北関東の宮彫・寺社彫刻(東照宮から派生した宮彫師集団の活躍)

『日光東照宮のスピリッツ』を受けついだ宮彫師たち

小澤半兵衛  實相寺一切経蔵(静岡県富士市)

2020年07月29日 | 各論 その他
北関東から離れますが、伊豆半島の南の江奈(現松崎町江奈)生まれの名工一族がいます。石田半兵衛(邦秀)で、師匠筋は小沢流であったため小澤姓を職姓として名乗っています。小沢流は初代五右衛門常信(宝暦10年没)、2代常足、常寧、常高と続いていますが、その本流の足跡は不明な点が多いです。二代常足の弟子の一人、諏訪立川流の祖・立川和四郎冨棟や、他の弟子 高田体章勝蔵は千本(せんぼ)の流れで山梨県都留市の生出神社本殿を後藤本流二代、三代兄弟と関わっています。小沢、後藤が静岡、山梨に進出していた形跡があります。北関東で始まった宮彫の革命的な技が静岡、山梨へ広げた立役者が小沢流かもしれません。小沢流の解明が進めばと思います。その流れの末になる小澤半兵衛の関わった建造物を紹介します。繊細な秀作だと思います。

・實相寺 一切経蔵の向拝部


中備「七福神」








裏の刻銘「豆陽江奈 小澤半兵衛作」


木鼻周囲 「獅子」「象」








左手挟
 内側




 外側


右手挟
 内側




 外側


身舎の梁の陰刻 「獅子に牡丹」






小澤半兵衛邦秀
 石田姓ですが、職姓で小澤を名乗っています。父も半兵衛を名乗り彫工でした。邦秀は、享和元年(1801)頃の出生と推定されています。この實相寺の仕事は安政期頃とされています。明治四年(1871)に山梨で没。長男馬次郎(信秀、一仙)、二男富次郎(希道)、四男徳蔵(俊秀)、五男金次郎も彫工になっています。

参考文献
松崎町文化財専門委員会、『堂宮彫刻師 石田半兵衛一族とその作品』、昭和53年

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