さない人よりは、
よっぽどマシでしょう。

偽善を許せない、
というなら、
そうでない仕方というものを見せてほしい。

実際、件のキャンペーンに参加しなかったクラブも、
他の方法で難民支援に取り組んでいるわけですから。

ただ希望としては、
カイさんも、人に呼びかけるだけでなく、
自分自身が、一人でも二人でも、
その人が自立するまで(!)支援してほしいとは思いますね。

であれば、言動に説得力も出てくるし、
それこそ、聖人に列せられるかもしれません。

ただねえ、
難民の「救済・支援」は、
所詮、対症療法でしかないんですよねえ。
これ以上難民が生じないようにしないと。

そこは、人道的なだけでは済まないことがあるだろうし、
時には、偽悪的な言動が必要な場合も出てくるでしょう。

こんな「揺り戻し」も起きてるようですし。
〈「欧州はこれまで、ドアを開けていただけでなく、招待状を送っていた。欧州は裕福だが弱い。これは最悪の組み合わせだ。欧州は国境を守るため、もっと強くならなくてはならない」〉
(AFPBNEWS:ハンガリー議会、軍に国境での武器使用認める新移民法を可決
 →http://www.afpbb.com/articles/-/3060933

怖いとふるえてても、
戦争嫌だと叫んでても、
現実はひとつも変えられないということだけは、
忘れちゃいけませんね。


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