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「田植地蔵」とも呼ばれる地蔵菩薩立像。
靴をはいた珍しい地蔵
(京都市伏見区)
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地蔵盆などで、広く親しまれている「お地蔵さん」。
京都市伏見区の醍醐寺にある重要文化財「地蔵菩薩(ぼさつ)立像」は、
靴をはいた珍しい地蔵だ。
「田植地蔵」とも呼ばれ、
地元にはそれにまつわる民話が伝えられている。
郷土誌によると、昔、笠取(現在の宇治市)に少年がいた。
母を早くに失い、
父と農業に励んでいたが父も病気で亡くなった。
一人残された少年はどのように田植えを済ませればよいものかと悩み、
神仏に祈った。
ある朝早く、少年は一人で田植えをしようと思って田に行って驚いた。
すでに田植えは終わっているではないか。
辺りを見てもだれもいない。
ふと足元を見るとあぜの青草が泥で汚れている。
植えてくれた人の足跡に違いないと、
たどっていくと地蔵堂の前に着いた。
お地蔵さんを拝むと足元が泥で汚れていた。
少年はこのお地蔵さんが植えてくださったのだと、
慈悲に感激してますます信仰を高め、仕事に励んだ。
このことを聞いた村の人は深くお地蔵さんを信仰し、
後、上醍醐にまつったという。
江戸時代の「都名所図会」には、
旧笠取村にあたる宇治市炭山辺りのお堂に、
田植地蔵として崇敬を集めていた地蔵菩薩があったと記されている。
また、
醍醐寺の山手側の上醍醐には、
笠取に通じる山道の入り口に田植地蔵堂が現存し、興味をひく。
地蔵菩薩立像は上醍醐から現在、
山の下にある下醍醐の霊宝館に移されている。
同館学芸員のは「顔や体つきがふっくらしておおらかな印象です。
昔の人にとって親しみやすい存在だったのでは」と思い描く。
醍醐では今も、この話を次世代に伝える活動が行われている。
「この話には、困難な状況でもくじけずに一生懸命に生きれば、
周囲の人が支えてくれるというメッセージがあるのでは。
これからも地域の大切な話として伝えていきたい」と。
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