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ミラノ ポルディ・ペッツォーリ美術館 華麗なる貴族コレクション

2014-04-29 14:52:13 | 一期一絵
4月25日、BUNKAMURA ザ・ミュージアムまで、どうしても見たくて見に行きました

写真が見づらくてすみません(;´・ω・)

イタリア、ミラノの大貴族ポルディ・ペッゾーリ家の最後の当主ジャン・ジャコモ氏(1822~79年)の遺言により自宅を美術館にして公開したコレクションの中から80点の作品が来日して展覧会が開催されました。
19世紀の美術収集家で美を極めた作品に囲まれて、贅を尽くした生活をしたといえば、同じ時期のイギリスの美術家も同じなのですが、作品の内容が違います。
イギリスはラファエル前派など古典回帰の運動もありましたが、作品自体は新出の絵の具を使ったりこれまでのテーマに新しい解釈をしたりとやはり新しい絵画。
唯美主義も積極的にジャポニズムや古代ギリシャ趣味など新しい潮流を取り入れた作品を愛しました。
イタリアのジャン・ジャコモ氏はこの国(イタリア)で培われた伝統や美術を愛し尊んでいたようです。そしてそのコレクションを見てみると、中世の甲冑や工芸品、初期ルネッサンスの美術により深い愛情をもっていたように見受けられました。それはまさにラファエル前派が目指していた美の世界でもあると、後から気が付きました。

この方がジャン・ジャコモ・ポルディ・ペッツォーリ氏

「ジャン・ジャコモ・ポルディ・ペッツォーリの肖像」ジュゼッペ・ベルティーニ1880年
描いたジュゼッペ・ベルティーニはジャン・ジャコモの美術収集のアドバイサーでもあり、遺言により、この美術館の初代館長を努めたそうです。
髭が立派で、顔立ちは繊細な感じがします。いつも思うのですが、貴族も王も皇帝も最初は他の勢力を圧倒して誰よりも強い者がつかみとったはずですが、代を重ねると剛の部分が薄まり、繊細な雰囲気を漂わせている。
ルイージ・ピージという室内画を得意とする画家が描いたジャン・ジャコモ氏の部屋の絵も展示されてましたが、部屋自体がとびきりの美術工芸品にうめつくされた豪華極まりない様子でした。そういう本物の美術品に囲まれて生活をしていたジャン・ジャコモ氏の研ぎ澄まされた美意識で集めたコレクションはやはりとても美しく貴重な作品ばかりでした。

美術館は第二次戦争で空襲の被害をうけたので、内装はぐっとシンプルになったそうですが、戦前までの館内はまさに貴族の邸宅でした。
甲冑コレクションを展示していた部屋の戦前の写真です

今回の展覧会にも甲冑コレクションから数点が展示されてました。

絵画の最初はレオナルド・ダ・ビンチがミラノに滞在して影響を与えた画家の作品が展示されてました。

それから邸宅内用に描かれた小型祭壇画やキリスト教のエピソードを描いた作品。いずれもとても美しく魅力的でした。


「聖アグネスとアレクサンドリアの聖カタリナのいる聖母子」ピエトロ・ロレンツェッティ1342年頃


「聖母子、奏楽の天使、聖三位一体」ラッザロ・バスティアーニ1463~1470年頃
すみれ色の弾幕も美しく、冠を支えている天使たちは誇らしげな笑顔です。

インターネットで図版が見つかりませんでしたが、「悪魔祓いをするリンカンシャーの聖ウーゴ」の悪魔がなんだかユーモラスで建物がブロックで組み立てたような感じがする絵も味わい深くて良かったし、「謙譲の聖母」ではマリア様が優しい笑顔で人差し指で幼子キリストのほっぺたをちょんとして、赤ちゃんのキリストもニコニコ笑っているチャーミングな作品にもとても心惹かれました。

 
左が「アルテミシア」グリゼルダ物語の画家1498年
右が「アレクサンドリアの聖カタリナ」ベルゴニョーネ1510年
この2点は、ジャン・ジャコモ氏が意図的に一対の作品のように額をそろえ、左右に飾った作品だそうです。


そしてとてもお会いしたかった作品

「貴婦人の肖像」ピエロ・デル・ポッライウォーロ1470年頃
青空から浮かび上がった横顔が清楚な美しい若い女性の肖像画です。当時の流行であったであろう髪型には真珠の飾り紐を巻き付けて、首には真珠とルビーのペンダントネックレス。真珠は貞節、ルビーは愛情を表し、この宝石を身に着けているので結婚を祝っての絵だそうです。このペンダントネックレスはガラスビーズで似せて作れないかな、と秘かに想ってます。
そして豪華な袖はビロード地に金糸で織り込んだ布の質感がとても感じられました。近くで見ると細かい筆の線で金糸の縫い目まで感じます。

ピエロ・デル・ポッライウォーロにはやはり画家のお兄さんがいます。その兄アントニオ・デル・ポッライウォーロも才能のある画家で、ダイナミックな勇者の絵を描いてますが、弟と同じく横向きの婦人像も素晴らしい作品を残してます。

10年前、東京都美術館にて開催された「フィレンツェー芸術都市の誕生」展でその作品を見ました。
(参考に載せます)
「若い女性の肖像」アントニオ・デル・ポッライウォーロ1475年頃
こちらはフィレンツェのウフィツィ美術館に収蔵されています。
やはり真珠とルビーの美しいアクセサリーを身に着けてます。あまり大きくない作品で、筆跡がほとんどわからないくらいに緻密でした。

初期ルネッサンス時代の、というよりルネッサンス時代の横顔の肖像画ではこのポッライウォーロ兄弟の2作品が白眉ではないかと思ってます。10年の時をかけて兄弟の美しい婦人像にお会いすることができたと思うと感激しました。そしてこうやって見てみると、弟ピエロの繊細な美しさ、兄アントニオの華やかな美しさのそれぞれの特徴がよくわかります。
どちらも魅力にあふれ、こんな風に描いてもらった女性はどんなに嬉しかっただろうと思います。

次にジャン・ジャコモ氏が生前最後に購入した作品。存命中はこの作品を飾らなかったそうです

「死せるキリストへの哀悼」サンドロ・ポッティチェッリ1500年頃
サボナローナの教えのもと、フィレンツェの人々が厳しいキリスト教の罪と罰におののいていた時代の絵です。かつての幸せな絵画ではなく、ポッティチェッリも恐れと悲しみが支配する絵を描いたのですが、ジャン・ジャコモ氏はこの作品に怖れを感じたのでしょうか。


工芸品も載せたいと思います


「オリアーナを救うアマディージ」1602年
かなり大きなそして豪華なタペストリーです。そして背景までも省略せず織り込んでいます。

裏 
「フランチェスコ会派聖人たちが描かれた宗教行列用十字架」ラファエッロ・サンツィオに帰属1500年頃


 
鐘塔形卓上時計1600~1625年南ドイツ
塔の屋根の下には甲冑の戦士が輪になって並んでます。そこがジャン・ジャコモ氏好みなのでは


聖務日課書(祈祷書)形時計1595年南ドイツ
時計本体の裏側には受胎告知の様子が線刻されてました。


「十字架」1600~1650年フィレンツェ
フィレンツェの実力者がベネツィア、ムラーノのガラス職人を呼び寄せて作らせた十字架。ブルーが鮮やかで美しい。


「脚付き酒杯」16世紀後半ベネツィア

まだまだ珠玉の作品がありますが、最後にジャン・ジャコモ氏と同時代の作品を載せます

「レベッカ」ジュゼッペ・モルティーニ1835年
ジャン・ジャコモ氏の美術品収集アドバイサーであり、初代館長のモルティーニ作品。物語のなかの女性を描いた作品だそうです。
そういえば去年秋に、そのころのイタリアはマッキアイオーリという絵の流派があったと知りましたっけ。対象を細かくは描かず大きな色の流れで描く。絵自体は古典的ですがこの作品もその系譜に属するのかもしれません。

ジャン・ジャコモ氏は生まれ育ったミラノをとても愛し、ミラノ市民の文化財産として作品群を残し、遺言で邸宅を美術館に開放したそうです。戦後美術館の経営の危機が来たときは市民が資金を集めたそうです。戦争で建物が被害を受けたと書いてありましたが、こうやって作品が無事であるということは、美術館関係者が頑張って疎開させて守り抜いてくれたのでしょう。
そうやって守り抜いた大切な作品を、日本で身近に鑑賞できるのは本当に幸せです。


現在の美術館の階段と噴水・・・やはり豪華です


今回の美術展の様子が見れる動画がありましたので載せますね




5月25日まで開催されてます。

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