おっさんじゃないぜ!

気が付くと周りはしょぼいおっさんだらけ・・・オレもそうか?いや、ちゃうぜ!・・・きっと・・・

原作おはなしーその3「助っ人」

2016年09月26日 16時44分32秒 | ジバクレイ達の世界

時の堰(ときのせき)第三章「助っ人」

「よく町はずれに道祖神の祠とか、先人を祭った祠とかあるじゃない。」うららが言う。

「町中を探すより古いジバクレイを探すなら町から出たほうがいいと思うの。」

サヨもレンもそりゃそうだね。と思った。しかし、薄暗い低く赤い夕陽の射す町はずれはちょっと怖いかも。とも思った。

「それはそうだよ。綾瀬さんの言うとおりだ。町中を探索しても古いジバクレイに出会う事はあっても稀と考えていいだろう。多く人の死んだ、もしくは沢山殺されたいわくつきの場所は閉じられ、人が寄り付かないから町に発展する事はほぼないんじゃないかな。」

中畑君はそういつもの早口でいうとうららの前にしゃしゃり出て「綾瀬さん。町はずれだよ。」と言ってうららの手を取り、「こっちだよ。きっと。」と言って細い路地にうららを連れて走り出した。

「あいつ!」レンは怒って一言小さく言うと、うららの後を追う。同時に皆も後を追った。

路地の奥には雑木林が広がり、その間を細い砂利道が続いた。

レンは走る中畑君とうららに追いつくと二人の前に出て、両手を広げ立ちはだかった。

中畑君はうららの右手を握っている。
それを見るとレンは面白くなく、怒りのような感情が湧き出してきた。

「おまえ!うららから手を放せ!」

思わず言ってしまった。さすがにレンの殺気にビビったのか中畑君は「はい。」と言って手を放した。

三人に追いついたサヨは道を塞いでるレンを見て「うわ!マジで怒ってる。」と感じた。困ったな。どうしようか?

すると、二人の前に仁王のように立ちはだかるレンにうららはそっと近づき、レンをぎゅっと抱きしめた。
とたんにレンの殺気が消え、レンの表情が和らいだ。

「ありがと。」

うららがそういうとレンは急に恥ずかしくなり、そわそわしだして「いや、オレ・・・急に・・・危ないかと・・思って・・・」小さくしどろもどろに言った。

サヨは今だ!っと言った感じで「ワケさま!」と言うとうららに後ろからぎゅっと抱き着いた。

「レンだけずるい!」と言って「アタシもぎゅっとして!」と言う。

うららは落ち着いたレンを放し、サヨをぎゅっと抱きしめた。丁度、妹と姉が互いに抱き合ってかのように見える。うららに比べるとサヨはまだ小さい。

レンはそれを見ると「オレもあんな感じなのかな。」とまた恥ずかしくなった。

うららとサヨはレンと中畑君に向かって「友達なんだから、仲間なんだから、仲良くね。」ってにこやかに言った。

レンと中畑君は苦い感じで笑ってた。

サヨはふと、思いついたかのように白井さんに「女子高生の白井さん。サヨをぎゅっと抱きしめてみて。」と言い、うららに続き姉妹のようにぎゅっと抱き合ってみた。

「なにかこころ安らぐね。」

白井さんがそういうと「レンもぎゅっとしてあげて。」と言って「キヨミちゃーん。」と言ってキヨミに抱き着いた。

白井さんはサヨの言う通り、レンをぎゅっと抱きしめた。

「レン君守ってね。」

そうかわいい白井さんにささやかれ、レンは真っ赤になった。レンは吉良さんにもぎゅっと抱きしめられて「助けてね。」と言われ、鼻の頭に汗をかいた。

キヨミにもぎゅっと抱きしめられて「レン君かっこいい。好きだよ。」と言われ、はたから見てもムッチャ照れている。

最期にサヨがレンをぎゅっと抱きしめて「一緒にあの日の朝に戻ろう。」とささやかれ、ムチャムチャテンションが上がっている。

中畑君も女の子たちにぎゅっと抱きしめられデレデレといった感じだ。

レンはサヨに抱きしめられた後、うららの前に行き「あの・・・その・・・」と言うと、うららは何も言わずぎゅっと抱きしめた。

「レン君。私を助けてね。救ってね。」

そう言われてレンは誓った。「必ずみんな助ける!」

うららは思った、サヨちゃんは凄いな。さっきの険悪な雰囲気から一気にみんなを打ち解けさせ最悪な関係になりそうだったレン君と中畑君をも自然に打ち解けさせちゃった。
年齢も違うみんなをここで纏めちゃうって凄い子だなあと。

みんな抱き合ってきゃっきゃ言っていたが、サヨは「じゃあ、また、皆でジバクレイを探そうよ!」そう言ってうららを中心に左右をサヨとレンサヨの後ろに中畑君、レンの後ろにキヨミちゃん、中畑君の後ろに吉良さん、キヨミちゃんの後ろに白井さんという陣形であたりを捜索する。
雑木林の奥は暗く不気味だった。町中だと不気味な感じはしないが、雑木林の中の細道はちょっと怖い感じがする。

道が二手に分かれており、左側に道祖神が見えたので左に行ってみる。進んでいくと大きなイチョウの木の下に祠が見え、ジバクレイが見える。

みなが繋いでいた手を放し、うららを中心にサヨとレンも構えた。キヨミは石を拾い、投石の準備をしている。習って白井や吉良、中畑も石を拾って応戦するようだった。

戦闘力MAXな意識のレンが飛び出し、ジバクレイに素早く立ち向かって行ったが、ジバクレイに押し戻されて吹っ飛んでいる。

うららもサヨも驚いた。このジバクレイ強くない?

めげずに二人はジバクレイに向かっていくがサヨの攻撃も受けられ吹き飛ばされてしまった。

「あれ、なんなの!全く通用しない!」

ジバクレイの動きは素早く、レンとサヨの攻撃は全て受けられてしまう。キヨミや白井さんの投げた石などことごとくかわされてしまう。

吹き飛ばされた二人の前にうららが立ちはだかり、ジバクレイからの攻撃を模造刀で受けている。その動きは素早く、打ち込みも激しい。

「みんな、下がって!こいつは普通のジバクレイじゃない!」

ジバクレイから闘気のオーラが見え、うららからも闘気のオーラが立ち上っている。「本気モードだ!」サヨはうららを見てそう感じた。

サヨもレンもキヨミも吉良さんも白井さんも中畑君も後ろに下がり見守った。ただサヨとレンは竹刀を手にワケさまの後方に構えている。

ジバクレイの闘気とうららの闘気がぶつかり合い、互いの動きにサヨとレンはついていけなかった。うららも強いがこのジバクレイは恐ろしく強い。サヨもレンも打ち込めずにいると、サヨの右手にメッセージが見えた。

--
「私」は二人を追って奥多摩湖の小河内ダムの前まで来て、苦戦している二人を見つけた。
この様子では敗北してしまう。
ジバクレイに敗北すると壺に抑えている魂の緒が天子の力によって元の場所に戻されてしまう。二人はまた、最初から仲間を探していかなければならないだろう。
「私」はピンチを窮する二人に再び経文を送った。と同時に経を読めというメッセージも送る。
--

「レン!経を読めって!」サヨの右手にそうメッセージが現れ、消えた。サヨはポケットを探り、経文を広げ、慌てて経を読んだ。

ジバクレイの動きが止まり、正気に戻ったのかジバクレイの正体が見えてきた。

鎧武者だ!うわっ!ジバクレイっぽい!ってサヨもレンも思った。見るからに怖そうで強そうな鎧武者だった。しかも大きい。

鎧武者はハッと我に返るとあたりを見回し、サヨに気付くとズカズカ走り寄ってきて、唖然とするレンを尻目にサヨを軽々と抱き上げ「千代!千代!」とサヨを呼び、その無精面をサヨの顔に擦り付けた。

サヨは訳が分からなかったが千代ではないので「おじさん。アタシ千代じゃないよ。サヨだよ。」と言った。

鎧武者はサヨの顔をじっと見据え、にこりとほほ笑みんだ。
「うぬは千代姫の転生ではないのか。」鎧武者はそういうと、まじまじとサヨを抱き上げたまま見る。

「おお、転生ではなく、末裔か。」そう言うとサヨを抱き上げたまま辺りを見回し、「おお、うぬも末裔か。」とレンに向かって言う。

「えっ?千代姫って?誰?」サヨが鎧武者に向かって言うと「ワシの娘の名じゃ。」と答えた。

鎧武者はうららに気が付き、サヨを抱き上げたまま「ちこう。ちこう寄られい。」と手招きし、じっと見据えた。「うぬは強いの。念流か。」そううららに問いかけた。

サヨは抱き上げられたままだったが、鎧武者に「ワケさまは強いのよ。日本一の剣士なんだから。おじさんにちょっと苦戦しちゃったけど。」と言い、「おじさんは誰?」と聞いた。

鎧武者はサヨを抱き上げたまま「わしゃ、横地監物と申す。北条家臣の八王子城代じゃ。」と名乗った。

「けんもつ!」サヨとレン、うらら、中畑君が同時に驚く。

サヨは変わらず鎧武者に抱き上げられたままだったが、鎧武者の無精面をまじまじと見ながら「おじさんが横地監物なの?城代の?」と聞いた。

「そうじゃ。監物じゃ。千代は青梅に逃がしたワシの娘の名じゃ。」といい、サヨを下ろし地面にあぐらをかいて腰を下ろした。

「サヨ殿と申したか。さきは千代と間違えてしまったわい。年の頃も顔も千代にそっくりじゃで。」

監物がそういうと、「ぬしらはここで何をしておるんじゃ。」そう言うと、うららの顔をじっと見た。

「私たちは、サヨとレンの事故死のきっかけとなったジバクレイを探して、町はずれの祠で監物殿を見つけたのです。」うららが監物にそう告げた。

サヨとレンが監物の娘の千代姫の末裔ならば、いささか古すぎるかと思うが、監物殿が現れ、サヨとレンの事故に起因するジバクレイもしくはサヨとレンの運命に起因するジバクレイだとしても不思議ではない。うららはそう思い、監物に聞いた。

「監物殿は、サヨとレン、二人の末裔の事故に因果がある方なのでしょうか。」

監物はうららの目をじっと見据えながら「いや、そうではない。」と答え、つづけた。

「ワシは千代に危機が訪れた時に、千代を助けるために現れるのじゃ。千代とそう約束したでな。」と意外な事を言う。

えっ。どういう事?思い悩むうららの姿を見据え、監物はにやりと笑い続けた。

「ワシは事故とはなんのゆかりもないジバクレイじゃ。じゃが、事故にゆかりのないだけで、おぬし達にはゆかりがある。」

うららは意味不明の説明に悩んだ。どういう事だろう。

悩むうららを見て、監物は一同を見渡して言う。

「さて、ワシは名乗ったがサヨ殿しか名を知らん。他の御一同、名乗っていただけぬか。」
監物はうららを見据えて「そちは名を何と申す。」と一番先に声をかけた。

「私の名は、綾瀬うらら。念流剣道初段、居合貫6段。中学一年生。12歳。」

監物は「うらら殿と申すか。念流の使い手か、さすがに強いのう。感心したわ。」と喜んだ。

「オレの名は、レン。うららちゃんと同じく念流の剣士、小学5年生。11歳。」

レンがそういうと、慌ててサヨも「アタシはサヨ。レンと同じく小学5年生の念流の剣士よ。11歳。」と告げた。

監物はにこやかに「サヨ殿とレン殿にうらら殿か。皆、念流の剣士なのじゃな。たのもしいのう。」とうれしそうに三人の肩を抱いた。

中畑、吉良、白井、キヨミが自己紹介を終わると、監物は立ち上がり、皆に言った。

「ワシがここに居るのは千代姫と別れた小河内村でのあの日の因果じゃ。サヨ殿、レン殿、うらら殿、おさみ殿、みう殿、あおい殿、キヨミ殿、7人の方々のお味方いたす。ワシだけじゃ心もとないので、ワシの配下の者と仲間にもお味方していただく。ここからは大船に乗ったつもりでいられい!」

そう、強面の監物が言うと、うららを残してみな沸き立った。強そうな監物が仲間になって戦ってくれるとは頼もしい。サヨは「城代よろしくー」と言って監物に抱き着いた。

「サヨ殿は、まこと千代姫にそっくりじゃて。」そういいながら監物はヒョイとサヨを抱き上げ肩に乗せると、「皆様方、ついてマイラれよ。」といって祠の奥の雑木林に入っていく。
中は暗く、お化けでも出そうでこわく、恐る恐る進んでいく中畑君や白井さんをレンが見て「お化け出そうだけど、そもそもオレ達ジバクレイだぜ。」と言うと、みなハッとして「なんだ。」と言って、ズカズカ進む監物の後についていく。

レンから見ると何かちょっとマヌケな感じがした。

うららは監物の先ほどの説明の意味が解らず悩んでいる。

監物は開(ひら)けた場所に着くとサヨを下ろし、皆を後にづかづか進む。やがて小道に出て、緩やかな登りを歩いていると焦げ臭いにおいがして、焼け落ちた櫓(やぐら)のようなものと門が見えた

櫓と門のあたりに無数のジバクレイが見える。

監物は「うらら殿。ワシの右手にマイラれよ。サヨ殿はワシの後ろ。レン殿はうらら殿の後ろで詰めてくれ。」と言って丁度、前衛二人を監物とうらら、後衛二人をサヨとレンという四角い陣形を取り、他の者は離れて隠れているようにと言った。

「うらら殿。今はその悩み、忘れてくれ。ジバクレイ達を正気に戻す事が今は優先じゃ。」

4人が門に近づくとジバクレイが次々と現れ、襲い掛かって来る。
監物とうららは間合いに入ってきたジバクレイを次々と倒す。
ジバクレイはテレビで見た事のある傘を被った雑兵(ぞうひょう)といった感じの見た目で、我に返ると監物に気が付き、跪(ひざまず)いて「城代!」と言い、監物の「こやつら!蹴散らせ!」の一言でジバクレイに向かって行く。
まさに合戦の様だったので、サヨもレンも思わず熱くなって、ジバクレイと戦って門を入り、櫓まで来た。ジバクレイは雑兵たちのようでそれほど強くはない。サヨは監物に守られているので思いっきり戦えた。何故か自分が凄く強くなった気がして監物の間合いの外へ出てしまい、ジバクレイに挑んだ。

「きゃ!」サヨの声が聞こえ、うららが振り向いた。サヨは地面に倒れ、ジバクレイが今にもサヨに飛びかかろうとしている。うららは咄嗟(とっさ)に模造刀の鞘(さや)をジバクレイに向かって投げた。

鞘はジバクレイに当たり、ジバクレイの動きが止まった。監物が気が付き、素早くサヨの前に回った。

「サヨ殿。危なかったのう。サヨ殿はワシの間合いをでてはならぬって。この場は本場の合戦場だで、油断は禁物じゃ。」

サヨは押し倒されて尻餅をついただけだったが「いててて。」と言って立ち上がり。「城代ごめんなさい。」と監物に謝った。

「実戦じゃからのう。サヨ殿も気を付けられよ。」と言うと、うららに鞘で投げ倒されたジバクレイが正気に戻り、目の前のサヨを見て突然跪き、「姫様!士郎でございます。」と言った。

これを聞いていた監物は「士郎か。また姫を守ってくれ。」と言うと「城代!承知仕る!」と言ってサヨの正面に立ち構え、次々と襲ってくるジバクレイを倒していった。

半数のジバクレイを正気に戻しただろうか。形勢は監物にあり、ジバクレイはみな正気に戻った。ここでの軍勢は30に増えた。

監物は隠れていた皆を呼び、雑兵たちに7名を守るように伝え、皆「承知!」と答えた。

先ほど士郎と呼ばれた鎧武者がサヨの前に来て、「姫様。お久しゅうございます。」と跪いた。サヨは動揺して監物を向いた。

「士郎。サヨ殿を千代と間違えるのも無理はないが、その方は、サヨ殿と申す千代姫の末裔じゃ。ワシも顔がそっくりじゃから間違えたわ。」

監物がそう言うと、サヨは、ほっとして、「ごめんなさい。千代姫じゃなくって、アタシはサヨだよ。」と士郎に言った。

士郎は「城代。では千代姫は逃げきれたのですね!」と言い、頷く監物を見ると涙を流しながら「この士郎宗貞。姫の盾となった甲斐がありました。」と言い、サヨに「サヨ殿。この士郎宗貞がお守りいたします。」とアツい感じで言った。

ジバクレイだった監物の配下の者たちの再会で場が湧いている中、監物はうららに「さすが念流の使い手じゃのう。」といい、「その刀、見せてはくれんかのう。」と続け、うららからいつも居合でつかっている模造刀を受け取った。

「ほう、この刀は刃がついてないのう。珍しい刀じゃ。」監物がそう言うと「私たちの時代では戦(いくさ)がないから刃はいらないの。」とうららが答える。
監物は「では。」と言って、一振りの刀をうららに渡し、「これは同田貫といって、千代姫が好んで使っていた刀じゃ。実戦向きの刀じゃな。」と言って、「抜いてみよ。この刃のない刀より、しっくり来るじゃろ。」と続けた。

うららが、鞘から刀を抜き、上段に構え、振り下ろす。空気が切れる音が鋭く軽くキレがある。
「この刀。何か違う。」うららがそういうと監物は「そうじゃろ。こっちの方がうらら殿には良いハズじゃ。」と言い、「このあとは、その刀を使ってくれ。」と続けた。

最初は監物一人で違和感があったが、もはや最初の7人以外は戦国時代を戦ってきた兵と武将に守られ、すでにパーティは守備兵と将合わせて30名とサヨ達7名に監物の総勢38名に膨れ上がっていた。
サヨ達7名はドラマや映画でしか武将を見た事がないので、本物に守られているなんてカッコいいって思ってた。監物を頭に配下の者たちでアタシ達を守ってくれてるんだ。

パーティは監物を先頭に、ところどころ焼け落ちている砦の中の山道を登った。監物の隣にはうららが居る。サヨの隣には士郎宗貞がにこやかに付き添っている。
レンは白井さんや吉良さん、キヨミちゃんを守っていて、その後ろに中畑君がいて、拾った棒を縦に振っている。剣の練習をしているのかな?戦う気満々?

やがて、また、焼け落ちた櫓のある場に来ると、ジバクレイ達が襲ってきた。監物とうららは、一刀でばさばさ打ち倒していく。雑兵たちも7人を守りながらジバクレイに応戦していく。

やがてまた、ジバクレイ達も正気を取り戻し、「城代!」と跪いて7人の警護に付き、ジバクレイ達と応戦する。士郎は相変わらずサヨを守り奮戦する。サヨも一線で戦いたかったが先ほどの事もあるので油断せず、士郎の間合いを離れず、戦っていた。

レンが女の子たちを守り戦っていた時に、雑兵たちの守りに混ざって拾った棒で隙間から応戦する中畑君を見た。「彼なりにも頑張っているんだなあ。」レンがそう思った瞬間。雑兵たちを吹き飛ばすジバクレイが現れた。

「中畑君が危ない!」レンはそう咄嗟に思い、駆け出して中畑君の前に出た。

雑兵たちはジバクレイに押され、ジバクレイはレンの前に現れた。

「こいつ、相当強いな。」ジバクレイの闘気のオーラを感じたレンは、竹刀を下段に構え、相手の打ち込みを誘った。シバクレイが飛び込んでくる。レンは突きで押し戻そうとしたが、ジバクレイの方が素早かった。レンが「しまった!」と思った瞬間。ジバクレイに胴脇を取られてしまった。「まずい!やられる!」と思った瞬間。ジバクレイの動きが止まった。ジバクレイの後ろに剣先が見え、真後ろにうららが居る。「レン君。大丈夫だった。」うららが微笑んでくれた。

雑兵たちの奮戦で、この曲輪の戦いもジバクレイたちを全て正気に戻した。レンが戦ったジバクレイは、金子家重(かねこいえしげ)というここの曲輪で奮戦した武将で、やはりサヨを見ると千代姫と呼んだ。
よほどサヨは千代姫とそっくりらしい事が良くわかる。監物と家重は仲良いらしく、ここでの総勢は40人ほどでパーティは78人に膨れ上がった。

「家重殿。サヨ殿は千代の転生ではないが、また、千代の為に働いてくれぬか。」
監物は家重にそういうと
「何を言われる城代。喜んで働かせていただきますぞ。」と言った。

一行は監物を先頭にうららとレン、士郎宗貞とサヨ、雑兵に守られているキヨミ、白井さん、吉良さん、中畑君と続いた。
サヨの所に家重が来て、サヨ殿は千代姫にそっくりじゃのう。と感心して繰り返し言う。家重は強面の監物とは違い、明るい感じで話好きの明るいおじさんだった。サヨに千代姫の事を我が娘のように自慢げに話してくれた。

千代姫は念流の使い手で、その剣技も相当のものだったとのことで、北条家の中での剣術大会で負けたことが無かったそうだった。利発で思慮深く、僧たちとの禅問答に舌を巻く者も多く、また、器量も良く北条家はもとより、まだ11と子供なのに輿入れをこう男子も後をたたなかったそうだった。何より文武両道を極めたといった印象の姫だったと。

サヨは興奮しながら自慢げに話す家重の話を聞きながら、「それって、ワケさまの事じゃないの?」って思った。

やがて、焼け落ちた鳥居が見えてきた。

うららはレンと並んで歩いていたが、ふと「この道をこんな感じで歩いた記憶がある。」とレンに話した。監物はそれを聞いて確信した。「やはり、千代の転生はうらら殿であったか。」

一行は山頂の曲輪に着くと焼け落ちた櫓の方から多数のジバクレイが向かってきた。

「一同、心してかかれ!」
監物がそういうと「おう!」と皆いい、ジバクレイに立ち向かって行った。

「カッコいい!映画の中のようだ。」サヨは思った。まさにその模様は映画の中の合戦の始まりといった感じで将は刀を抜いて先頭に立ち兵を伴って駆けていく。

監物とうららは一対でジバクレイを次々と倒し、正気に戻していった。監物の配下は既に80近い軍勢になっていて、一体を除きすべてのジバクレイを倒していた。

「みなみながた、このジバクレイは大石殿じゃ。」

「大石殿はワシとうらら殿で正気に戻すでな。手出し無用じゃ。」

そういうと監物はジバクレイと激しく打ち合った。その闘気は凄まじく、みな目を見張った。

一進一退の打ち合いが続き、監物の後ろにつけていたうららが刀を抜き、低く構えてジバクレイに向けて大きく飛んだ。ジバクレイは闘気むき出しのオーラでうららの刀を受けたように見えたが、ぱたりと動きを止めた。士郎宗貞と金子家重と一部の侍頭が「おお!」と歓声を上げた。

サヨ達には何があったか解らない。ただ、あんなうららは見たことが無い、あの構えはなんという型なのだろうか。

ジバクレイがこれまた強面の鎧武者になった。

「うわー!凄い!強そう!」サヨは思わず言ってしまった。

鎧武者はハッとして辺りを見回すと「おお!城代!監物殿!」と監物に気が付き「これはまた!みなみながた!戦でも始められるか!」と見回して「がはは!」と笑いながら言った。一同は照基の姿を見て沸き立った。これで八王子城で監物と戦った、千代姫と共に戦い、監物と千代姫を脱出させた面々が集った。

照基はサヨを見つけると「千代姫じゃあ!」と言ってずかずかサヨに寄ってきて抱き上げた。

「あ、大石殿。その姫はサヨ殿と申して、千代の末裔じゃ。千代の転生はおぬしを打ち倒したこのうらら殿じゃ。」

監物はそういうと、”えっ”といった表情のうららをひょいと抱き上げ肩に乗せた。

士郎宗貞も配下の兵もうららに跪き「姫様。我ら一同姫様のため、また働かせていただきます。」と言った。

「うーん!カッコいい!やっぱりワケさまは普通の人ではなかったんだ!」サヨは感動して思わず声に出してしまった。
「やっぱり、あの凛とした感じ、あの柔らかい美しさ、知的な話し方どれをとっても一般人じゃないよね。高貴な感じがしてたんだ。」

照基は相変わらずサヨを抱き上げている。照基の肩の上でバタバタとはしゃぐサヨとうららを照基は交互にまじまじと見つめながら、「千代姫の転生はこれまた美しいのう。凛々しさ倍増じゃ。でも、サヨ姫も可愛いのう。のう城代。どう見てもあの千代姫の姿のままじゃ。」

ここでの将兵の総勢は30人ほどで一行は100名を超す軍勢になっていた。

「みなみながた、再び千代姫の為に働いてくれ!」監物がそう肩にうららを乗せて言うと一行は「えい!えい!おー!」と地響きのようなかちどきを上げた。

「きやー!本格的!すごーい!城代!ワケさま!超かっこいい!」サヨが興奮してキャーキャー言って照基の肩の上でバタバタはしゃいでる。

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