大阪北部地震からまもなく一年。神戸大海洋底探査センターの巽好幸(たつみ・よしゆき)教授のチームが、大阪湾海底全域の活断層を調査するため、クラウドファンディングによる資金提供を呼び掛けている。6月5日午前、目標金額の約86%となる約173万円が集まっている。6月12日までに目標の200万円に到達するか、注目だ。1口1000円からと、学生でも手軽に寄付できる。大阪湾海底探査は9月に神戸大の練習船「深江丸」で行われる予定。
都市部直下、震度6弱の衝撃 大阪北部地震から1年
6人の死者を出した大阪北部地震。6月18日で一年になる。当時、大阪で地震が起こる確率は低いとされ、ほとんど警戒されてない中で起こった最大震度6弱(大阪北区、高槻、枚方、茨木、箕面)は、市民に大きな衝撃を与えた。
兵庫でも尼崎、伊丹などで震度5弱、神戸市東灘区、灘区で震度4を観測するなど、関東から九州北部の広域にわたり揺れを観測。住宅被害は3万3000棟に及んだ。
この地震を引き起こしたのは、人口密集地の大阪北部の地下13㎞の断層だった。
(近畿の活断層 ☆印が大阪北部地震の震源)
断層が密集する近畿 「未知の活断層を調べたい!」
現在確認されている近畿の活断層には、有馬・高槻断層帯、生駒断層帯、上町断層帯などが知られている。しかし、大阪北部地震はこれらの活断層が動いた証拠はないと、政府の地震調査委員会は見解を示した。
近畿には未知の活断層がいくつも存在するといわれている。フィリピン海プレートとユーラシアプレートの押し合いによる強大なエネルギーが、中央構造線を境にひずみを生みだしているのが理由とみられている。
今後、どのような地震が近畿を襲うのか?大阪湾にも断層帯の存在が指摘されているが、詳しい調査はされていない。
市民に危機意識を クラウドファンディングの手法で
神戸大海洋底探査センターセンター長の巽教授は、この大阪北部地震をきっかけに、大阪湾の全域にわたる海底の地下構造探査を決意。クラウドファンディングでの資金提供を募った。クラウドファンディングの手法を選んだのは、一般の人々にも災害に対する危機意識を持ってほしいという思いからだ。
「大阪地震から1年たったが、地震を覚えているのは被災した人たちだけ。クラウドファンディングは、世の中に(地震への危機意識を)広げるチャンスだった」という。
(神戸大海洋底探査センターの巽教授)
目標まであと一歩 1週間で26万円を
クラウドファンディングは6月12日19時まで行われている(募集サイト:https://academist-cf.com/projects/111?lang=ja )。6月5日午前11時現在、173万5000円が集まっていて、目標の86%まで到達し、サポーターは89人に上る。あと1週間で、目標の200万円を達成できるか、注目だ。寄付は、銀行振込、またはクレジットカードで、1000円、5000円、1万円、3万円、5万円、10万円、20万円、30万円、50万円のランクがある。
「深江丸」で人工地震 画像化してキャッチ
調査の手法は船を使った人工地震。「深江丸」に調査員が乗り込み、エアガンという装置で圧搾空気を海底に向けて放出。人工地震を発生させることで、海中に微弱な振動を出し、その反射波を解析することで地下構造を逐次モニターに映す。近年は装置の精度が上がり、海底下300mの地下構造を高解像度で画像化することができるようになったという。この深さまで解析すれば、過去数十万年間に活動した断層を捉えることが可能だ。
調査は今年9月ごろに行う予定で、大阪湾全域を約1、2週間かけて調査し、来年の春に行われる日本地球惑星科学連合大会で発表する予定だ。
(圧搾空気を海底に向けて放出し人工地震を発生させ、その反射波を解析することで地下構造を画像化する)
災害をどう迎え撃つか 「日本人の危機意識や無常観にもスポット当てたい」
巽教授は自らの分野を“マグマ学”と呼び、火山やプレートの動きについての研究を重ね、火山や断層による地震の危険性を唱えてきた。しかし、火山の噴火や近畿での地震の発生確率は、南海トラフ地震の発生確率(30年で80%)と比べ非常に低い。そのため、危機感が伝わりにくく、現状では国民や国にも軽視されていると指摘する。
「日本は自然から恩恵を受けているわけだから、試練に対してもきちっと対応するのは(日本人の)当然の義務。みんなが災害を意識すれば国にも届くようになる」と巽教授。
科学として調査をやるのは当然のこととしながら、「(それだけじゃなく)日本人の意識がどこから来ているのかを分析し、日本人の意識を変えていくことも大事」と続ける。次の出版物は、日本人の「無常観」と災害についての本を予定している。<森岡聖陽>
了
都市部直下、震度6弱の衝撃 大阪北部地震から1年
6人の死者を出した大阪北部地震。6月18日で一年になる。当時、大阪で地震が起こる確率は低いとされ、ほとんど警戒されてない中で起こった最大震度6弱(大阪北区、高槻、枚方、茨木、箕面)は、市民に大きな衝撃を与えた。
兵庫でも尼崎、伊丹などで震度5弱、神戸市東灘区、灘区で震度4を観測するなど、関東から九州北部の広域にわたり揺れを観測。住宅被害は3万3000棟に及んだ。
この地震を引き起こしたのは、人口密集地の大阪北部の地下13㎞の断層だった。
(近畿の活断層 ☆印が大阪北部地震の震源)
断層が密集する近畿 「未知の活断層を調べたい!」
現在確認されている近畿の活断層には、有馬・高槻断層帯、生駒断層帯、上町断層帯などが知られている。しかし、大阪北部地震はこれらの活断層が動いた証拠はないと、政府の地震調査委員会は見解を示した。
近畿には未知の活断層がいくつも存在するといわれている。フィリピン海プレートとユーラシアプレートの押し合いによる強大なエネルギーが、中央構造線を境にひずみを生みだしているのが理由とみられている。
今後、どのような地震が近畿を襲うのか?大阪湾にも断層帯の存在が指摘されているが、詳しい調査はされていない。
市民に危機意識を クラウドファンディングの手法で
神戸大海洋底探査センターセンター長の巽教授は、この大阪北部地震をきっかけに、大阪湾の全域にわたる海底の地下構造探査を決意。クラウドファンディングでの資金提供を募った。クラウドファンディングの手法を選んだのは、一般の人々にも災害に対する危機意識を持ってほしいという思いからだ。
「大阪地震から1年たったが、地震を覚えているのは被災した人たちだけ。クラウドファンディングは、世の中に(地震への危機意識を)広げるチャンスだった」という。
(神戸大海洋底探査センターの巽教授)
目標まであと一歩 1週間で26万円を
クラウドファンディングは6月12日19時まで行われている(募集サイト:https://academist-cf.com/projects/111?lang=ja )。6月5日午前11時現在、173万5000円が集まっていて、目標の86%まで到達し、サポーターは89人に上る。あと1週間で、目標の200万円を達成できるか、注目だ。寄付は、銀行振込、またはクレジットカードで、1000円、5000円、1万円、3万円、5万円、10万円、20万円、30万円、50万円のランクがある。
「深江丸」で人工地震 画像化してキャッチ
調査の手法は船を使った人工地震。「深江丸」に調査員が乗り込み、エアガンという装置で圧搾空気を海底に向けて放出。人工地震を発生させることで、海中に微弱な振動を出し、その反射波を解析することで地下構造を逐次モニターに映す。近年は装置の精度が上がり、海底下300mの地下構造を高解像度で画像化することができるようになったという。この深さまで解析すれば、過去数十万年間に活動した断層を捉えることが可能だ。
調査は今年9月ごろに行う予定で、大阪湾全域を約1、2週間かけて調査し、来年の春に行われる日本地球惑星科学連合大会で発表する予定だ。
(圧搾空気を海底に向けて放出し人工地震を発生させ、その反射波を解析することで地下構造を画像化する)
災害をどう迎え撃つか 「日本人の危機意識や無常観にもスポット当てたい」
巽教授は自らの分野を“マグマ学”と呼び、火山やプレートの動きについての研究を重ね、火山や断層による地震の危険性を唱えてきた。しかし、火山の噴火や近畿での地震の発生確率は、南海トラフ地震の発生確率(30年で80%)と比べ非常に低い。そのため、危機感が伝わりにくく、現状では国民や国にも軽視されていると指摘する。
「日本は自然から恩恵を受けているわけだから、試練に対してもきちっと対応するのは(日本人の)当然の義務。みんなが災害を意識すれば国にも届くようになる」と巽教授。
科学として調査をやるのは当然のこととしながら、「(それだけじゃなく)日本人の意識がどこから来ているのかを分析し、日本人の意識を変えていくことも大事」と続ける。次の出版物は、日本人の「無常観」と災害についての本を予定している。<森岡聖陽>
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