眠りの奥深くの心地良さに
頭と体は敏感に反応し
常に眠りを欲するようになる
夢や幻が入り込み
誘惑の声を囁いている
苦悩と逃避が眠りへいざない
気の高ぶりが暗い海の底へ沈んでいく
何も無い世界(幻想)
空想産物が生み出した世界(現実)
いつしか眠りの虜となり
永遠が背中にまとわりつく
目の開いている時でさえ
眠りの中の幻が現れてきて
目の前を通り過ぎ
消えて 現れて
その光景に神経が麻痺をおこす
目を閉じれば
言いようの無いゆりかごに揺られ
どこまでも果てしなく沈んでいく
温もりを感じていた頃の記憶
置いてきた肌の温もり
心の温もり
怒りや不安や憂鬱なども無くしていき
廃人と呼ぶにふさわしい姿
眠りすぎた頭痛を大事そうに抱え
きょうきょう夜な夜な悪夢を引きずる
冷たい空気を胸いっぱいに吸い
荒れたカラダを奇麗にする
歩いてきた道のりを振り返っては
両腕の傷が痛みだす
出会いと別れを繰り返し
放浪癖の男はアスファルトに倒れ込む
あまりにも遠い星座達を
憧れというよりは羨望の眼差しで見る
馬鹿げた
いや当たり前の
憂鬱な思考回路は下り坂を転げ落ちる
危険なことだと分かっていても
これはもうどうしようもなく
止めるための方法に
目をつむってはみたものの
頭はぐるぐる回りだし
ぼやけた記憶が呼んでいる
手を伸ばせば届くぐらいの小さな部屋
偽りが囲んだ変態の部屋
夢も希望もつながるものも全てを無くし
がらんどうの瞳が鹿を見る
いつしか冷たい空気が敵になる
私は誰と泣けばいい?
悲しみに暮れた霧の景色は
深く沈むには十分なほど
足された強めの雨の音が
足を重たくさせる
ずぶ濡れになった体のしんに
微かながら明かりが灯り
降られた雨が汚れた体を洗い流してくれる
そんな気さえする夜霧の怪しさ
先の見えない道とはいえない道を
不安と怖さと少しの好奇が
後押しして進ませてくれている
けれども憂鬱な視線は目印を見失い
手招きしているような闇の声に誘われて
慌てて意識を雨音に集中させる
涙を零す暇さえ与えない
朦朧とする脳は
忘れられない過去の記憶を泳ぎ
次第に狂気の渦に入り込む
今ここにいることの謎は苦しく
自ら深く刻み込んだ傷が血を流し
痛みがやがて獣の叫び声をあげる
何故か冷たい雨が優しくおもえ
雨に打たれた体をいとおしく感じる
私の全てを雨に与え
私の全てを失くしてしまいましょう
こんなにいとおしい雨だから
タンポポは
綿毛になり
ふわり飛ぶ
幻想になり
海を見に行こう
「続・白石かずこ詩集」
白石かずこ 著
動物たちが目を覚ます。
そして動物たちが起き上がる。
起き上がり、立ち上がり、歩き、走り、
眠り、食べ、欠伸する。
旅をし、どこまでも、どこどこまでも。
詩は死生に触れながら、ふれそうな手前で
立ち止まる。
性を見詰める夕焼けのとき。
青春に触る朝日のほんのひととき。
舟をこぎその波に委ね抗う。
音楽。
ぼくはスピッツが好きだ。
好きすぎる。
宇多田ヒカルが好きだ。
coccoが好きだった。
演歌も好きだ。
テレサテンも好きだ。
個を抱きしめている。
個からはじまるものを抱える。
詩の跳躍をたのしみ抱く。