現代の五十音図は、や行に「や、ゆ、よ」の三文字、わ行に「わ、を」の二文字しかないので、合計四十五文字しかなく、しかも、あ行の「お」とわ行の「を」は発音が同じなので、実は四十四音図ですが、昔はどうだったのでしょうか?
日本には、「神代文字」(かみよもじ)とよばれる古代の文字が伝わっており、『日本古代文字考』(落合直澄:著、吉川半七:1888年刊)という本に、その代表ともいえる「阿比留文字」(あひるもじ)の五十音図が載っているのでご紹介しましょう。
これは、現代人には見慣れない配置で書かれているので、これを次のように書き直してみると、その違いが明らかになります。
すなわち、古代の五十音図は、四十七音で構成され、や行とわ行に欠落がなく、逆にあ行には「あ」と「お」しか存在しなかったのです。
なお、わ行の発音は、「ゐ」はウィスキーの「ウィ」、「ゑ」はウェブカメラの「ウェ」、「を」は韓国の通貨ウォンの「ウォ」となります。
その後、奈良時代の初頭までに、や行の「い」とわ行の「う」があ行に移動し、次のような五十音図に変化したと考えられます。
これは、『日本古代語音組織考』(北里闌:著、啓光社出版部:1926年刊)という本に書かれている図表から私が推測したもので、この本では、古事記と日本紀について、和歌などの日本語の音韻を記述している部分にどういう漢字が使われているかを分析しているのですが、あ行の「え」の欄が空白になっているのです。
そこで、次回からは、あ行の「え」が本当に存在しなかったのかどうか検証していきたいと思います。
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