「夢」
私は夜中に出かけます。妹が付いて来たのか良くわからないのですが、一緒に後ろを歩いています。
私は通っていた小学校を突っ切って行くことを決め、その事を妹に伝えます。
深夜の学校は怖いですが、二人ならこの道が早いと思ったのです。
私が学校の恐怖を感じた時、ふと振り返ると妹がいません。
妹は無言のまま、家に帰ったようです。
私は強い恐怖と怒りを感じて、自分も急いで家に帰ると、
私の家のダイニングで妹がお茶など飲んでくつろいでいました。
私は余計に怒って妹に抗議します。
「帰るなら帰る、学校を通りたくないのなら何故それを伝えてから離れないの?
私が一人で深夜の学校を歩いたら危ないじゃないか!」
妹が何も言わないので私は余計に腹が立って、
「あなたは人を危険にさらして平気な人間なんだ!」
この言葉を言おうとしたら声が出ません。夢で逃げるときに足が動かないようなもどかしさを感じます。
その時寝言を言ってうなされていたようで、泊まりに来ていた現実の妹が親切に起こしてくれて、
自分が観ていたのは夢だったのだと私は気がつきます。
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夢で、現実には悪夢から助けてくれた妹を、悪役みたいにしていた事を申し訳なく思いましたが、
何故二つの言葉で、前者は口が回り、後者は回らなかったのかを考えると面白かったです。
前者は「怖かったじゃないか!私が危ないでしょ!」という普通の怒りですが、
後者にはすり替えの理屈が含まれていて、
一般論としての道理を唱えつつ相手を悪と決めつけて批判しようという、殆ど無意識の試みがあります。
「人を危険な目に遭わせる御前は悪だ」
という理屈ですが、これは必ずしも証拠も根拠も無いものです。
この時点で何故妹が先に帰ったのかはわからないし、結果的に私が危険で怖かったとしても、
だから妹が悪意を持った悪い人間だと、私が決め付けることはできないからです。
つまり、私の怒りを表わすという意味では後者は「嘘」の飛躍した理屈の言葉とも言えます。
この手の嘘の理屈は、自分が怒っていることを一般正当化するためや、
相手にダメージを与えるために、割と一般的に使われる手だと思いますが、
大抵本来の目的とずれてしまうので、少なくとも互いの理解や仲直りには役に立たないものです。
「人間の怒り」とでも呼べるのか、相手への愛からなる、より高尚な怒りも、人の心にはあると思いますが、
私の夢の場合は全く関係がありません。単に私は自分が怖かったから怒ったのです。
私の現実を思い出しても
「私が傷ついた」「損をした」「無視された」「怖かった」「淋しかった」「不愉快だった」「悔しかった」「お腹すいた」
このような理由を掲げて相手が怒ってくれれば、その言葉は正直かつ真摯なものがありますが、
「あなたは悪い人」「ずるい」「間違っている」「道理が無い」「常識が無い」
こういう悪いものと称される言葉を言われれば、それは必ずしも真実ではありませんし、
本来の感情や心の問題ではなく、大抵の場合は批判のための低次元な理屈合戦になってしまいます。
「傷ついた、不愉快だった」で「あなたの気持ちに気がつかなかった、ごめんね」は成り立つ会話ですが、
「悪だ」と決め付けられて「その通りです。私は悪でした。ごめんなさい。」は、まず成り立たない会話です。
多分対象が主体よりも「悪」という訳ではないのでしょうし、
もし仮に、本当に悪で無神経で常識が無くて間違っているのでしたら、
その悪党は絶対に反省したり謝ったりしない、
相手が悪である限り、そんな正しい事や常識的な事をする訳がないはずです。
するとしたら、「悪だ」と批判されたことで、悪党が善人に突然変身したという珍しい事が起こったか、
その場を取り繕うとするために、本当は悪い人が、反省して謝る、嘘をついているとする方が自然な見方です。
夢の話にもどります。
妹に起こされている時に、私は夢と現実を両方生きていました。
無言の妹が怒る私の身体に優しく触れて、私がそれを拒否して振り払おうとしつつ現実に戻っていったのです。
この場合は、相手が悪かったのは夢で、優しかったのが現実でした。
夢で、間違った理屈に声が出ず使えなかったことは、良かったと思いました。
すりかえの理屈を無意識に使えるようになってしまうと、
真の怒り「一人で怖かった!」の言葉こそが、逆につまって出なくなる場合もあります。
どちらも「伝える」という能力かもしれませんが、
大切な一つのために、もう一つはその能力を持たない、無能であることも、良い場合があると思います。
もし自分が使える能力が限られているのだとしたら、こんな事は自分の人生でできなくても良い、という発想です。
夢の無意識の中まで、すり替えの理屈や嘘がペラペラと使えるほどには、人の頭は小ざかしくはないのでしょう。
現実の私もそう意識して生きたいです。
画像はラフ。
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