新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

文庫に関する余話

2023年04月20日 | 読書
もう一か月近く前の話になるのですが……


まずはペタペタ貼り付けた、付箋の貼り直し作業。




一年前、図書館の司書の方のツイートで、付箋の糊でインキが剥がれてしまう問題を知った。


本書を読んだ頃は、まだこのことを知らなかったので、活字の上に付箋を直接貼り付けてしまった。写真のような状態である。新しく貼り直していく。7ミリ幅の最小サイズの付箋が、文庫の小口(こぐち。ページを開いて、左右の余白の部分)にぴったり収まりちょうどいい。

文庫によって、小口の幅は異なる。仕事がひまなとき、デスクにあった資料の文庫本の小口のサイズを測ってみた。

岩波文庫・講談社文庫・講談社学術文庫・文春文庫は13ミリ。岩波文庫は日本初の文庫レベールだから、これが基本フォーマットというべきか。

新潮文庫・ちくま文庫・ちくま学芸文庫・集英社文庫は10ミリ。文庫は、いかに情報をコンパクトに詰め込むか、デジタル化の先駆けだった。このグループは、トラディショナルな岩波に対抗するために、少しでも多くの情報を詰め込もうとしたのか。

角川文庫と中公文庫は12ミリだった。

と、ここまでは前述の「江戸城の見えない日本橋」を書いたときに割愛したメモ書き部分。

たまにはハイキング以外の記事もアップしようと、下書きモードで保存していたこのメモを引っ張り出した。

しかし、同じ文庫であっても、作家・作品、発行年によっても、レイアウトが異なり、小口のサイズも異なるのではないか。

作者名・タイトル・発行年月は割愛してしまったけれど、新潮文庫は池波正太郎『剣客商売 一』(2002年9月20日発行、2006年5月10日十三刷)、『堀部安兵衛 下』(1999年12月1日発行)である。

池波のこの両作品の小口は10ミリだが、労組の事務所に置いていた荻原浩『押入れのちよ』(2009年1月1日発行)は、小口12ミリである。以前、私が編集を手掛ける小冊子のブックレビューで取り上げ、組合員がいつでも読めるように置いていた。

文字数も異なる。『押入れのちよ』は38字×16行だけれど、『剣客商売』は38字×17行。1行多い。『剣客商売』は小口側とノド側に2ミリずつ、版面を左右4ミリ広げ、写植時代の用語になるけれど、1H(1歯)、0.25mmくらい行送りのピッチを詰めているのだろう。

この1行の差は大きい。

『堀部安兵衛』は解説も含め上下巻1000ページを超える大作である。行数でいうと、単純計算で約17000行だが、16行なら1062ページになる計算だ。1行増やすことで、約6パーセント、ページ数を少なくできる。

6パーセントとばかにしてはいけない。最近は初版の部数も減っているようだけれど、文庫のような大ロットの印刷物では紙代が占めるシェアが非常に大きい。6割か7割は紙代ではないか。そのうち6%をコストカットできたら、版元は利益が増える。

『剣客商売』も、読んでいる最中はそう違和感はない。しかし『押入れのちよ』は、文字の組みがゆったりしていて、中高年の眼にもやさしい。

昔の新潮文庫はどうだったのか。シミやヤケなどで古書価ゼロの太宰治『新樹の言葉』(1982年7月25日発行)を腐海からサルベージしてみた。小口は12ミリ。ただし42行×18行で、今より情報量が多い。昔の文庫は、今より文字が小さかった。紙も印刷代も今より高かったし、本の読者も若かった証だろう。

『新樹の言葉』はおもしろそうだが、読み切るには、老眼鏡がマストかもしれない。

荻原浩の代表作『明日の記憶』は、私は原作も映画も残念ながらまだ見ていないけれど、良質な人情コメディの名家だと思う。『押入れのちよ』は失業中の青年の引っ越した格安アパートの押入れから「出て」きたのが、自称明治39年生まれの14歳のかわいらしい女の子だった、というお話。

押し入れといえば『ドラえもん』だが、古田足日・田畑精一『おしいれのぼうけん』も忘れることはできない。

吉田足日先生は、いわゆる「過激派」崩れが小冊子に書いたささやかなブックレビュー記事に、「僕の世界を深く理解してくれている」と、九条の会の絵はがきで、丁寧なお返事をくださった。あのときほど感動したことはない。

足日先生が亡くなったとき、ささやかながら追悼記事を書いた。幼い頃愛読した『おしいれのぼうけん』の書影を撮影するために、地元の書店で手に入れると、2014年11月1日発行、219刷で、その時点で200万部を超えていた。
初版は1974年11月1日。来年で刊行50年を迎える。

『ドラえもん』のドラエもんとのび太、『おしいれのぼうけん』とさとしとあきら、『椿町ロンリープラネット』の大野ふみ、『ぼっち・ざ・ろっく』の後藤ひとり、おしいれをこよなく愛するものたちが活躍する物語を、私は愛してきたんだなぁと思う。「おしいれの世界」なるエントリも、いつか立ててみたい。


昼休みのウォーキングの一コマ。
近くの公園で見つけた木のうろ。
「ひみつきち」のようで、れんちゃんも気に入っているということです…はぃ。





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