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大英博物館が空っぽになる!?(第三回) -世界最大のダイヤモンド「偉大なるアフリカの星」はどうなる?-

2023-08-31 | 小日向白朗学会 情報
 本年8月24日のヨハネスブルグ首脳会議の最終宣言を受けて、BRICS諸国は、今後、旧宗主国に対して略奪した文化遺産を返還するよう求める活動が活発になっていくことが予想されると過去二回渡り寄稿してきた。
 これまで寄稿しているうちに、ふと気になることが思い浮かんだ。それは、今回のBRICS会議議長国南アフリカは旧宗主国に如何なる文化遺産を返還するように求めるのだろうか・・・ということである。
 19世紀後半、イギリスは南アフリカで、金とダイヤモンドが発見されたことから、その欲望を満たすためボーア戦争を開始し、苦戦の結果、漸くその地を支配した。そのボーア戦争を象徴する文化遺産と云えば、1905年にトランスバール共和国ヨハナスブルグ近郊にあるカリナン(Cullinan)鉱山で発見された106カラット(621.2 g)という史上最大のダイヤモンド原石「偉大なるアフリカの星(The Great Star of Africa)」以外に無いであろう。まさにヨハネスブルグ首脳会議の主要議題である「BRICSとアフリカ」を彷彿とさせる文化遺産なのである。その後の「偉大なるアフリカの星」であるが、トランスバール共和国の自治権を認める賠償金と共にイギリスのエドワード7世(Edward VII)に献上された。つまり、第二次ボーア戦争に負けたトランスバール共和国が戦後賠償として差し出したのだ。尚、カリナン(Cullinan)鉱山の名称であるが、最初はプレミア( Premier)鉱山であったが、後に、鉱山の所有者でありボーア人でもったトーマス・カリナン(Thomas Cullinan)にちなんでカリナン鉱山となった。カリナンがボーア人であったことを考えると、献上とは名ばかりで、敗戦後のボーア人が自ら持つ地位と権利を守るため差し出す以外に方法はなかったものと考えられる。しかし、これだけではイギリスに搾り取られたボーア人の話となってしまうが、実は、ボーア人は、現地アフリカ人を強制的に排除して彼らの入植地を築いたのであった。つまり、現地で暮らしていたアフリカ人は、ボーア人にむしり取られ、ボーア人はイギリス人にむしり取られるという実に悲惨な構造になっていたのだ。イギリスがアフリカ人を如何に駆逐していったのかは1964年公開の映画『ズール戦争(Zulu)』が詳しい。「まさかそこまでは」と思われるほどにイギリスの大虐殺(massacre)は醜いものであった。
 そして今回開催されたBRICSヨハネスブルグ首脳会議において旧宗主国に対して文化遺産の返還を求めることにしたことは、南アフリカの場合、ボーア人がイギリスに対して返還請求をたしのではなく、アフリカ人がボーア及びイギリスに対して求めるものなのだ。そして、この文化遺産返還運動の行き着く先は、歴史や自由主義経済体制を再検討する動きとなることは確実である。中でもアフリカ人の最大の悲劇である黒人奴隷制度に付いては、避けては通ることのできない課題となる。それは、奴隷貿易で得た利益がバークレー銀行の設立資金やジェームズ・ワットの蒸気機関の発明に融資されるなどして、イギリス産業革命の基盤を作ることになったからである。
 これに関連して、最近では、イギリス人奴隷商人エドワード・コルストン(Edward Colston)が莫大な資金を学校、病院、救貧院、教会に寄付したことで篤志家として有名であったが、その資金こそ黒人奴隷貿易で得た資金であったことから、その二面性が批判の対象となっているのである。

 次回は、BRICSによる文化遺産返還運動は、近いうちに日本にも及び、その結果、近代日本史の見直しを求められるであろうことを報告する。

以上(寄稿:近藤雄三)
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