Lilac-Garden

写真で綴る日々の記録 & クラギ練習帳

駄菓子屋世代のストーリー ・・・2

2007年03月27日 | 駄菓子屋世代のストーリー

駄菓子屋通いより少し前、もう少し小さい頃だと思う。私は母の買い物によくついて行った。毎日「お使いカゴ」を抱え、主婦が買い物に出るのが午後の3時頃。小さな商店はにわかに活気付く。

「きゅうり、ちょうだい」「あいよー、持ってきなー」
母がお金を差し出すと、八百屋の天井から所々、ゴムで吊り下げられた竹の籠をぐいーんと引っ張って、受け取った金を入れる。じゃらじゃらっとかき回しておつりを手渡すと、籠はボヨヨーンとまた元の位置で揺れた。おばちゃんの紺色の大きな前掛けの前で、きゅうりは新聞紙にくるくるっと包まれ、お使いカゴに投げ込まれる。

「奥さん、大根のいいのが入ってるよ。」「今日はいいわ。」「あいよ、また来てねー。」「お嬢ちゃんいくつ?」照れてる暇はない。トントンと流れるようにおばちゃんの口から飛び出してくる。やっと、年を言おうと顔をあげたら、「あ、奥さんいらっしゃーい。今日は何にする?」大声が行き交う元気な店だった。



家からは川の土手を少し歩く。片側は崖がそそり立つ土手の道。隙間だらけで所どころに木の節穴が小さく開いた橋を渡る。20cmくらいの粗末な縁があるだけで、欄干もないような古い板の橋。穴から下を覗き見れば、いつも川藻が揺れていた。

橋を渡り、細い急坂を登って角を曲がると小さな写真館。もう少し行くと和菓子屋、薬屋、魚屋、八百屋、肉屋と並んでいた。店屋の他は古い住宅街だったから、静かな細い路地で歩きやすい。私はきっと弾むように歩いていただろう。

環七沿いの小さな町。おそらくこの大きな道路に分断されたであろう小さな町だったから、あっという間に町は掻き消えた。八百屋が店を閉めたのはそれから5~6年もしないうちだったのではないだろうか。しばらく空き家だったが、気付くとセブンイレブンに変わっていた。

長年賑わった界隈の最後の時代を私は見ていたのかもしれない。

◆  ◆  ◆

Lilac-garden 駄菓子屋世代のストーリー より2回目  (写真はみろく公園のクリスマスローズ)



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19 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (hirokwns)
2007-03-27 09:15:24
 唸りましたよ、いいエッセーですね。
Lilacさんの違う一面を知りました、東京の下町情緒が溢れて、哀愁が漂っていて、最後の一行(セブンイレブンに変わっていた)が全体を引き締めました。
 時々はお書きになったほうがいい、寝ぼけがなくなりました。
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きっかけ (紺屋幸兵衛)
2007-03-27 10:20:36
 一つの言葉から、過去の世界(西岸良平の『三丁目の夕日』、昭和30年代)に引き込まれて、そこからいろいろなことが思い起こされていきます。今回は、『買い物かご』でした。

 レジ袋などない時代ですから、我が家でも当然買い物かごでした。素材は分からないけど、編みこんで作ったものでしたね。
 帰宅すると、まず買い物の中をさぐります。『通い帳』や財布、そして、お目当てのおやつに手が触れます。油紙(?)に入った、量り売りの落花生(ピーナッツとは言いませんでした)か、千鳥形の醤油味のおかきでした。
 何もないときは、まだ買い物に行っていないということ。自転車で買い物です。ワシは荷台に乗せられました。腿に当たる荷台の鉄の痛さ、落ちないようにしっかりと抱えた母の胴のぬくもり、…思い出していくと涙が出そうです。
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セピア色の風景 (マロニエのこみち・・・。)
2007-03-27 10:59:17
今のように、綺麗には舗装されていない細い道
建ち並ぶ小さな商店、飛び交う声・・・
とっても好きな世界です
セピア色の風景が、頭の中に浮かびましたよ!
そして、主人の育った大阪の町を思い出しましたLilacさんの甘すぎない文章が素敵ですね
これからもどんどん読ませてください!
素敵な世界をありがとうございます♪
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フフフ (yuu)
2007-03-27 11:25:22
お母さんのエプロンの裾、引っ張りながら
ついてったかな。
それとも、お母さん早く早く、、、と引っ張った方かしら。

中内さんがダイエーを始める前は、大阪はどこの町にも公設市場のようなのがあって、乾物屋、魚屋、八百屋、履物屋、駄菓子屋、何でも集まっていたものです。
時々通り抜ける市場の中は、なんで店開いてるの?
と思うような、閑散とした状態ですね。

Lilacさん、語りべになって古い話残していかれたらよいでしょう。

ここは、コンビニもないのか、、、と言う時代ですね、今。
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おかいもの (あすかのちち)
2007-03-27 13:02:32
「おっちゃんこれちょうだい。」
「おお。権左右衛門さんとこのボンか」
「30万円!」
「うん」
「ボン金持ちやな」
「ありがとう」
「きいつけて帰りや」

こんな会話を毎日のようにしていたと思います。
古い町ですので、みなさん屋号で呼ぶので
私は権左右衛門でした。実際に権左右衛門さんは知りませんが。
また、必ず「万円」はつきましたね。やはり関西人!でもそれにいちいちリアクションしないのも関西人か。30円渡してました。この店は万屋さんでしたが、今は仕出し屋になってます。屋号は儀平。でも子供たちはゲーサンって呼んでました。懐かしいな。
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Unknown (Unknown)
2007-03-27 19:24:09
ああ、同じ時代を生きた人がいる、、って、安心できるんですね。読み進むにつれて、昔のことがだんだんと鮮明に思い出されてきます。
なつかしいですね、、、、私の思い出に登場するのは、今はもういない人ばかり、、、だからなおさらでしょうか。

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Unknown (poccori)
2007-03-27 19:25:50
すみません、今のコメントは私でした。
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感性 (rada)
2007-03-27 22:56:29
色々と覚えているんですねえ・・あんまり記憶してない私はアホでしょうか・・(汗)
こうゆう、小さい頃の感性が今を形成するんでしょうね。
だから、私の文章はハチャメチャ・・^^;

お使いカゴって言ってた?私は買い物かご。今買い物かごって聞くと、ネットショッピングのカゴ?って思っちゃうところがなんとも、だけど・・(^^;)
でも、子どものときはカゴを持って買い物行ってたな~。私がじゃなくて、母やばーちゃんがなんだけど。。その当時は集合レジじゃなかったのかな?ひとつひとつお店で買ってたのかな?・・・忘れてるし・・・
エコ的にもカゴ復活なるか?かさばるからムリか・・(^^;)
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初コメント (avalon)
2007-03-27 23:50:44
駄菓子屋世代のストーリー楽しく読ませて頂きました。たしかに「三丁目の夕日」の風景が浮かびますね。
そして、気になったのが、みろく公園のクリスマスローズ。実は、先日我輩もみろく公園へ行ってました。そしてクリスマスローズも撮りました。でも、あまり出来がよくないのでブログへUPの予定は、ないですが・・・


記事とは、関係ないですが、色々拝見しているとレコード特集に驚き。
アカペラのクリスマスソング!
わぉ~このCDを我輩も持ってます。
イイですよね。キャンドルの灯りでクリスマスケーキをこのCD聞きながら食べると一味違ってきます。
(もう何年もしてないですが・・・)
その他、懐かしいアルバムのジャケットの写真で懐かしい時代にタイムスリップしてしまいました。
(知らないのも多いですが・・・)
Lilacさんが、過ごした青春時代もなんとなく分かる気がしましたよ。
楽しませて頂きありがとうございます。
また、たまにお邪魔させて頂きたいと思いますので、よろしく。
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多彩なLilacさんに拍手! (kiri)
2007-03-28 07:14:43
いつもフットワークが軽いな~とは、思っていましたが、タイムマシンに乗って、幼い頃を旅行して来たみたい。 

リズミカルな話しに幼い頃の記憶がよみがえります。ボヨヨ~ンのかご、市場の活気そのまんまです。細かい記憶は、皆無です。・・・
ただ、お肉やさんの四角い魚肉ソーセ~ジだけがはっきりと・・・ハムは、全く記憶がないのよね。(我が家の経済状態でした。)もう一度、食べて見たい味です。
旅行の時、何十年かぶりに前に昔住んでいた所を通ったので、よく行ったお菓子屋(計り売りしてくれた)さんはと、車の窓から捜しましたが全くわかりませんでした。小高い丘や畑がなくなり町になっていて全く昔の面影は、ありませんでした。

たった一本のクリスマスロ~ズ?葉っぱもないのね。でも茶色のバックとで、話しの雰囲気が出てていいよね。
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