旅とエッセイ 胡蝶の夢

横浜在住。世界、50ヵ国以上は行った。最近は、日本の南の島々に興味がある。

毒婦列伝 

2016年09月23日 19時28分30秒 | エッセイ
毒婦列伝   

 悪女、毒婦は昔から人気がある。けれども日本の悪女はスケールが小さい。権力を握って国家を牛耳るような女は、源頼朝の妻、北条政子くらいか。しかし一概に悪女とはいいかねる。お家の為とかつまらん。自分の欲望、嫉妬で色狂い、殺戮三昧をやらなきゃ稀代の悪女にはなれない。春日の局にしても、弓削道鏡にメロメロになった孝謙天皇にしても、悪女とは言いきれない。この二人は自分で手を血に染めていない。春日の局は旦那の妾を刺したっけ。
 則天武后や西太妃、皇帝ネロの母親アグリッピナ、サン・バルテルミの虐殺のカトリーヌ・ド・メディシスといった凄まじいのは、日本では出てこなかった。江戸から明治の始めにかけて活躍?した毒婦も、政治とは関係のない犯罪者たちだ。彼女たちは皆美人だった、ということになっている。

*高橋お伝 : 嘉永3年(1850年)現群馬県生まれ。同郷の男性と結婚して横浜に移るが、夫がらい病を発病して死去。その後妾や街娼になり、やくざ者と恋仲に。借財が重なり、古物商に借金の相談をしたところ、愛人になるなら金を貸すと言われる。申し出を受け入れて同衾したら、翌朝になって金は貸せないと言いだしたため、怒ったお伝は剃刀で古物商の喉を切って殺害。財布の金を奪って逃げた。
明治12年に死刑判決。八代目山田浅右衛門の弟により斬首刑に処された。日本で最後に打ち首となった女囚。仮名垣魯文の小説で有名になった。
遺体は解剖され、性器の標本が保存されたと云う。

*雷お新 : 明治時代の盗賊の女頭領。土佐藩士の娘に生まれた。年少より美少女として有名で、抜きん出た美貌の持ち主であった。18歳で大阪に出て窃盗や恐喝などの悪事を重ねた。武士の娘が盗賊の頭になる。幕末だな。子分がついて姐御となり、全身に隙間なく入れ墨を入れた。図柄は金太郎、弁財天、北条時政(何故?)、竜に雲、大蛇退治、波や緋桜。大柄な女性であった。
  お新は美貌を武器に金持ちに近づき、宿に連れ込んで刺青を見せて凄み、有り金を巻きあげた。伊藤博文もやられた。ザマミロ。
  明治7年に逮捕、脱獄、再逮捕。明治22年に赦免され翌年病死。享年41。
  遺言により刺青が保存された。首の付け根から両腕の肘、両足の踵までの皮膚が剥がされてなめし皮にされた。この刺青は大坂医科大学で保存され、大坂や神戸の博覧会に出品された。

*姐己のお百 : 漁師の私生児。女郎、廻船問屋桑名屋徳兵の妾、海老屋仲居頭、揚屋尾張屋清十郎の妻、そして武家の妻。江戸時代のドリーム、女版出世物語のような女性だ。器量と才覚の賜なのだろうが、廻りの小人どもの嫉妬を買ったのだろうよ。講談・狂言・怪談噺で悪女として伝えられた。

ちなみに姐己は、中国の殷王朝の妃で絶世の美女だが笑わないしほとんど話さない。或る時、地方で反乱があり諸侯が都に駆け付けた。するとその混乱と騒ぎの中で姐己がチラっと微笑みを片頬に浮かべた。その凄絶な美しさに魅せられた王が、何度も反乱の報せを諸侯に発し、軍勢を都に集めるが姐己は二度と笑わない。余りに度々報せを出すので、しだいに諸侯は都に集まらなくなった。そこで本当の反乱が起こり、諸侯を呼ぶが誰も来ない。反乱軍が都に攻め込み、宮殿に火を放つと突然姐己が声を上げて笑い出した。

*鬼神(きじん)のお松 : 歌舞伎・読本・錦絵などで石川五右衛門、自来也と並び「日本三大盗賊」として描かれる女盗賊。資料が乏しく、架空の人物と思われる。元は深川の遊女で、亡父の髑髏を抱いて寝るうちに妖艶さを身に付け「髑髏のお松」の異名を持つ。

他に、生首お仙というのがいるらしいが資料が見つからない。誰か、生首お仙を知りませんか?

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