小日向白朗学会 HP準備室BLOG

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指揮権論議の経緯~~70年前くらいにかくも論議されていたものの~~何がどうよくなった?≪資料編≫

2023-01-05 | 小日向白朗学会 情報

1. 第19回国会 衆議院 外務委員会 第1号 昭和28年12月11日
140 並木芳雄

○並木委員 次に陸軍、海軍、空軍の三軍の統帥権の問題でございます。三軍の統帥権については、現在の憲法下ではあるいは国会にあるのではないか、あるいはいな、それは総理大臣にあるのだ、あるいはまた現在の憲法ではその点がはつきりしておらないのだ、だから新たに規定を設けなければ、統帥権というものは出て来ないのだろうというように、説がいろいろあるようでございます。この際、三軍の統帥機関などの問題が出ておりますから、はつきり政府として、現憲法下において統帥権の所在は何人にあるのか、その点を解明していただきたいと思います。

141 佐藤達夫

○佐藤政府委員 統帥権という言葉自身、私あまり好みませんので、統率権という言葉でお答えをさせていただきますが、元の統帥権に当るような指揮権というものを、現在の憲法のもとで、かりに保安隊を自衛隊に直した場合にどこが持つことになるかというお尋ねだと思います。これについては、今のお話にもありましたように、そういう統率権というものの性格が何であるか、すなわち立法、司法、行政の、三権の外にあるもう一つの違う第四権のようなものだ、本来そういうものだという議論になりますと、話は現在の憲法にはもう乗つて来ないことだと思います。しかし私どもの考えておりますところでは、そういう指揮権、統率権というものは、やはり今の三つの権力の分立の中で分類すれば、広い意味の行政権に入ると見ざるを得ない、また見ることが正しいことだろうと思つております。それが正しいといたしますと、今の憲法の建前から、これはもう並木さんには釈迦に説法になりますけれども、行政権が内閣にあり、そして内閣は行政権の行使について国会に全責任を持つという仕組みの中にはまつて参りますから、やはり一応内閣の責任のもと、統率のもとということに立つのじやないか、そしてそれに関して国会に責任を負うという仕組みになるだろうと思つております。

2. 第19回国会 衆議院 予算委員会 第16号 昭和29年2月20日
107 岡良一
○岡委員 非常に私ども遺憾な御答弁であると思う。言いかえれば、そういう点については政府としても何の御用点も定見もない、こういうふうにおつしやるということは、私どもとしてはほんとうに遺憾にたえません。  重ねてお尋をいたしますが、今日本の現行法規を見てみますと、こういうような事態に関しては、警察法の第六十二条以下のいわゆる同次非常事態というものがある、内乱であるとか騒擾であるとか、重大な災害が起つたときに、治安を維持するがために、国家非常事態を国家公安、委員会の勧告によつて内閣総理大臣は布告することができると書いてある。そういたしますと、日本の警察力というものが日本全域において、あるいはまたその非常事態が宣言された地域においては、これは内閣総理大臣の掌握するところになつておる。こう規定してあるわけなんです。しかしながら警察力は、言うまでもなくこの法律によれば、治安の確保に任ずるとしても、自衛隊は国内における大規模な騒擾等の鎮圧とともに、法が改正されるならば、面接の侵略にも対抗しなければならぬということになる。しかもその指揮がこれまた内閣総理大臣に属する、こういうことに相なりますと、保安庁法改正と警察法の改正とこれを両者合せて考えますと、そういう事態になつたときにおける内閣総理大臣の権限というものは、非常に大きなものになる。私はここであのナチス・ヒトラーの政権獲得の経過を想起いたすのでありますが、一九三一年にあのヒトラーが議会で第一党になつた、次々と絶対的な権力をみずからかちとり、とうとうヒンデンブルグ大統領をたな上げにし、ロボットにし、さらにこれをしりぞけてみずからが総統の地位に上り、国の一切の権力を掌握し、この権力を持つて一切をかり立てて戦争に向つて行く、私どもは今日保安庁法の改正や警察法の改正、これら一連の事実について見ましても、こういう事態を準備するのではないかという懸念を持つのでありますが、こういう問題は、もちろんこれまた政府との間における見解の相違ということになりましようから、私はあえてこの問題に対して深入りはいたしません。  そこで重ねてお伺いをいたしたいのでありますが、ただいまのこの政府の御答弁、緒方副総理の御答弁は非常に不明確であり、むしろ無責任だと思うのですが、こういう事態に立ち至つたときには、やはり日本軍の司令官なら日本軍の司令官に指揮権があるというような点についての明確な規定が、条約なり協定なり法律の上においてあるべきだと思う。こういう点についての御用点があるかないかを重ねてお伺いをいたします。

108 小滝彬
○小滝政府委員 そのときの事態によつてかわることでありまして、かりに日本が指揮をとつた結果事実上悪いということもあり得るのでありまして、これまでも主権国で、そういう外国との話合いによつて向うの司令官が出たということもあるわけであります。でありますから、これと主権国の地位というものとの矛盾は何もない。ただそういうことはきまつておるわけではなしに、そのときの事態に応じて決定せられるべきである。しかもそれは、決して主権国の地位を害するものではないということを申し上げる次第であります。

3. 第19回国会 衆議院 予算委員会 第16号 昭和29年2月20日
107 岡良一
○岡委員 非常に私ども遺憾な御答弁であると思う。言いかえれば、そういう点については政府としても何の御用点も定見もない、こういうふうにおつしやるということは、私どもとしてはほんとうに遺憾にたえません。  重ねてお尋をいたしますが、今日本の現行法規を見てみますと、こういうような事態に関しては、警察法の第六十二条以下のいわゆる同次非常事態というものがある、内乱であるとか騒擾であるとか、重大な災害が起つたときに、治安を維持するがために、国家非常事態を国家公安、委員会の勧告によつて内閣総理大臣は布告することができると書いてある。そういたしますと、日本の警察力というものが日本全域において、あるいはまたその非常事態が宣言された地域においては、これは内閣総理大臣の掌握するところになつておる。こう規定してあるわけなんです。しかしながら警察力は、言うまでもなくこの法律によれば、治安の確保に任ずるとしても、自衛隊は国内における大規模な騒擾等の鎮圧とともに、法が改正されるならば、面接の侵略にも対抗しなければならぬということになる。しかもその指揮がこれまた内閣総理大臣に属する、こういうことに相なりますと、保安庁法改正と警察法の改正とこれを両者合せて考えますと、そういう事態になつたときにおける内閣総理大臣の権限というものは、非常に大きなものになる。私はここであのナチス・ヒトラーの政権獲得の経過を想起いたすのでありますが、一九三一年にあのヒトラーが議会で第一党になつた、次々と絶対的な権力をみずからかちとり、とうとうヒンデンブルグ大統領をたな上げにし、ロボットにし、さらにこれをしりぞけてみずからが総統の地位に上り、国の一切の権力を掌握し、この権力を持つて一切をかり立てて戦争に向つて行く、私どもは今日保安庁法の改正や警察法の改正、これら一連の事実について見ましても、こういう事態を準備するのではないかという懸念を持つのでありますが、こういう問題は、もちろんこれまた政府との間における見解の相違ということになりましようから、私はあえてこの問題に対して深入りはいたしません。  そこで重ねてお伺いをいたしたいのでありますが、ただいまのこの政府の御答弁、緒方副総理の御答弁は非常に不明確であり、むしろ無責任だと思うのですが、こういう事態に立ち至つたときには、やはり日本軍の司令官なら日本軍の司令官に指揮権があるというような点についての明確な規定が、条約なり協定なり法律の上においてあるべきだと思う。こういう点についての御用点があるかないかを重ねてお伺いをいたします。

108 小滝彬
○小滝政府委員 そのときの事態によつてかわることでありまして、かりに日本が指揮をとつた結果事実上悪いということもあり得るのでありまして、これまでも主権国で、そういう外国との話合いによつて向うの司令官が出たということもあるわけであります。でありますから、これと主権国の地位というものとの矛盾は何もない。ただそういうことはきまつておるわけではなしに、そのときの事態に応じて決定せられるべきである。しかもそれは、決して主権国の地位を害するものではないということを申し上げる次第であります。

109 岡良一
○岡委員 とにかく私がこういう点を究明いたしますのは、保安庁法を改正し、警察法を改正し等々のいわゆる反動的な立法によつて、いわば権力の集中化をはかり、しかも私どもが指摘しましたような最終の最も大きなポイントにおいては非常にあいまいである。場合によれば、いわば吉の旧憲法における戒厳令にひとしいような状態のもとにおいて、日本国民の基本的な権利なり自由なり生命なり財産なり、日本の立法権なり行政権なり司法権なりまでも非常に大きな制限を受けなければならないという事態において、小瀧さんのお答えによれば、時と場合によれば第三国軍隊の指揮官があるいは指揮をとるかもしれない。実質的に考えたところで、軍事力の優位するものが当然に指揮権をとるというようなことになつては、その瞬間にわが国の独立とわが国の主権が失われる。私どもはそういう観点から、政府のこの一連の反動、特にこれの主権との関連における点をただしたのでありますけれども、政府の御答弁というものはきわめて不明確であり、無責任であり、不分明であるということを私は非常に遺憾に思う。この点についてはまた別の機会にお伺いをいたしたいと思います。

4. 第19回国会 参議院 予算委員会 第8号 昭和29年3月9日
061 中山福藏

○中山福藏君 その点につきましては十分お考えを給わりまして、国民の納得するような態度をおとり下さるようお願いいたします。殊に吉田首相は個人としては誠にあつさりした、人間と神様の中間を今歩いておられると私は思う。高橋是清氏も非常にあつさりして、国民の信頼を受けましたが、それは垢抜けのした政治家が国会に必要なんだからです。垢抜けまでもう一歩でお入りになると思うのですが、こういうところをあつさりした釈然たる気持で御答弁を願つて、これはわかつた、これから一つそうしようというようなところに落して頂きたいと私は考えておるのでございます。  そこで木村長官がおいでになりましたからお尋ねいたしますが、首相はこの陸海空軍の自衛隊長として、統帥権を把握される。そこで統帥権というのは一体憲法のどこに準拠してこの統帥権、いわゆる最高の指揮監督権というものを持たれるのですか、大体旧憲法の十一条、十二条。十一条には統帥権がはつきり書いてある。十二条には編制権或いは常備兵額というものがちやんと書いてある。然るに今回の自衛隊を設置するということが単に憲法の第九条に該当しないというだけでこれが出発している。私は少くとも国民の基本的な人権に関する事柄につきましては、憲法のどこかにその準拠を持つていなければならんという確信を持つております。保安長官はそういう点についてお考えになつておらなかつたのでしようか。是非御意見を承わつておきたい。

062 木村篤太郎

○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。この自衛隊に関しましては内閣を代表する総理大臣が指揮監督権を持つております。要は行政権に属するものであります。いわゆる行政府の長でありまする内閣総理大臣、国会に責任を有する内閣総理大臣、これが指揮監督権を持つておるわけであります。その指揮監督権の下に長官が指揮を受けて部隊を更に統率するということになつておりまするので、いわゆる旧憲法にいう統帥権とは全くその性質を異にするものであります。


5. 第19回国会 参議院 本会議 第20号 昭和29年3月18日
038 山下義信

○山下義信君 私は社会党第二控室を代表し、国家の運命に関する我が国の防衛問題、即ちここに提出された二法案に対し、政府の所信を質さんとするものであります。  第一は、首相の政治責任であります。吉田首相は我が国の防衛問題を巧みに利用し、これを以て政権維持の具に供し、久しく権勢の座を占めて、おのれ一身の栄華をほしいままにし来つたのであります。国民に対しては、如何にも米国に抵抗して再軍備に反対するかのごとく見せかけ、一方米国に対しては、保守勢力を糾合して、彼の要望に添うかのごとく振舞い、一歩々々譲歩することによつて彼の歓心を購い、以て内閣の寿命を延長することに成功したのであります。吉田個人は、疑いもなくその政権慾を満足せしめたでありましよう。併し首相の浪費によつて多くの負債を残された国民は、いよいよ不幸のどん底に陥ろうとしているのであります。吉田積年の悪政は、今日の世相に厳然として現われております。悪政の毒素は、国民の骨髄にまで浸潤するに至りました。国民の気力は沮喪し、独立再建の萌芽は悉くむしり取られ、国家崩壊の危機は恐るべき勢いを以て日増しに増大しつつあるのであります。然るに吉田首相は、内外の情勢に逆行し、国力後退、人心悪化のさ中において、従来の態度を一変し、再軍備への前進を開始したのであります。彼は国民との公約を裏切つたのであります。彼の「憲法は改正いたしません」と称するは、憲法尊重の念から出でたものではないのであつて、実は国民投票に敗れることを知るからであります。卑怯未練な吉田首相は、選挙においては再軍備反対に似せて、我らの投票を詐取し、今においては堂々雌雄を決することを避け、明らかに憲法を蹂躙して強引に押し切り、既成事実を作つて否応なしにこれを国民に押しつけんとするものであります。(拍手)ややもすれば時の権力者に盲従する封建性と、こうなつた以上は仕方がないとする現実追随の諦らめ性と、この国民性の弱点に乗じ、事をうやむやのうちに決せんとするは、如何に吉田首相が経国の宰相に非ずして、ただ単に一個の政権亡者に過ぎざるかを雄弁に物語るものであります。(拍手)政治というものが、うまく国民をだますにありというならば、伊藤斗福と吉田茂といくばくの差があるでありましようか。(拍手)我々は、吉田首相が桑港以来予定のコースをとりながら、終始国民を欺き、重大政策の変更に当つては、当然総辞職するか又は解散を以て信を天下に問うべきにかかわらず、依然居据り工作に耽るがごときは、断じて許容し得ざるところであります。(拍手)内閣は如何なる出処進退を以て今後の政局に対処せんとするか。その所信を承わりたいのであります。  第二は、政府の防衛計画には、更に自主性がなく、自衛隊の性格はまさに傭兵的であるという点であります。ラドフォード統合会議議長、スチブンソン陸軍長官らによつて決定された米国の極東防衛計画は、即ち沖縄を以て世界最強の基地となし、これに原子兵器を貯え、日本駐留の第三海兵師団、空挺連隊、水陸両用戦車部隊を以て新たに機動部隊を編成し、東はハワイ、南は比島の中間までを防衛線とし、沖縄から八百キロの上海に向つてその焦点を集中するの態勢であります。これがため在日米軍の地上部隊として、且つ朝鮮部隊の補充として、日本陸軍十個師を要求し来たつたことは、世間周知の事実であります。米国の態度は意外に強硬で、MSAの交渉過程においても峻厳にこれを迫り、政府は遂にその要求に屈服したのであります。一個師一万八千に食い止めたなどと手柄顔に申しておりますが、その実は予備役を入れて二十二万五千の兵力となし、更に或る種の方法を以て三十二万の兵力となすことは、秘密の了解事項となつているのであります。(拍手)而してこれらの兵力は、我が国防衛上自主的に計画割出されたものではなく、米国がアジアにおける作戦用兵上の必要量でありまして勿論海外派兵をも含め、すべて彼の方針に基き、我がほうの計画というものは全然樹立されてはいないのであります。ただ彼の損害と危険の分担をさせられたに過ぎないのであります。自衛隊ではなくて他衛隊であります。従つて国力との勘案など寸毫も顧慮されてはいないのであります。未だ国防の方針なくして、先ず軍隊を先に作るは、これ即ち米国の傭兵なるが故であります。政府は今次の増強計画を以て果して自主的計画に基くと断言することができますか。文大蔵大臣は如何に国力を勘案したと言うか、防衛費用の総額を幾ばくに抑えんとするや、民生安定費との均衡を如何に考慮したと言うか。財政当局としての所員を伺いたいのであります。  木村長官に伺いたいのは、前述の自主的計画の有無と共に、在日米軍撤恨計画との関係であります。すでに米軍の撤退につきましては、その年次計画が示されてあり、これに対応してMSAの交渉において、我がほうの計画書が提出されてあるのであります。保安庁当局はその一部、即ち昭和三十年度の増強計画を最近に発表いたしました。陸上二万二千名、海上六千名、艦船二十二隻、空軍八千六百名、二百八十機と発表いたしておりますが、この際、その全部をお示し願いたいと思います。  なお、米軍の撤退については、MSA協定発表に際し、両国の当事者は、その促進を声明いたしましたが、事事はこれに反しまして、撤退計画は延期せられ、一部は永久駐留に変更せら九たのではないかと思われます。現に二月十七日、スミス極東委員長代理等の三者会議において、これが決定を見、アリソン大使は旨を受けて帰任したという報道があります。各地の米軍基地関係者も、非公式にこれを肯定しているようでありますが、外相の答弁を粛めたいと思います。  傭兵的性格の顕著なるものは、貸与兵器の問題であります。貸与兵器の大部分は相当の中古品であつて、カービンや小銃等は十年十五年の古品が多く、中には使用に耐えないようなものがあります。今回MSAの貸与に対しまして、日本の要望する兵器は全部断わられたということでありますが、そのことはともかくといたしまして、これらの兵器を通じて、まさしく米軍の完全なる支配を受けているのであります。即ち兵器は、一人々々が米国から貸与された形となつておりまして、みだりに使用すれば一年以下の懲役、万一損傷すれば五年以下の懲役が課せしれ、米軍顧問団によつて厳重に管理されるという建前であります。米軍の許可がなくば兵器の使用はできないという軍隊、隊員の持つ兵器の監督権は上級指揮官になくして米軍にあるという自衛隊、これでも政府は傭兵的でないと言い切ることができましようか。貸与兵器を通じて、完全に米軍の支配を受けているではありませんか。更に不可解なことは、兵器はあつても弾薬はないという事実であります。海上自衛隊で言えば、船は借りても油がないという関係に置かれております。今日の発射速度において、弾薬の需要量は、旧陸軍の十倍以上を必要とすることは論のない常識でありますが、これら弾薬の数量、貯蔵、保管、出入の権限等は如何なる状態に置かれてあるのでありますか。恐らく米国側と何らかの秘密協定があつて、自衛隊自身の自由にはできないことになつていると考えられます。軍機秘密保護法の必要なるゆえんでありましよう。明瞭に御説明を頂きたいと思います。  いま一つ重要なるは、軍事頑固団の使命であります。MSAによりまして七百名という大量の顧問団が正式に派遣され、四億近い経費が負担させられるのでありますが、かかる多数の軍事頑問団を何故必要とするのでありましようか。真の目的は果して奈辺にあるのでありましようか。曾つて大隈内閣の時代において、数名の軍事顧問団を派遣するということに対してすら、当時の中国がこれを国辱として、容易に承服しなかつたという事実があります。然るに今は七百名という空前大量の軍事顧問団を、鞠躬如として迎えんとするのであります。隔世の忍なきを得ないのであります。政府はこれらの任務を兵器の監督、訓練の指導など、さり気なく弁疏しておりますが、何ぞ図らん、これらの顧問団は作戦命令によつて組織的に構成せられ、それぞれ任務を与えられて各部隊に配属し、一朝有事の際には直ちに早変りして日本人部隊を準星し、これを指揮命令して米軍部隊に薪属せしむるのが其の目的であることは、火を見るよりも明らかであります。(拍手)これを以ても自衛隊の性格が傭兵的でないと断言できるでありましようか。責任ある御答弁を望みます。  次は仮想敵国の問題であります。政府は我が国防衛の目標として、ソ連、中共を仮想敵国とするもののごとくであります。現に一月二十八日の本議場におきまして首相はこれを明言しております。併し国民はむしろ奇異の感に打たれるものである。今日多くの国民は、貿易の増大、引揚げの促進等、心から彼らとの友好を望みこそすれ、何人も政府のごとくこれを敵視いたしまして他日の一戦を試みようとするがごとき者は、恐らく吉田首相と木村長官以外には一人もないと思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)政府は何が故に、ソ連、中共を目して仮想敵国としなければならないか。又、政府はしばしば米国側から極東の軍事情勢を聞かされておるようでありますが、侵略の危険性がどの程度緊迫しているというのであるか。どの程度宿意性がありと考えられるか。政府は国民の前にこれを説明する義務があると信じます。  第三は徴兵制度の問題であります。政府は飽くまで志願兵制度で行くとシラを切つておりますが、果して徴兵制度は永久に採らない覚悟であるかどうか。ここで言明を願いたいのであります。自衛隊員の募集につきましては、過去のデータから推測いたしまして、その人員に限度のあることは数字上極めて明白であります。昭和二十九年は、満期者その他で六万五千名、新規増員三万名、合せて十万名の募集を必要とするのでありますが、目下頻りにやつておる行政整理の対象者であるとか、失業者であるとか、農村の二、三男等に目をつけて或いは自治体警察官等にも目をつけ、且つこれを数回に分割して充足しようとしておりますが、満員になるか甚だ疑問であります。昭和三十年度に至つては全然見当がつかず、自信がないというのが真相であります。かてて加えてこれから直接侵略に当るということになれば、志願者の激減はけだし必至でありまして政府当局は徴兵制度の不可避を内心予期しておるのではないかと考えられますが飽くまでこれを否定されるならば、志願兵制度存続の確信を数字を以て示されたいのであります。  次は自衛隊と憲法違反の問題であります。総括的に憲法第九条に違反することは賛言を要しませんが、更にその内容において重大なる憲法違反を犯さんとしておるのであります。  第一は統帥権の問題であります。自衛隊法は、曾つて天皇の大権であつた統帥権と等しきものを内閣総理大臣吉田茂に帰属せしめようとするものであります。文武の大権を握る総理大臣の性格は、まさに国の元首に相当し、我が国の首相をアメリカの大統領と同じ地位に押し上げようとするものであります。かくのごとき権能を与えることは、我が憲法の予期して認めざるところでありまして、憲法になき権限を一片の法律によつて強行せんとするは、これを以て憲法の違反と言わんよりは、吉田内閣は多数を以て一種のクーデターを行わんとするものと断ぜざるを得ないのであります。白色テロを警戒し、暴力革命を抑圧せんとする吉田政府が、みずから先んじて憲法無視の革命をなさんとするは何事でありますか。吉田首相の責任を問わねばなりません。およそ民主主義国家におきましては、かくのごとく武力の指揮権を総理大臣に与えることは、国家組織の基本問題として、いずれも憲法中特筆大書するところでございます。政府は何を根拠としてかくのごとき非違を企くたのでありましようか。或いは自衛隊の最高指揮権を以て一般行政権であると強弁するようでありますが、各省大臣を長官とするその上に立つてこれを指揮命令することは、果して各省同列の行政なりと言い得るでありましようか。たとえ行政権説をとるといたしましても、軍事行動或いは軍事準備行動のごとき、当然、行政中の重要行政として憲法第七十三条の列挙中に見出さるべきであると存じまするが、政府の見解は如何でありましようか、承わりたいと思います。  私はこの際、関連して、吉田首相に、文官優越制と軍国主義の復活について如何なる信念を有するか、伺いたいのであります。軍隊の編成上、文官優越制を採用いたしますことは、我が国におきましては初の経験であります。この制度の目的は申すまでもたく、軍事力をして文官の権限に従属させ、行政府に対して軍隊の地位を二次的に置き、それによつて民主主義の確立を図らんとするものであります。併しながら、これがためには三つの条件を必要とするのである。憲法中、軍隊における文官優越性を明記すること。同じく国会の監督権を明らかにすること。同じく軍隊の使用目的を特定化すること。この三点であります。然るに我が憲法におきましては、かかる規定は一ヵ条もないのであります。然らば政府は何を以て文官優越主義を貫徹し得るでありましようか。又、本制度の目的は軍国主義の防止にあるのでありますが、政府はすでに発生せんとする軍国主義の復活につきまして如何にこれを阻止せんとするか。その熱意、その具体策につきまして、首相の答弁を得たいと存ずるのであります。諸外国は、我が国の再軍備と共に、軍国主義の復活を疑心暗鬼で注目いたしております。然るに政府のなすところを見ると、再軍備へのテンポと共に、陰に陽にこれが助長を図り、或いは旧軍人を重視して首相のスタッフとし、或いは天皇神格化の走りとなつて復辞の志を示し、自衛隊においては皇室中心主義を称揚し、この思想を以て愛国心だと言い、一方においては中央集権を強化して民主政治の後退を図るなど、少くとも軍国主義復活の素地を培養するもののごとくでありまして、文官優越主義の確立には一向に誠意のないように思われるのであります。資格制限撤廃のごときはその片鱗である。私はこの点につきまして、右翼との関係浅からずといわれる緒方副総理から、その所信を承わりたいと思うのであります。  憲法違反の第二は、予備役制度の問題であります。兵力増強の手段であり、民兵制の前駆として、政府は予備自衛官の制度を考えたのであります。平素の職業にあるまで月千円の手当を与え、年二回短期の招集に応ずればよい、旅費も手当もやると言つておりますが、防衛出動即ち、いざ戦争というときには、動員命令によつて赤紙招集となり、この招集に応ぜざれば三年の懲役、濫りに職場を離れた者は七年の重刑に処せられるのであります。まさに憲法第十八条に違反し、戦争行為という苦役を強制するものでありまして、断じて許し得ざるところでございます。たとい志願により或いは宣誓などの形式を以てするも、かかる契約は憲法第三章の精神に反し、違憲、無効の規定と言わねばなりませんが、政府はこの方式を以て民兵制度を創設する考えであるか。憲法との関係を如何に考えるか。伺いたいのであります。  又、防衛出動に当つて広汎なる土地収用権等を与えんとする自衛隊法百三条の規定は、誠に粗筆不備でありまして、損害賠償等の措置も明確ならず、単に災害救助法を準用するという程度を以ては、憲法第二十九条の趣旨に合致しないと思われまするが、この権限の行使において、如何なる事態、如何なる場合が予想されるか。又、今次ビキニ湾の原爆被害に鑑みましても、人命等の補償は如何に考えるか承わりたいと思います。  以上で私の質問は終りますが、我々は、吉田首相が民生安定を犠牲として再軍備に狂弄せんとするその愚を憐れまざるを得ないのであります。社会保障を捨てることは民主国家の存在を否定するものであります。大衆の生活を剥奪し、革命の機運を促進して、他方においてその防衛に努力しようとするは、正気の沙汰とは思えないのであります。更に吉田首相の許し難き最大の罪悪は、今次戦役一千万の犠牲者によつて築かれたる平和憲法を破壊し、前後三十年に亘る八千万国民の苦難を一挙に徒労に帰せしめるのみか、再び阿鼻叫喚の悲劇を繰返さんとするものでありまして、人類史上の叛逆者であります。切に政府当局の誠意ある反省を求めて止みません。(指手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕

039 緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) 政府は、吉田首相は、再軍備反対の公約を裏切るのではないかという御質疑でありましたが、(「その通り」と呼ぶ者あり)違います。(笑声)政府は、再軍備の意図は持つておりません。自衛力漸増は従来からの方針であり、自衛隊は憲法の禁止する戦力ではありません。又憲法は国の自衛権までも放棄したものでない以上、今回の自衛隊は決して憲法違反ではないのであります。(「違います」と呼ぶ者あり)それから今回自衛隊を設ける仮想敵国はどちらかという御質問、更に吉田総理大臣が中国並びにソ連を仮想敵国としたかのごとき御議論でありましたが、「たびたびある」と呼ぶ者あり)吉田総理大臣の言われましたことは、そういう趣旨ではないのでありまして、中ソ友好条約が中国ソ連の間にあつて、その条約の中に日本を仮想敵国としている。従つてそれに対する考えが必要であるということは言われましたけれども、今回の自衛隊を作るに中ソを仮想敵国としてその組織を作るということは言うておられない。私も同様に考えております。  それから今回の総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持つということは、軍閥を作るのではないかというお説でありますが、今度の指揮権は決して旧憲法で言われるところの統帥権ではないのでありまして、統帥権が旧憲法に認められました結果、政府のほかに、或いは政府と対立する一つの権力がありましたために、あのような軍部の横暴を生じたのでありまするが、今度は行政の最高責任者である総理大臣が自衛隊の指揮権を握るのでありまして、その間に曾つての軍閥或いは軍部の横暴というようなものはあり得ない、その点は御安心を願つて差支えないと用います。  それから総理の権限を論ぜられまして、何か私が右翼に関係があるというようなことを言われましたが、右翼ということは、これは複数であつて、私は右翼の者を知つておりまするが、私が右翼の運動のどこに関係がありますか、御指摘をお願いしたい。若し御指摘がなければ、お取消しを願いたい。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕

040 木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  米国駐留軍の撤退の問題でありますが、御承知の通り日米安全保障条約によつて、我が国の外敵からの侵入に対してアメリカ駐留軍が当ることになつているのであります。このアメリカ駐留軍が即時に全部撤退するということはあり得ないことであります。これははつきり申上げます。そこでその一部分がいつ撤退するか、その時期は明瞭にわかつておりません。但し我々は自衛力漸増方針を以て著々と漸増をやつております。二十九年度においては、今御審議願つておる通りでありましてこれが完成したあかつきにおきまして、アメリカの駐留軍の一部地上部隊が撤退することは、これはあり得るであろうと思います。その兵力量はどうかということは、只今のところわかりませんが、今後アメリカとの間に打合せがあると思います。  次に、軍事顧問団の問題でありますが、御承知の通り軍事顧問団は、全くアメリカから貸与を受ける武器のその操作等についての指示を受けるのでありまして、自衛隊に対しての指揮命令とかいうことには断じて関与させまん。又関与すべきではないと考えてやります。  次に、徴兵制度でありますが、徴兵制度は只今考えておりません。徴兵制度を布くということになれば、勿論憲法改正を要することであります。我々は現段階においては、志願制度で行こうと考えておる。然らば志願制度の限界はどこにあるかということになりますと、これはいろいろの観点からいたしまして、約二十二、三万が程度であろうと考えております。  それから三十年の計画はどうかということであります。三十年の計画につきましては、まだ確定的なものは持つておりません。ただ一応の目途程度のものでありまして、今後我々は日本の財政力その他を勘案いたしまして、研究し、計画させたいと考えております。  予備自衛官の問題でありますが、これはすでに申上げた通り、すでに退職になつた旧来の警察予備隊員或いは保安隊員、このうちから志願によつて募集するのであります。勿論この待機その他については、すべて入つて来るいわゆる応募者に周知せしむる。憲法十八条との関係におきまして……。憲法十八条は苦役を課さないということになつております。これは強制苦役のことであります。予備自衛官に対しては強制苦役を何も課しません。本人の意思に基いて入つて来るから問題はないのであります。  それから土地収用等の問題であります。これは先ほど答弁いたしました通り、災害救助法に基きまして、損害を与えるような場合には相当の補償をするということになつておりますから、国民の権利保護については万全を期したいと、こう考えております。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕

041 岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今山下君は、海外派兵について秘密の約束があるということを断言されました。又アメリカの駐留軍が永久駐留の計画があるのじやないか。こういうことも言われたのであります。ところが政府としては海外派兵のごときことは何ら約束はしないし、又海外派兵をしないということも明らかにいたしているのであります。米駐留軍の永久駐留の報道があるということは、これは取るに足らない問題でありまして、さようなことは絶対にないことはもう明らかであるのであつて、アメリカ側は速かに撤退いたしたいと言うておるのであります。併し先ほども国会の論議においては責任を持てとい、ことが強調されております。山下君が、海外派兵の秘密約束があるなどという断言をせられる以上は、その証拠を出されるべきであると考えております。(「何を言うか」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕


6.第19回国会 参議院 本会議 第21号 昭和29年3月19日
021 曾禰益
○曾祢益君 私は日本社会党を代表いたしまして、MSA関係協定に対しまして、極く重要点だけを政府に伺いたいと存じます。  日本社会党は、日本が自由世界、民主陣営に帰属することを肯定し、これとの団結と協力を是認するものでありまするが、同時に自主独立の外交によつて全世界と友好を求めることを我が国外交の本義と考えるものであります。我が国の安全保障につきましては、国連の国際平和と安全の確保に期待すると共に、現状におきましては、国連の安全保障の補助として地域集団保障制度の必要を認めるものでございます。更に独立国たる以上、我が国は自衛権を有するは当然であり、自衛権の裏付である自衛力は、その基盤である国民の自衛意欲の盛り上るような、健康にして公正な経済、社会秩序の確立が根本であると確信するものであります。併しながら、形式、内容共に不平等な日米安保条約は根本的に改訂すべきであり、又自衛力については現行憲法を遵守し、差当り国内治安を維持するための警察予備隊程度のものにとどめることを主張し、吉田内閣の憲法空文化と国民生活圧迫による再軍備に断固反対するものであります。  MSA関係協定を案ずるに当りまして、我が党は以上の基本的態度から検討を加えんとするものであります。而して我々は、本協定が憲法空文化と国民生活圧迫の再軍備と裏腹の関係にあること。協定成立に至る吉田内閣の外交が秘密外交と自主性喪失の結果であること。協定が安保条約すらを逸脱し、憲法に違反する疑い濃厚であること。顧問団の任務、合同指揮権等が我が国の自主独立を侵害する虞れがあること。並びにMSA援助の受入れが、却つて我が国の正しい経済自立を害し、経済財政上有害である等の理由に基きまして、本協定に対し反対的観点に立つて、以下若干の質問をなさんとするものであります。  先ず第一に、一国の防衛の基本方針は、飽くまで自主独立の立場において、国民の理解と納得の下に策定すべきが当然であるにかかわらず、政府の態度と措置とは全く自主性を欠き、先に、我が国の対外安全は勿論、対内安全の根本すらも挙げてアメリカ軍に依存するとして、安保条約を説明されておきながら、最近の国際情勢の変転に応じ、アメリカの戦略配置が転換して、駐留軍が漸減するに見合いまして、我が国の防衛力の増強を強要して来ると、今度はこの間の情勢の変化に対処する政府の所信を国民に訴えることもなく、我が国の経済力と国民の心理状態も無視し、何らの自主的な防衛方針も計画も持たずして、先ず以てアメリカの要請を受け入れる態度をとつて交渉に当られた次第であります。その結果、ここに二十九年度予算に見られるような防衛力の飛躍的増強と、保安庁法改正に見られるような本格的再軍備が、而も憲法空文化の方法によつて実行されんとしつつあるのであります。MSA協定は、このような政府の防衛問題の本末転倒の取上げ方と、自主性喪失外交の結果にほかならないと考えますが、総理は、この重大な疑惑に対し、進んでその明確なる所信を国民に向つて披瀝される御意向はないか。  第二点、総理は去る十七回国会の本院予算委員会におきまして、先ほど同僚羽生委員も触れられましたが、私の質問に対し、二十九年度の予算提出に当つては、単に二十九年度の防衛増強計画を示すにとどまらず、アメリカ軍の撤退に即応する我が国の長期防衛計画の全貌とその年次計画を明らかにする旨を、明確に答弁されておるのであります。これは第十七回国会参議院予算委員会会議録第五号、十一月七日の分に明瞭になつております。私の今の質問に対しまして、吉田総理は、「これは全体の計画が立つて、そうして各年度の計画をなすのが当然でありまするから、全体の計画ができ、その計画の全貌を示して、そのうち実行し得るものは来年度に幾ら、再来年度に幾らと、年次計画を立てることになろうと思います。」私が更に進んで、「別な言葉で言いますと、少くとも来年度の予算が出るときには……いわゆる長期計画の全貌というものが少くとも同時に国会を通じて国民に示される、かように了解して間違いございませんか。」これに対して吉田総理は、「未だそこまで話し合つてはおりませんが、お話のようなことが順序であるべきものだと、私は常識的に考えて、そう思います。」明瞭であろうと思うのであります。それにもかかわらず、今回こま切れ的に二十九年度防衛計画のみを提案した理由は一体どこにあるか。又この重大な公約の無視に対して、総理の政治的責任をどこに置くかを、明瞭にお聞かせ願いたいのであります。  第三点、元来MSA援助の授受に関する協定は、当該国とアメリカとの間に、これに先んじまして地域集団保障協定というものが存在しておる。存在していない場合は別でありますが、いる場合には、この基本的な防衛協定の存在する場合には、これを前提といたしましてアメリカの援助受入れに対する権利義務を規定する一種の実施協定或いは細目協定の性質のものであることは、これは北大西洋同盟条約諸国とアメリカとの間のMSA協定の例を見ても一点の疑いのないところであります。又このことは、MSA法の五百十一条(a)の(3)に、「合衆国が一方の当事国である多数国間若しくは二国間の協定又は条約に基いて自国が受諾した(過去の形で、ハズ・アツシュームドとなつている)軍事的義務を履行すること」という字句に照らしても明瞭である。然るに今般の協定は「日米相互防衛援助協定、」この名前からして安保条約とは非常に性質が変つていることを示しております。この名前にふさわしく、安保条約とは別個に、別の基本的な日米の共同防衛の権利義務を定める条約であります。即ち、安保条約は、いわば日本がアメリカに守つてもらうことを趣旨とするニカ国間の片務的な、双務的でない、片務的な安全保障協定でございまするが、今回の協定は、ニカ国間の共同、双務的な防衛協定であることは、これ又、同僚羽生君が指摘した通り。  更に安保条約の下では、少くとも厳格に法律的に見るならば、日本の防衛に対する責任を漸増的に負うということは、前文に掲げたアメリカの期待に過ぎず、日本に義務はないということか言えるでございましようが、今回り協定におきましては、すでに同僚が指摘したように、第八条において「自国の防衛能力の増強に必要となることかあるすべての合理的な措置をとる」ことを明瞭に約諾している。更に第八条において「自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与する」ことを約諾しているのであります。従つて、本協定は安保条約の基本的な軍事義務以外の義務は含んでおらないという政府の御説明は、言葉は過ぎるようでありますが、欺瞞ではないか。岡崎外相の明快なる御答弁を願いたいのであります。第四に、右のように安保条約から日米相互防衛援助協定へ移つた。即ち片務防衛協定から双務防衛協定に移つた。同時に、更に二国間条約から多数国集団保障制度へ転移するという、極めて重大な外交と安全保障の基本的変化か行われているのではないか。この点は、先ほども申しましたように、第八条の自由世界の防衛力に対する日本の寄与の義務というニカ国間だけの問題ではない。それもはつきり今度の協定は書いている。又第一条には、この日本が供与する援助を、アメリカに対してのみでなくて、第三国に対してもこれを供与する道をはつきりと第一条は開いている。これらの点から言いまして、今申上げましたように、外交と安全保障の基本的な性質の変化を持つている。決して軍事的な援助の受入れというような実施細目協定の性質ではなく、基本的なものであるということを政府は明確に認め、そうしてこれを明瞭に、この基本の違いというものと、これに対処する政府の所信を、堂々と且つ条理を尽してなぜ国民に理解と納得を求めるような態度をとられなかつたのか。  又この協定の締結から、多くの諸君が言われましたように、確かに今の法体系の変化から言いますと、伝えられる太平洋同盟条約等に発展する一歩をはつきりと阻み出していると思いますが、改めて明確なる御答弁を願いたいのであります。  第五に、更に以上のような広汎な義務規定を内包しております協定の中に、海外派兵禁止に関する条項がない。これは何と申されても、かかる二国間から多数国間に、片務条約から双務条約に移つたというこの条約においてこそ、海外派遣禁止の明確な規定がなされなければならないと思いまするが、どうしてもこれを取りつける御意向がないか。改めて明確にして頂きたいのであります。  第六に、アメリカとの共同防衛、自由世界の防衛能力に対する寄与並びに日本の防衛力増強等の条約上の義務を規定する本協定は、果して軍隊その他の戦力の保持を禁止し、交戦権を否認した憲法の条項に違反しないと言えるかどうか。成るほど協定第九条には「各国政府が自国の憲法上の規定に従つて実施する。」こう言つておるからこれでいいのだという御答弁のようでありまするが、これも私をして納得せしめ得ないのであります。これは岡崎外務大臣も昨日のこの席上における御答弁でも申されたように、これは憲法の手続に従つて国会の承認を求めるというような、手続を示したものに過ぎない。これで本協定の内容は憲法に逸脱してないという免責、責任免除の規定の条約文としての体裁から言つても、さような意味を持つものでは断じてございません。而もなおおかしなことには、憲法の手続に従つて実施されるということは、その示している憲法は決して条約上、法律上現行憲法に限らない、そのときの憲法でいい。こういうことになるならば、ますます以て政府が苦心をされて入れたと称する第九条の規定は、何らこの条約の内容そのものが憲法に逸脱しないということの食いとめになつておらないということは、明確至極であろうと存ずるのであります。殊に憲法九十八条第二項の正しい解釈から言うならば、国際法規及び国際条約の或るものは憲法に優先し得るというのが第一次吉田内閣以来の政府の明確なる解釈においておや。ますますこの点は我々としては断じて納得できないのでございます。  協定第七条の顧問団の任務或いは合同指揮権、日米行政協定第二十四条に基く日米共同行動の場合の合同指揮権、これらについての政府の御答弁もどうも我々は納得し得ない。殊に保安庁長官においては、それは日本が自主的にやるのだというようなことを言つて、如何にも日本に指揮権があるように言つておられまするが、これは北大西洋同盟条約の例等を見ましても、さようなことは承服できない。当然に合同指揮権はいずれの国の指揮官がとるか、全体においてはどうだ、陸軍においてはどうだというような問題が当然に起つて来ると思いまするが、明確にお示し願いたいのであります。  次に、政府は元来軍事援助を本旨といたしまするMSAの受入れが、あたかも経済援助を伴うものであるかの宣伝に努めて来ました。併しその全体が何であるかは、今般の余剰農産物買付協定、又苦肉の策である経済的措置に関する協定等によつて、もはやその実体は明らかとなつた。我々は当初から真の経済自立は社会主義計画経済を実施し、援助より貿易、紐付きよりは自立を趣旨とすることを主張し、政府の欺瞞と安易な受入れに反対して警告を発して参つたのであります。仮に今後経済援助が若干与えられるような場合があつたといたしましても、又武器援助そのものが軍事費の切り詰めには若干の貢献は計算上ありましよう。併し他面において厖大な再軍備の創設費及び維持費を必要とするために、この経済財政上の負担は差引き極めて重くなることは明瞭ではございませんか。大蔵大臣にお伺いしたいのは、特にこの協定に当りまして防衛分担金の減額は誠にノミナルなものに過ぎない。今後如何にして防衛分担金の減額を図るか。この見通し如何を伺うのであります。  最後に、岡崎外務大臣は、今度の協定によつて対共産圏国との貿易のいわゆる禁止規定が附属書に譲られたと、よほどの成功であるやに言つておられまするが、世界の態勢から言うならば、今日チャーチル首相が言つておりますように、やはり共産圏に対する自由諸国の貿易についても調整を要し、これを緩和する方向に進むべきではないかというのが、これは現状である。アメリカ諸国の第十回の全アメリカ会議におきましても、共産圏に対する戦略物資の供給を禁止することは賛成である。併しその犠牲に対してはアメリカからその補償をやつてもらいたいという決議が通つており、西ドイツのブリユツヒヤー副総理は、同じくこの対共産圏貿易について、「現実に平等な取扱がなされていない。」かようなことを堂々と述べているのであります。いずれもアメリカの最もちかしい、いわば同盟国の首相にしてそのような態度をとつているのであります。日本社会党は対共産圏貿易のみによつて日本の経済自立ができるとか、或いはこれに対する過大な評価をなすものではありませんが、このMSA協定に当つて、政府はこの日本の経済自立並びに世界の緊張緩和にプラスになり、自由国家群を強化する一助ともなる対共産圏貿易の問題を如何に対処されるか。明確な御回答を願いたいのであります。時間がありませんので、その他重要な細目については委員会における質疑に譲ることといたしまして私の質問はこれを以て終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
022 緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  防衛政策というような国の、国民の利害休戚の根底に触れる大きな政策は、国民の理解と納得の上にきめなければいけないという御趣旨は、政府といたしましても全く同感に考えております。これに関連して政府は秘密外交のみをやつているではないかという御意見でありましたが、政府といたしましては、決して秘密外交をやつているつもりは、ございません。ただ交渉の経過におきまして、成る程度秘密が保たれなければならんことは、これは曾祢君におきましても十分御了承のことと考えます。だからといつても自主性がないと断定されることも甚だ迷惑な次第でありまして、政府といたしましては、こういう大きな問題につきましては、どこまでも自主性をはつきりすることに努めている次第でございます。  それから十七国会において防衛の長期計画を出すことを、防衛計画の長期計画を二十九年度予算と同時に提案することを約したが、今日その長期計画の提案がないのはけしからんという御質問であります。自衛力増強の年度ごとの計画は、長期計画の一応の目途をつけてその一環として考えるべきものでありまするし、又長期計画の成案を得れば、これを国会に提出いたしますることは勿論当然でありまして、そのことを申上げたのでありまするが、ただ二十九年度の計画及び予算と同時に長期計画を出すことを約束したとは記憶しておりません。長期計画につきましては、あらゆる角度から検討中でありまするが、将来に亘ることでありまするので、種々不確定を伴う要素がまだ甚だ多い。そういうわけで、まだ今日成案を得るに至つていないのでありまして、成案を得れば、勿論国会の御審議を経て承認を得たいと考えております。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕

7. 第19回国会 衆議院 外務委員会 第25号 昭和29年3月25日
127 並木芳雄
○並木委員 先ほどの答弁ですと、大体地上部隊は別として、アメリカ軍と日本の自衛隊、これは空軍、海軍なども含めて二本建で行く期間が相当続くのではないかと思います。その場合に、駐留軍と日本の自衛隊との共同動作について、現在の安保条約及び行政協定には、緊急の場合と称して行政協定二十四条があるだけでございます。私は今後非常に大きな問題を惹起すると思います。今までは保安隊で微力であり、共同動作を起すようなことがございませんでしたから、表面の問題にはなつて参りませんでしたけれども、これからは一本立ちをするわけでありますから、この共同動作について今後どういうふうに協定をされて行くつもりでありますか。また国内の法規をどういうふうに直して行くつもりでありますか。アメリカとの関係におきましては、安保条約または行政協定をこの点において改正する必要があるのではないかと思います。緊急の事態に処する場合にどちらが指揮権を持つかという点についてです。
128 緒方竹虎
○緒方国務大臣 共同作戦の協議には入つて行くべきであると考えますが、今すぐ安保条約の改正をする必要はないと考えております。
129 並木芳雄
○並木委員 指揮権をどちらに置くかということについて何か構想はございませんか。これは当然日本側が持つべきでありますが、この点はまだ政府として考慮中だというのが今までの答弁であります。共同動作をする場合の指揮権、決定権でありますが、これは両方協議議するときなかなかきまらない場合があると思います。
130 緒方竹虎
○緒方国務大臣 はなはだ抽象的のことを申し上げますけれども、やはり両方で協議してきめる以外にないと思います。それは規模の大小がありますが、第二次大戦以来、そういう連合軍の慣行が自由諸国の間にもできておりますから、そういう形をとるであろうと考えております。
131 並木芳雄
○並木委員 自衛隊法の中に日米共同動作に関する協議事項というものはないように私は読んでおります。ざつと読んだだけですからわかりませんけれども、あればけつこうですが、これも自衛隊法の中にうたつて行くべきじやないかと思いますが、いかがでしようか。
132 岡崎勝男
○岡崎国務大臣 ただいまのところでは、自衛隊法の中にはその必要はないと思います。これは、かりに何か事がある場合には、必ずしも自衛隊ばかりとは限りません。警察隊を必要とする場合もあり、あるいは消防隊を必要とする場合もあり、その必要の限度等は行政協定二十四条による協議をすれば足りると考えております。

8. 第19回国会 衆議院 本会議 第31号 昭和29年3月31日
034 戸叶里子
・・・・・・・・・・・経済自立体制を確立せんと念願するわが党が、かかる欺瞞と安易な援助受入れに反対することは当然であります。(拍手)  また、MSA協定締結に伴つて、わが国は顧問団なる職員六百五十名をわが国に受入れなくてはなりません。この職員の身分、人数、わが国が負担しなくてはならない行政費等で、なかなか意見の一致を見なかつたようでありますが、問題となるのは、これらの人々の活動及び権限であります。MSA法五百六条にある権限の中に、外国軍人の訓練の監督という項目があります。これはまつたく危険きわまりないのであつて、わが国の自主性は脅かされ、自衛隊の訓練の監督をするという名目で、いかようにもわが方の自衛隊は扱われるでありましよう。ことに、今回防衛二法案の改正によつてアメリカ軍との共同作戦も考えられるのであります。その際、アメリカ軍に対しては指揮権のない日本の自衛隊は、共同作戦の場合は不服ながらもアメリカ軍の指揮下に属さなければなりません。かくして、この軍事顧問団の指揮命令が共同作戦の名によつて内政干渉にまで進んで来ることは火を見るよりも明らかであつて、日本の統帥権はこれによつて喪失するものであります。(拍手)これによつて、まつたく日本の独立国家としての面目は踏みにじられてしまうのであります。  さらに、三条の規定に従つて防衛秘密保護法が制定され、この法律はMSA援助による物件、役務または情報に限つてのみ機密の漏洩を防止することを意図しているようでありますが、その中には、解釈の仕方によつてはいかようにもとれる点や、あるいはまた拡大解釈によつて、かつての軍機保護法的なものにまで発展する可能性を多分に蔵しているのであります。私どもは再び立入り禁止の立札を自分たちの国土の至るところに持たなければならない運命に置かれ、また自由なる言論が極端に封鎖されるに至り、再び過去の軍国主義国家の重苦しい空気の中に逆もどりさせられるのであります。(拍手)  以上のように、憲法に違反し、海外派兵の不安が多分にあり、また国民の求むる経済の安定からは遠ざかり、しかもアメリカ側から隷属的な指揮命令を受け、また日本の自立経済に対して何らの寄与が与えられないMSA援助を、政府が七重のひざを八重にまで折つて受けようとする意図は一体どこにあるのかと了解に苦しむものであります。(拍手)しかも、世界各国が平和に向つての努力がなされているとき、わが国が進んでアメリカより武器の援助を受けんとすることは、アメリカの要望によつて日本が再軍備を強要せられ、日本の軍隊をもつてアメリカの防波堤たらしめんとする意図によるものではなかろうかという疑問は、私たち日本国民の胸から消え去らないのであります。(拍手)この疑問は日本を取巻く国々の人々もひとしく抱くところであり、軍国日本再現に対して警戒するでありましよう。以上申し述べたような内容を包含し、その中には、いつ爆発して海外まで飛び出さなければならぬかもしれないような時限爆弾的危険性を内蔵する要注意のMSA協定は、国会の権威のためにも、これを批准すべきではありません。(拍手)国会は、かかる見地がら、ほうはいたるMSA反対の国民の意思を忠実に反映し、MSA協定の批准を拒み、平和憲法擁護の精神を内外に明らかにすべきであります。今や国会の威信が疑獄に次ぐ疑獄によつて失われております。この際MSA協定を通過させることあるならば、さらに日本憲法史上における最大の汚辱をしるすことになるでありましよう。このことは独立日本にとつて後世ぬぐうことのできない政治的悲劇としてしるされるでありましよう。(拍手)明日の日本の運命を支配する、民族興亡の一大試練に直面し、政府は決然として一大反省を行い、MSA協定に国会は批准せざる旨書き添えてアメリカに送付せられんことを要望して、私の反対討論を終らんとするものであります。(拍手)




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