手術台からキャスターの付いた電動ベッドに移されて、ナースセンターの隣の病室に運ばれた。点滴、導尿管、心電図などのコード類に囲まれ、ナースが入れ替わり様子を見にくる中、途切れ途切れだが、寝ることができた。
入院した翌朝、緊急入院したために朝食が用意されないので、妻が買ってきたホットドッグと炊き込みご飯のおにぎりを二つ食べた。前日の昼の食事以降、何も口にしていなかった。
昼食から病院常食が開始となった。
排泄に関して尿はチューブからバッグに勝手に溜まっていくので心配ないが、問題は便だった。
ナースにトイレに行きたいと訴えたら、おむつでしてくださいと言われた。
入院三日目、長男、長女、次男にラインでバイク事故の報告をした。メーンバンクの担当者や自動車保険の社員、交通課の警察官とのやり取りで少し気が紛れた。
前日から我慢していた排便は尊厳にかかわるので、新人ぽいナースに当たったときに車椅子でトイレに連れていって欲しいと願い出た。
ベッドから車椅子に何とか座ることができたので、右脚の格子状のロッドを右手で掴んで持ち上げ、ナースに車椅子を押してもらって病室を出た。
車椅子のまま入れる広い個室トイレに入ると、左脚で上体をさええながらくるりと回って便座に腰かけることができた。
ナースが「終わったらコールボタンを押してください」と言って私を一人にしてくれた。トイレで用を足すことができて入院生活に自信がついた。
入院四日目、ナースセンターとなりの三人部屋から一般の四人部屋に移動した。
コロナ禍以降、外部の人とは面会室でしか会えない決まりだが、銀行の担当者二人と病室で書類のサインや捺印のやり取りをした。
入院六日目、リハビリを開始した。
ナースと車椅子で4階の病室から一階のリハビリセンターに移動した。
平行棒の入り口に車椅子を停めてタイヤをロックすると左右の平行棒を両手で掴み、車椅子から立ち上がっては、座ることをを30回繰り返した。
車椅子なしに移動がままならない生活が始まり、次第に車椅子が体の一部になっていった。