Revive

 

繋いだ手から

2019-06-26 12:35:00 | 日記


エスカレーターに乗ろうとした老夫婦。


しかし、
お婆さんは上手くエスカレーターに乗れず
繋いでいた手を離し一人で降りて行ったお爺さん

「そこで待っていなさい」
そう言って何度も何度も振り返りながら


床から出てくるエスカレーターの階段は
瞬く間に段差を作って下へ流れていき
取り残されたお婆さんは
一人でエスカレーターに乗ろうとするのに
そのタイミングが合わない。


何人かその隣を何事もなかったように
通り過ぎた。

人に親切にする事も世知辛い世の中のせいか
「余計なお世話」「余計な事をするな」と
思う人も居て声をかけるのも躊躇し
勇気がいるのかもしれないと思った。

でも、このまま
お婆さんを放っておくと、転倒しかねない。


「一緒に降りましょうか」
と手を差し出した私。

人と手を繋ぐことなんて
滅多とある事ではなく
少し照れくさい。


小さく痩せた手を握りエスカレーター下の
心配顔のお爺さんの元へ一緒に降りた。


エスカレーターを降りた時、
ご夫婦揃って恐縮するほど何度も何度も
頭を下げてお礼を言って下さった。

大したことなんて私は何もしていないのに。


その方たちがどんな人生を過ごされたか
私には分からないが、


夏休みになれば子供や孫たちが、
小さな、ひ孫を連れてくる。
廊下や階段を走り回る音、
「走っちゃダメよ」という母親の声。
物置から引っ張り出した、カキ氷器で
イチゴのかき氷で真っ赤にした舌を出し、
お爺さんやお婆さんを笑わせるひ孫。
2人だけの静かな家の中が
一気に賑やかになり
顔をシワクチャにして笑う老夫婦。

そんな、いつもの私の妄想(笑)



何の繋がりも無い見知らぬ方と手を繋ぎ
降りたエスカレーターの時間はほんの数秒
もう2度と会えない人たち、
縁もない人だけど老夫婦の表情を見て
少しだけ私の心を幸せにしてくれ
私と手を繋いでくれた人の事を思い出した。



うまくは表現出来ないけど
どんなことにも繋がりがあって
どこかで何かに繋がってる。

かたちが無くても
意味のないものなんて、どこにもない。
きっと、おそらく、たぶん、そうなんだ、
と私は思う。
自信も何の確信もないけど