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カイユボット展

2013-12-30 23:00:40 | 一期一絵

12月17日(火)にブリジストン美術館にて開催されているこの展覧会を見にいってきました

会場は鑑賞者が多く訪れていましたが、作品はのんびり見るゆとりがありました。

カイユボットの作品は3年前に国立新美術館で開催された”オルセー美術館「ポスト印象派」”展で見たこの作品が印象に残ってました 

「床に鉋をかける人々」(この作品は今回の展覧会には出品されていません)
床のラインが遠近感をもたらしてくれる絵。暑い日だったのかな、上半身裸の職人さんが一心不乱に床の表面を削っている姿が印象的でした。

今回の展覧会では自画像から始まり、家族や親しい人の家庭内の情景の絵になり、屋外に出てパリの街の様子、さらに田舎の風景へと内から外へと絵とともに歩んでいくように展示されていました。
そして5歳下の弟マルシャル・カイユボットの写真も数多く展示されていました。


「自画像」1889年
内省的な雰囲気を持った風貌です


「昼食」1876年
ギュスターブの母ともう一人の弟ルネが描かれています。ルネはカイユボット家の次男で長男ギュスターブと三男マルシャルの真ん中の兄弟。不幸なことにこの絵のあと若くして他界されたそうです。
お母様の年齢は察するに50代だと思うのですが、もう少し年上に見えます。
手前のお皿が真上から描いているのに他の食器類はななめからの視点で描いているので黒い円卓がこちらに傾いているように見えてしまう。もちろん意図した構図だそうです。
その不思議な婉曲より気になるのは、執事が食事を運び、豪華な食器、整理されて質の良い家具の配した豊かな暮らしの室内なのに、人があまり快活に見えないことです。
もしかしたら食事中にお喋りするのははしたないことなのかも。でもちょっとお互いの様子に目をやるしぐさが描かれていたらこの絵はぐっと親密な雰囲気を持ったものになったのでしょう。
でも兄弟仲は良かったそうで、三男マルシャルの写真作品に絵のヒントを感じたり、お互いに影響しあっていたそうです。


「ピアノを弾く若い男」1876年
音大出身のマルシャル氏がモデルをしています。ちょっと親密さもかんじます。絵の中と同じメーカーのグランドピアノが会場に展示されてました。
色合いが美しいです。他の絵もみな色が美しく心地よさを感じました。


「室内、窓辺の女性」1880年
カイユボット家は街中にあるので、カーテンを開けるとすぐにお向かいの窓が見えるようです。
寛いだ男女の何気ない様子。


扉を開けて外へ


「建物のペンキ塗り」1877年
柔らかい色合いに抑え気味の赤いドアの色が映えていて色合いが美しくて好きです。そして建物と道が消失点にむかって見事なくらい縮小されていく。
手前の人の目と同じ高さに遠近の消失点があります。画家本人の眼の位置もこの高さ。脚立が手前に描いているので地面が平らなことが実感でき、手前の人物の後ろに何人かの人物が消失点に向かってだんだん小さく描かれることによって遠近感をさらに強調してます。
ただ目にした風景を描いたものでなく、人物も建物も脚立も多分色合いも練りに練った計算の上で描いたと思いました。


「ヨーロッパ橋」1876年
構図が「建物のペンキ塗り」とよく似ていて、遠近法が見事で消失点が向かって左上方にあります。そしてそこには身なりのいい紳士ギュスターブ・カイユボットがいます。背景の建物も手前の格子の向こうに見える格子(これもヨーロッパ橋の一部)も紳士の頭部に向かってます。紳士は日傘をさした女性に話しかけてます。
そのふたりよりも私はむしろ手前で欄干にもたれかかっている人物に気持ちが行きます。あまり裕福な様子ではなく物思いに沈んでいます。
日傘を差した女性のすぐ後ろに見える色あせた上着を来た男の人の後姿のまた後ろには、目立たないけどやはり欄干にもたれかかった男性の姿が見えて、手前の人物とほぼ同じポーズなので橋の奥行を感じさせます。この人物はなぜか背中が透けてその向こうの橋の格子が見えてしまっているので、後で加筆したのがわかります。
そして手前にいる犬の白地に栗毛色の毛並や軽い足取りが画面に明るい色合いのアクセントとなり、犬の顔の向きに誘導されて私たちはカイユボットと女性に再び目を向けさせます。

街を行けば働く人がいて、裕福とは言えない人の方がたくさんいますが、街行く人をカイユボット氏はどういう気持ちで描いたのだろうかと思ってしまいます。
街の情景として人物を描いたのか、自分とは違う境遇の人物に何らかの想いがあったのか。
「ヨーロッパ橋」に描かれた女性も裕福な身の上の女性でない(当時裕福な女性は一人歩きはしないそうです・・・つまりは娼婦なのだそうです)とテレビの解説で言ってました。橋や建物や道の線集まる消失点に描かれているカイユボットのみ身の上が違うのです。
なんとなく心にひっかかるのです。うがった見方なのかもしれないけど・・・。


「見下ろした大通り」1880年
大通りに面した建物に間借りした自宅から見下ろした様子を描いて視点が面白くて好きな絵です。


街を出て緑豊かな田舎へ
別荘の近くの川でのカヌー

「イエール川のペリソワール」1877年
人物の大きさが奥行感を醸している。緑色の木の葉と川に黄色い帽子が爽やかに映えている。櫂の傾きが交互に変えていてジグザグ模様を作っていて画面にリズムを感じて心地よいです。


「イエールの庭」1875~77年
まるで教科書のお手本みたいな見事な遠近法。整然として左右対称で、そして落ち着いた穏やかな色が美しい。


「向日葵、プティ・ジュヌヴィリエの庭」1885年頃
後ろの建物はカイユボットの別荘です。イエールとジュヌヴィリエに別荘を持っていたそうです。

カヌーを愛し、自らカヌーの設計をし、広大な菜園を作り、使用人に管理を任せながらやはり植物の栽培を研究し新品種も作る。また弟と一緒に収集した切手は大英博物館に保管されている。
父親が成した財力で仕事にはつかなかったそうですが、カイユボットは愛する物事を極める偉大なる趣味人。また地元の住民のためにも財産を提供したそうです。
絵画は印象派の仲間の援助を惜しまず作品も買い上げコレクションした作品群は現在のフランスの印象派コレクションの核をなすそうで、美術史に大きく貢献し、また本人の絵も重要な印象派の作品となり、絵は本業だったと思います。

一緒にマルシャルの写真作品もいろいろ展示されていました。その作品はふつうにアルバムに貼り付けているようなこじんまりとした大きさであくまでも個人的な内容だったと感じました。でもそのマルシャル氏の写真に構図のヒントを受けてギュスターブ氏は多くの作品を描いたそうです。
その写真の中にはマルシャル氏の奥さん、お子さん達の姿が多く映っており親密な気持ちが伝わってきました。

兄ギュスターブを写した写真も微笑ましく親密なものでした

マルシャル・カイユボット「ギュスターブと犬のベルジュール、カルーセル広場」1892年2月





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