小学生の頃、宮沢賢治の童話をたくさん読みましたが、難しかった記憶があります。僕自身、賢治の印象は、体が弱く、大人しいと言うイメージで今日まできました。しかし、違っていました。これは、賢治の父親から見た賢治と賢治には言わなかった、息子賢治への思いの変化から、宮沢賢治を描いた新しい視線からの物語でした。
賢治は、裕福な家の長男でガキ大将。毎日野山を駆け回っていた健康な少年でした。小学校時代は成績優秀。この頃の父親は、絶対権力を持ち、子供の世話などしない。特に、宮沢家の様な裕福な家の父親は尚更。賢治がチフスで入院した際、父は医師が感染を懸念して断った看病を病室に泊まり込んで行う。そして、やはり、感染し、かなり重篤化し、これをきっかけに一生引きずる様な後遺症を患ってしまう。
僕がイメージしていた賢治は晩年になってから。妹の結核発病から。賢治が詩や童話を書いたのは、この妹に読んで聞かせるためだった。
父と息子、兄と妹への思いが美しく描かれていました。