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雪と月と花展

2015-01-23 00:08:15 | 一期一絵

1月13日に三井記念美術館にて鑑賞しました。

この美術館を擁する三井本館は重要文化財の昭和初期洋風建築でアメリカの会社が設計しやはりアメリカの会社が施工を行った建物だそうです。ベネツィアから取り寄せた大理石の外観は重厚で、外側に浮き上がった柱(円柱ではない)がギリシャ神殿の柱みたいです。

そして本館7階の三井記念美術館の内装は木の壁や窓にかけたカーテンも重厚で歴史を感じました。

江戸時代から300年続く三井家。江戸の日本橋に「越後屋」という反物を切り売りするお店を開いたのが始まりだそうですが、越後屋といえば、私は「ふっふっふ、お代官様・・・」ってどこかの時代劇のパロディっぽく言って楽しんでますが、勿論本物の越後屋は違います。

商いを起こし大繁盛して盛大な権勢を誇っても大概は起業の苦労を知らない三代目あたりで衰退をする中、堅実に生き、代々商売の哲学を守ってこそ300年の歴史を積み重ねたのでしょう。


三井家にはいくつかの系統があるそうですが、それぞれの家系で愛でて、大切に保管されたコレクション。
時にパトロンになり、画家や文人と親しく付き合い、また自らも美術作品を作り、芸術を愛した一族だったのですねえ。

将軍や大名でなく、宮廷や公家でない、商人のコレクション。権力を誇示する物ではなく、伝統に則ったお約束の絵柄とはまた違う、その美術品のもつ美しさを基準にして選んだ作品。去年見たイギリスの唯美主義のコレクション(こちらも貴族ではなく富裕層がコレクションした)を思い出しました。

その中でも雪月花に因んだ作品、特に茶道具の名品が多く展示されてました。


粉引茶碗 銘残雪 朝鮮時代16世紀
茶碗の口にある白い柚が徐々に器の茶色に沁みてるように見える。平茶碗は夏用の器ですが名前に涼しさを演出させているのが粋ですねえ。


備前徳利花入 銘雨後月 桃山時代 16~17世紀
徳利の注ぎ口を切り取り、そこを埋めた部分を赤い月に見立てている花入れ


春野蒔絵棗 了々斎好 春斎作 江戸時代18~19世紀
黒漆に金でタンポポ、ツクシやスミレ、桜草などが描かれている春に使いたい可愛いデザイン。

おお!これで雪と月と花が出そろいました\(^o^)/♪
他にも黒楽茶碗「銘雪夜」も展示されてました。楽茶碗はお茶の味わいがまろやかで美味しくなると聞いたことがあり、いつかご縁があったら欲しいなと思ってます。勿論リーズナブルなお値段の物で。


そして国宝の名器

志野茶碗 銘卯花墻(うのはながき) 桃山時代 16~17世紀
実物は大ぶりでどっしりとした存在感があります、たっぷりとお茶を作れそう。口の歪みが織部焼を想起させる。
日本で作られた茶碗で国宝の品は2品のみ。そのうちの1品だそうです。

三井記念美術館内に「如庵」を模した茶室がガラス張りでしつらえてあり、その茶室の中で茶道具がしつらえてあったなかの1品

大名物 粉引茶碗(三好粉引)朝鮮時代 16世紀
ポイントの釘を刺したみたいな茶色の模様が印象的。大きさといい、形といい手になじみそう。そして飲みやすそう。

そして茶道具を入れる漆の箱も美しい凝った模様の作品がたくさんありました。いずれも小ぶりで可愛らしいデザイン。
お嬢様がお稽古などに使用したのかな?

その茶道具をいっぱい入れて外出に持っていけるようにしたのが

唐物竹組大茶籠(雪月花) 江戸時代慶応2年(1866年)
箱書きに「月雪も花も友とて茶箱かな」と書かれてます。
小ぶりの茶道具がすべて入る大茶籠。使用人がこの大茶籠を持ってお嬢様に同行したのでしょうか。いや、よっぽどのお茶の趣味人の集まりで使うのでしょうね。
花入れは竹と青磁の2種類そろっているし、水差しもあるし香盒も茶入れも茶碗も複数あるし、掛け軸や七事式の折据(おりすえ)まであります。器を包む袋物の布地もかなり凝っています。
数年前マリー・アントワネットがトランクに入れる小さなお茶会セットを特注で作らせた品を展覧会で見ましたが、それに匹敵するいやそれ以上の豪華さ。

三井家、どこまで贅沢なんだ(@_@;)

贅沢といえばこの箪笥も

四季草花蒔絵源氏物語箪笥 江戸時代 18世紀
源氏物語が書かれた冊子が専用の漆塗りの箪笥の引き出しに収納されています。引き出しには入ってる章の名前が蒔絵で書かれています。
箪笥の周りには四季の草花の金蒔絵が絢爛豪華に美しく描かれています。

そして毎年この時期にだけ展示される国宝

雪松図屏風 円山応挙 江戸時代 18世紀
三井家と応挙は親しいお付き合いがあったそうです。三井家の注文により描かれた作品。古典の文学を暗示する作品ではなく、この作品そのものを鑑賞するという、墨の線の巧みさ無駄のなさに名人の技が光ります。


秋草に兎図襖 酒井抱一 江戸時代 19世紀
家の襖が琳派の大家酒井抱一なのに、また驚き。お寺や大名の家ではないのです。
向かい風にもめげないで軽やかに跳ねる兎の躍動感が魅力的。

絵画作品は兎の他に鹿が描かれている屏風が多かったです。鹿の「ろく」という読み方と「禄」の発音をひっかけているそうです。商人のお家らしさを感じました。
そして中国の作家の沈南蘋の作品、奉公に来た少年の絵の才能を見抜き習いに行かせてもらい画家となった河端玉章の作品も繊細で緻密で素晴らしかったです。


春秋野蒔絵引き戸 原羊遊斎 江戸時代19世紀
こちらも酒井抱一の「夏秋草図屏風」を思い起こす作品。

三井家は明治に入り、金沢の旧大名で華族「前田家」の長女がお嫁に来ています。つまりは同格の家柄になっていたのです。
大商人の凄さを堪能しました。

そして三井家が創作した美術工芸「剪綵(せんさい)」

草花図剪綵 三井高朗 明治時代 19世紀
輪郭線の周りを切り、表面に金泥を塗り、後ろに色紙を当てる切り絵の一種。線が美しい。


最後に能装束


紺繻子地雪輪松竹菊蒲公英模様縫箔 江戸時代 18世紀
立体的に織った布、金箔、刺繍。とても豪華で手の込んだ作品。


鑑賞者もほどよい人数でじっくりと堪能できました。



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