ベネズエラ・ラテンアメリカ短報No.48
( 2022年5月19日 )
(ラ米カリブ続き 要点)
・ 「米州サミット」が米国ロサンゼルスで6月6~10日に開催される予定だが、米国務省が5月はじめ、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアを招待しないと発表。それに対して、カリブ諸国14ヵ国(カリブ共同体CARICOM)が、排除国のある「米州サミット」はボイコットすると表明したのをはじめ、メキシコ、ボリビア、ホンジュラス、アルゼンチンなども、またALBAも厳しく批判し、排除国のないサミットを主張。 / バイデン政権は招待状をまだ発行しておらず、動向が注目されている。
【「米州サミット」は1994年に米国が呼びかけてマイアミで第1回。その後2~4年に1回開催されてきて今回が第9回。当初からキューバを排除していたが、反帝反ネオリベの民主的・進歩的政権が次々に誕生する中で批判が強まり、2015年の第7回からキューバも招待せざるを得なくなり、以後はすべての国に招待状を送ることになった。ただし、キューバは不参加。米国で開催されるのは今回で2度目。】
・ 「米州サミット」に対抗して、現地で「人民サミット」がおこなわれ、メキシコで「米州労働者サミット」が開催される。 / 前者は、いくつかの国を除外するようなサミットに代わる選択肢を提示する。「米州機構(OAS)が招集する米州サミットは長い間、私たちが共有する大陸の人々を顧みず、ラテンアメリカとカリブ海における米国の経済・政治利益を押し付ける場となってきた」と批判し、「一方、人民サミットでは、運動指導者や現場の組織者が集まり、民主主義、主権、変革について議論する」としている。 / 後者は、「米州サミット」を、北米の企業に奉仕する新自由主義的なものとして糾弾し、またキューバ、ベネズエラ、ニカラグアに対する経済封鎖を糾弾し、ベネズエラの特使アレックス・サーブの誘拐や米・メキシコ国境の“恥ずべき壁”を糾弾するなどしている。
・ ラ米カリブ統合の動きが再活性化している。 / かつてベネズエラのチャベスが主導してUNASUR(南米諸国連合)やCELAC(ラ米カリブ諸国共同体)がつくられたが、チャベスの死後、米帝による反動攻勢が強まる中で停滞と後退を余儀なくされてきた。 / だが、2020年後半からの人民運動の未曾有の再活性化によって反米反帝反ネオリベの政権が次々に成立する中で、メキシコとアルゼンチンが中心になって、4年間首脳会議がおこなわれていなかったCELACが21年9月に復活再生した。 / アルゼンチンは、欧米の金融覇権に対抗しようとしているBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)に加わる予定。
・ ブラジルのルラが、5月はじめの集会での演説で、新たな中南米通貨の創設を提案した。「ドルに依存し続けることはできないので、ラテンアメリカに通貨をつくる」と。スペイン語で「南」を意味する「SUR」と命名。 / この通貨の目的は、ラ米カリブの統合を深め、地域の経済的主権を強化し、米国への依存を弱めることにあるとしている。 / また、BRICSを復活させ、欧米の金融覇権に対抗する経済圏を構築するとも。
―― ―― ―― ―― ――
(ラ米カリブ続き)
Peoples Dispatch May 13, 2022 by Peoples Dispatch
“Democracy for who?”: People’s Summit runs counter to Biden’s imperialist Summit of the Americas
(「誰のための民主主義か」:バイデンの帝国主義的「米州サミット」に対抗して「人民サミット」開催)
「人民サミット」は、パネルディスカッション、ワークショップ、文化活動などのプログラムを発表し、多様な声を集めている。 / 「人民サミット」は、6月8、9、10日に開催され、米国の影響下にある米州機構(OAS)が開催する「米州サミット」に対抗するものである。 / 「米州サミット」と並行してロサンゼルスで開催される「人民サミット」は、ロサンゼルスだけでなく、世界における大規模な不平等を浮き彫りにするものである。 / 「人民サミット」は、ニカラグア、ベネズエラ、キューバの社会主義国の指導者が招待されていない「米州サミット」の帝国主義的遺産に直接挑戦するものである。 / 「人民サミット」は、いくつかの国を除外するようなサミットに代わる選択肢を提示するものである。「人民サミット」のウェブサイトにあるように、「米州機構(OAS)が招集する米州サミットは長い間、私たちが共有する大陸の人々を顧みず、ラテンアメリカとカリブ海における米国の経済・政治利益を押し付ける場となってきた」。一方、人民サミットでは、運動指導者や現場の組織者が集まり、民主主義、主権、変革について議論する。 / プログラムには、哲学者で活動家のコーネル・ウェスト博士、「ブラック・ライブズ・マター」の組織者であるメリナ・アブドゥラ、独立運動家で元政治犯のオスカー・ロペス・リベラ、環境保護主義者で運動指導者のベルタ・ズーニガなど世界的に有名なスピーカーが名を連ねている。ブラジルの「土地なし農村労働者運動」やグアテマラの「農民統一委員会」などの社会運動もプログラムに参加する予定。 / 「人民サミット」の主催者であり“人民フォーラム”の共同ディレクターであるクラウディア・デ・ラ・クルスは、「サミットは、広範な参加の場であり、大陸と人々の闘いを表現する場となるでしょう」と述べた。
【メキシコでの「米州労働者サミット」とは別の、現地ロサンゼルスでのもの。「主催者であり“人民フォーラム”の共同ディレクターであるクラウディア・デ・ラ・クルス」は解放の神学者。】
Workers World May 12, 2022 By a guest author
Call for ‘Workers Summit of the Americas’
(「米州労働者サミット」の呼びかけ)
メキシコのティファナで開催される「米州労働者サミット」のミーティングは、“我らがアメリカ(Our Americas)”のすべての諸国人民と合流する場を提供するものである。われわれは、ロサンゼルスで米国務省が主催するOASの「米州サミット」に対抗する。米国に包囲されている国々(ベネズエラ、ニカラグア、キューバなど)は、OASの茶番劇には参加しないだろう。 / 「労働者サミット」は、参加を希望する北米の闘う同志を招待する機会を与えてくれる。ティファナは、労働者階級が人類の歴史の中で未曾有の諸課題に直面しているときに、南と北の進歩的諸勢力が出会う場である。
1.「米州サミット」を、北米(米国とカナダ)の企業の利益・関心に応える新自由主義的な手段で南の国々を搾取しようとする例として、糾弾する。
2.ベネズエラ、キューバ、ニカラグアに対する経済封鎖政策を糾弾する。
3.米財務省による外交官アレックス・サーブの誘拐を糾弾する。
4.メキシコと米国の間の恥ずべき国境の壁を糾弾する。これは、南部の人々に対する米国の反移民政策と人種差別政策を象徴するものである。
5.米国政府が開始した地球の未来に対する死の政策(necropolitics)を糾弾する。
6.メキシコ、米国、カナダにおける、環境、自然、人間を優先する新しい世界のために闘っている先進的な政治的活動家たちと直接の関係を築く。
7.メキシコ、米国、カナダの労働組合組織と緊密な関係を結ぶ。
8.米国における警察の残虐行為を糾弾する。
9.地域統合(CELAC、UNASUR)支持。
10.米州の先住民の闘い支持。
11.NATOは我々の大陸の恥部である。
【このあと最後は「メキシコ、米国、カナダの初参加諸組織」が列挙されている。】
Prensa Latina May 12, 2022 Published by: Elsy Fors Garzon
ALBA-TCP criticizes US call for excluding countries from summit
(ALBA-TCP、サミットから数カ国を排除する米国の呼びかけを批判)
ALBA-TCPの事務局長Sacha Llorentiは、本日(5/12)、米州地域のいくつかの国を排除するという政治的決定によって示された米州サミットへの呼びかけにおける米国政府の誤りを強調した。
Prensa Latina May 12, 2022 Published by: Aleynes Palacios Hurtado
Latin America and the Caribbean back Cuba’s attendance to summit
(ラ米カリブ諸国、サミットへのキューバの出席を支持)
カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されるサミットにキューバ、ニカラグア、ベネズエラを招待しないというワシントンの計画により、この地域のいくつもの政府は、主催者が除外を主張するならば、出席しないと発表した。 / この種の大統領サミットは米州機構(OAS)が主催する。OASは1962年にワシントンの要請でキューバを追放した。その結果、キューバは1994年に始まった米州サミットから排除された。 / しかし、過去10年間にラ米カリブ諸国における進歩的な政府の躍進が、米国の封鎖解除とこの種の会議へのキューバの出席を支持する主張への批判を引き起こした。その結果、2009年にOASは、1962年にキューバをOASから追放した時代遅れの決議を廃止せざるを得なくなった。 / しかし、、キューバは米国が支配するブロックに戻ることを拒否しており、その姿勢はキューバ当局によって何度も繰り返されている。
【「米州サミット」は1994年から2~4年に1回開催されてきた。2018年に第8回。今回は6月にロサンゼルスで第9回が予定されている。 / キューバは初回から排除され続けてきたが、反米反帝政権や民主的政権が次々に成立する中で、2015年の第7回からはキューバも招請されるようになった。ただし、キューバは出席していない。 / 今回、米国はキューバ、ベネズエラ、ニカラグアを招待しないと発表。それに対して、カリコム14ヵ国が排除国のある米州サミットには出席しないと発表したのに続き、メキシコ、ボリビア、ホンジュラス、アルゼンチンなどが次々に同様の表明をして米国の姿勢を批判。メキシコは代表は送るが大統領は欠席という形に。】
Prensa Latina May 12, 2022 Published by: Alina Ramos Martin
Argentina rejects exclusion of countries from Summit of the Americas
(アルゼンチン、米州サミットからの複数の国の排除を拒否)
アルゼンチンは、キューバ、ニカラグア、ベネズエラを第9回米州サミットから除外するという米国の決定を改めて批判し、この行動は地域の組織や政府から非難されるべきものであるとした。
teleSUR Published 12 May 2022
Trinidad & Tobago Support an Inclusive Summit of the Americas
(トリニダード・トバゴ、包括的な米州サミットを支持)
トリニダード・トバゴのAmery Browne外相は、「カリブ諸国共同体(CARICOM)」と自国は第9回米州サミットが排他的ではなく包括的であることに賛成であると述べた。 / 週末、「東カリブ諸国機構(OECS)」の首脳はこの問題を議論するために会合した。アンティグア・バーブーダとセントビンセント・グレナディーンは、グアイドへの招待やキューバのミゲル・ディアスカネル大統領の除外を受け入れないと指摘した。 / アンティグア・バーブーダのガストン・ブラウン首相は、米国のベネズエラおよびキューバに対する政策を拒否するほか、同国は元議員のグアイドをボリバル国家の大統領として認めないことを明らかにした。 / 1994年から3~4年ごとに開催されている米州サミットが、今回は米国の主催で開催されることになった。しかし、バイデン政権がとった態度は、その開催に疑問を提起している。 / ボリビアのエボ・モラレス元大統領は「米州サミットが失敗しようとしているのは、ラ米カリブ諸国の政府に対話の意志がないからではなく、我々の民族に対する米国の傲慢さと軽蔑のせいだ」とツイートしている。 / 米国内には別の立場もある。水曜日(5/11)にこの問題について質問された下院外交委員会のグレゴリー・ミークス委員長は、「バイデン政権がラテンアメリカ諸国の声に耳を傾け、キューバとベネズエラを次の首脳会議に参加させることを望む」と述べている。
teleSUR Published 12 May 2022
Honduras Rejects Exclusion of Countries in Americas Summit
(ホンジュラス、米州サミットへの数カ国除外を拒否)
ホンジュラスのシオマラ・カストロ大統領は、6月6日から10日にかけて米国ロサンゼルスで開催される米州サミットへのニカラグア、キューバ、ベネズエラなどの国々の除外を拒否した。
Prensa Latina May 11, 2022 Published by: Ana Luisa Brown
Bolivia to be absent from the Summit of the Americas
(ボリビア、米州サミットを欠席へ)
ボリビアのルイス・アルセ大統領は、「米州サミット」を、自国の価値観や地域のニーズを代表しない排他的な会議であると考え、欠席する予定である。
Peoples Dispatch May 10, 2022 by Marco Fernandes (写真:ALBA-TCP首脳たち)
Why Latin America needs a new world order
(なぜラテンアメリカは新しい世界秩序を必要とするのか)
ラテンアメリカは新たな冷戦を望んでいない。この地域はすでに何十年にもわたる軍事支配と緊縮財政に苦しんでいる。ラ米カリブは平和を望んでいる。 / 世界はウクライナの紛争を終わらせることを望んでいる。しかし、NATO諸国は、ウクライナへの武器輸送を増やし、“ロシアの弱体化”を望むと宣言することで、紛争を長引かせようとしている。米国はすでにウクライナの武装のために136億ドルを割り当てていた。バイデンはさらに330億ドルを要求したところだ。それに比べて、2030年までに世界の飢餓をなくすのに必要な額は年間450億ドルだ。 / ラ米カリブは平和を望んでいる。このプロセスは、新自由主義的な緊縮財政の津波によって引き起こされた民衆の反乱のサイクルが、進歩的な政府の選出につながった20年前に始まったものである。ベネズエラ(1999)、ブラジル(2002)、アルゼンチン(2003)、ウルグアイ(2005)、ボリビア(2005)、エクアドル(2007)、そしてパラグアイ(2008)である。これらの国々にキューバとニカラグアが加わり、2004年にALBA-TCP、2008年に南米諸国連合(UNASUR)、2011年にラ米カリブ諸国共同体(CELAC)という地域組織が設立された。これらのプラットフォームは、地域の貿易と政治的統合を促進することを目的としていた。しかし、米国は、加盟国の政府転覆を図り、ワシントンの利益になるように地域ブロックを分割することによって、このプロセスを弱体化させようとしたのである。 / ブラジルは、その国土の広さと政治的な関連性から、これらの初期の組織で重要な役割を果たした。2009年、ブラジルはロシア、インド、中国、南アフリカとともにBRICSを結成した。それは、世界の貿易と政治の力関係を再編することを目的とした新しい同盟となった。 / だが、ブラジルは、エリート層と連携し、議会、司法制度、メディアを利用して、2016年にルセフ大統領の政権転覆、2018年にルーラ大統領(当時大統領選でトップ)の逮捕を成功させた。 / 潮目の変化 近年、ラ米カリブでは、進歩的な政府の新しい波が押し寄せている。地域統合の構想がテーブルに戻ってきた。4年間首脳会談が行われなかったCELACは、2021年9月、メキシコのAMLO大統領とアルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領のリーダーシップのもとに再開された。2022年5月のコロンビア大統領選挙でグスタボ・ペトロが勝利して10月のブラジル大統領選挙でルラが再選を果たせば、数十年ぶりに中南米4大経済圏(ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビア)は、ラ米カリブ統合支持派を中心とした中道左派によって統治されることになろう。ルラは、大統領選で勝利すれば、ブラジルはCELACに復帰し、BRICSにも積極的な姿勢で臨むと述べている。【そこにアルゼンチンも加盟する予定。】 / NATOがロシアを制裁するための最大規模の連合を作ろうとした際に、全会一致を欠いた。このNATOのプロジェクトは、Global Southを中心に反発を呼び起こした。戦争を非難する政府(アルゼンチン、ブラジル、インド、南アフリカなど)でさえ、NATOの一方的な制裁政策に同意せず、平和的解決のための交渉を支持することを望んでいる。 / 人類は、不平等、飢餓、気候危機、新たなパンデミックの脅威など、緊急の課題に直面している。それらを克服するためには、南半球の地域連合が世界政治に新たな多極化を導入することができなければならない。
teleSUR Published 10 May 2022
Mexican President Not to Attend a Non-Inclusive Americas Summit
(メキシコ大統領、非包括的な米州サミットには出席しない)
火曜日(5/10)、メキシコのAMLO大統領は、米国がすべてのラテンアメリカ諸国を招待しないなら、米州サミットに出席しないと発表した。 / 「全員が招待されない場合は、・・・私は行かない。外相が代表として行くだろう」と述べた。
NEW COLD WAR May 9, 2022 By Benjamin Norton
Brazil’s Lula Proposes Creating Latin American Currency to ‘Be Freed of US Dollar’ Dependency
(ブラジルのルラ、「米ドル依存から解放される」中南米通貨の創設を提案)
(2022年5月4日、Multipolaristaに掲載された。) ルラは5月2日の集会で演説し、大統領に復帰した場合、「ドルに依存し続けることはできないので、ラテンアメリカに通貨をつくる」と述べた。その通貨は、スペイン語で「南」を意味する「スール」と呼ばれることになると明かした。 / ルラは、ラ米カリブの国々は自国の通貨を保持しながらも、米ドルに交換する代わりに「スール」を使って二国間貿易を行うことができると説明した。 / この通貨の目的は、ラ米カリブの統合を深め、地域の経済的主権を強化し、米国への依存を弱めることである、とルラは述べた。 / ルラはまた、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカを統合したBRICSシステムを復活させ、欧米の金融覇権に対抗する独立した経済アーキテクチャを構築すると公言している。 / ウーゴ・チャベスの汎ラテンアメリカ通貨「スクレ」創設の試み ルラが提案した「スール」は、ラテンアメリカの進歩的な政治家が共通通貨を作ろうとした初めての試みではない。 / ベネズエラの革命家ウーゴ・チャベスは、ラ米カリブ諸国の左派政権による経済連合、「米州ボリバル同盟(ALBA)」の一員として、国際通貨を開発した。この通貨は「スクレ」と呼ばれ、2009年にベネズエラ、ニカラグア、キューバ、ボリビア、エクアドルの5カ国で採用された。 / 2012年のピーク時には、スクレはこの地域の年間二国間貿易で10億ドル以上に使用されていた。しかし、2013年のチャベスの死、2014年の商品価格の大幅下落、2015年の米国のベネズエラ制裁発動、チャベスの後継者ニコラス・マドゥーロに対する暴力的クーデター未遂などを受け、2016年までにこの通貨は使われなくなった。
【ルラの新通貨提案は「INTERNATIONALIST 360°(MAY 3, 2022)Lula Wants a Latin American Currency(ルラはラテンアメリカ通貨を望んでいる)」で既にとらえて「要点のみ」として「5.12報告」に入れている。】
( 2022年5月19日 )
(ラ米カリブ続き 要点)
・ 「米州サミット」が米国ロサンゼルスで6月6~10日に開催される予定だが、米国務省が5月はじめ、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアを招待しないと発表。それに対して、カリブ諸国14ヵ国(カリブ共同体CARICOM)が、排除国のある「米州サミット」はボイコットすると表明したのをはじめ、メキシコ、ボリビア、ホンジュラス、アルゼンチンなども、またALBAも厳しく批判し、排除国のないサミットを主張。 / バイデン政権は招待状をまだ発行しておらず、動向が注目されている。
【「米州サミット」は1994年に米国が呼びかけてマイアミで第1回。その後2~4年に1回開催されてきて今回が第9回。当初からキューバを排除していたが、反帝反ネオリベの民主的・進歩的政権が次々に誕生する中で批判が強まり、2015年の第7回からキューバも招待せざるを得なくなり、以後はすべての国に招待状を送ることになった。ただし、キューバは不参加。米国で開催されるのは今回で2度目。】
・ 「米州サミット」に対抗して、現地で「人民サミット」がおこなわれ、メキシコで「米州労働者サミット」が開催される。 / 前者は、いくつかの国を除外するようなサミットに代わる選択肢を提示する。「米州機構(OAS)が招集する米州サミットは長い間、私たちが共有する大陸の人々を顧みず、ラテンアメリカとカリブ海における米国の経済・政治利益を押し付ける場となってきた」と批判し、「一方、人民サミットでは、運動指導者や現場の組織者が集まり、民主主義、主権、変革について議論する」としている。 / 後者は、「米州サミット」を、北米の企業に奉仕する新自由主義的なものとして糾弾し、またキューバ、ベネズエラ、ニカラグアに対する経済封鎖を糾弾し、ベネズエラの特使アレックス・サーブの誘拐や米・メキシコ国境の“恥ずべき壁”を糾弾するなどしている。
・ ラ米カリブ統合の動きが再活性化している。 / かつてベネズエラのチャベスが主導してUNASUR(南米諸国連合)やCELAC(ラ米カリブ諸国共同体)がつくられたが、チャベスの死後、米帝による反動攻勢が強まる中で停滞と後退を余儀なくされてきた。 / だが、2020年後半からの人民運動の未曾有の再活性化によって反米反帝反ネオリベの政権が次々に成立する中で、メキシコとアルゼンチンが中心になって、4年間首脳会議がおこなわれていなかったCELACが21年9月に復活再生した。 / アルゼンチンは、欧米の金融覇権に対抗しようとしているBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)に加わる予定。
・ ブラジルのルラが、5月はじめの集会での演説で、新たな中南米通貨の創設を提案した。「ドルに依存し続けることはできないので、ラテンアメリカに通貨をつくる」と。スペイン語で「南」を意味する「SUR」と命名。 / この通貨の目的は、ラ米カリブの統合を深め、地域の経済的主権を強化し、米国への依存を弱めることにあるとしている。 / また、BRICSを復活させ、欧米の金融覇権に対抗する経済圏を構築するとも。
―― ―― ―― ―― ――
(ラ米カリブ続き)
Peoples Dispatch May 13, 2022 by Peoples Dispatch
“Democracy for who?”: People’s Summit runs counter to Biden’s imperialist Summit of the Americas
(「誰のための民主主義か」:バイデンの帝国主義的「米州サミット」に対抗して「人民サミット」開催)
「人民サミット」は、パネルディスカッション、ワークショップ、文化活動などのプログラムを発表し、多様な声を集めている。 / 「人民サミット」は、6月8、9、10日に開催され、米国の影響下にある米州機構(OAS)が開催する「米州サミット」に対抗するものである。 / 「米州サミット」と並行してロサンゼルスで開催される「人民サミット」は、ロサンゼルスだけでなく、世界における大規模な不平等を浮き彫りにするものである。 / 「人民サミット」は、ニカラグア、ベネズエラ、キューバの社会主義国の指導者が招待されていない「米州サミット」の帝国主義的遺産に直接挑戦するものである。 / 「人民サミット」は、いくつかの国を除外するようなサミットに代わる選択肢を提示するものである。「人民サミット」のウェブサイトにあるように、「米州機構(OAS)が招集する米州サミットは長い間、私たちが共有する大陸の人々を顧みず、ラテンアメリカとカリブ海における米国の経済・政治利益を押し付ける場となってきた」。一方、人民サミットでは、運動指導者や現場の組織者が集まり、民主主義、主権、変革について議論する。 / プログラムには、哲学者で活動家のコーネル・ウェスト博士、「ブラック・ライブズ・マター」の組織者であるメリナ・アブドゥラ、独立運動家で元政治犯のオスカー・ロペス・リベラ、環境保護主義者で運動指導者のベルタ・ズーニガなど世界的に有名なスピーカーが名を連ねている。ブラジルの「土地なし農村労働者運動」やグアテマラの「農民統一委員会」などの社会運動もプログラムに参加する予定。 / 「人民サミット」の主催者であり“人民フォーラム”の共同ディレクターであるクラウディア・デ・ラ・クルスは、「サミットは、広範な参加の場であり、大陸と人々の闘いを表現する場となるでしょう」と述べた。
【メキシコでの「米州労働者サミット」とは別の、現地ロサンゼルスでのもの。「主催者であり“人民フォーラム”の共同ディレクターであるクラウディア・デ・ラ・クルス」は解放の神学者。】
Workers World May 12, 2022 By a guest author
Call for ‘Workers Summit of the Americas’
(「米州労働者サミット」の呼びかけ)
メキシコのティファナで開催される「米州労働者サミット」のミーティングは、“我らがアメリカ(Our Americas)”のすべての諸国人民と合流する場を提供するものである。われわれは、ロサンゼルスで米国務省が主催するOASの「米州サミット」に対抗する。米国に包囲されている国々(ベネズエラ、ニカラグア、キューバなど)は、OASの茶番劇には参加しないだろう。 / 「労働者サミット」は、参加を希望する北米の闘う同志を招待する機会を与えてくれる。ティファナは、労働者階級が人類の歴史の中で未曾有の諸課題に直面しているときに、南と北の進歩的諸勢力が出会う場である。
1.「米州サミット」を、北米(米国とカナダ)の企業の利益・関心に応える新自由主義的な手段で南の国々を搾取しようとする例として、糾弾する。
2.ベネズエラ、キューバ、ニカラグアに対する経済封鎖政策を糾弾する。
3.米財務省による外交官アレックス・サーブの誘拐を糾弾する。
4.メキシコと米国の間の恥ずべき国境の壁を糾弾する。これは、南部の人々に対する米国の反移民政策と人種差別政策を象徴するものである。
5.米国政府が開始した地球の未来に対する死の政策(necropolitics)を糾弾する。
6.メキシコ、米国、カナダにおける、環境、自然、人間を優先する新しい世界のために闘っている先進的な政治的活動家たちと直接の関係を築く。
7.メキシコ、米国、カナダの労働組合組織と緊密な関係を結ぶ。
8.米国における警察の残虐行為を糾弾する。
9.地域統合(CELAC、UNASUR)支持。
10.米州の先住民の闘い支持。
11.NATOは我々の大陸の恥部である。
【このあと最後は「メキシコ、米国、カナダの初参加諸組織」が列挙されている。】
Prensa Latina May 12, 2022 Published by: Elsy Fors Garzon
ALBA-TCP criticizes US call for excluding countries from summit
(ALBA-TCP、サミットから数カ国を排除する米国の呼びかけを批判)
ALBA-TCPの事務局長Sacha Llorentiは、本日(5/12)、米州地域のいくつかの国を排除するという政治的決定によって示された米州サミットへの呼びかけにおける米国政府の誤りを強調した。
Prensa Latina May 12, 2022 Published by: Aleynes Palacios Hurtado
Latin America and the Caribbean back Cuba’s attendance to summit
(ラ米カリブ諸国、サミットへのキューバの出席を支持)
カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されるサミットにキューバ、ニカラグア、ベネズエラを招待しないというワシントンの計画により、この地域のいくつもの政府は、主催者が除外を主張するならば、出席しないと発表した。 / この種の大統領サミットは米州機構(OAS)が主催する。OASは1962年にワシントンの要請でキューバを追放した。その結果、キューバは1994年に始まった米州サミットから排除された。 / しかし、過去10年間にラ米カリブ諸国における進歩的な政府の躍進が、米国の封鎖解除とこの種の会議へのキューバの出席を支持する主張への批判を引き起こした。その結果、2009年にOASは、1962年にキューバをOASから追放した時代遅れの決議を廃止せざるを得なくなった。 / しかし、、キューバは米国が支配するブロックに戻ることを拒否しており、その姿勢はキューバ当局によって何度も繰り返されている。
【「米州サミット」は1994年から2~4年に1回開催されてきた。2018年に第8回。今回は6月にロサンゼルスで第9回が予定されている。 / キューバは初回から排除され続けてきたが、反米反帝政権や民主的政権が次々に成立する中で、2015年の第7回からはキューバも招請されるようになった。ただし、キューバは出席していない。 / 今回、米国はキューバ、ベネズエラ、ニカラグアを招待しないと発表。それに対して、カリコム14ヵ国が排除国のある米州サミットには出席しないと発表したのに続き、メキシコ、ボリビア、ホンジュラス、アルゼンチンなどが次々に同様の表明をして米国の姿勢を批判。メキシコは代表は送るが大統領は欠席という形に。】
Prensa Latina May 12, 2022 Published by: Alina Ramos Martin
Argentina rejects exclusion of countries from Summit of the Americas
(アルゼンチン、米州サミットからの複数の国の排除を拒否)
アルゼンチンは、キューバ、ニカラグア、ベネズエラを第9回米州サミットから除外するという米国の決定を改めて批判し、この行動は地域の組織や政府から非難されるべきものであるとした。
teleSUR Published 12 May 2022
Trinidad & Tobago Support an Inclusive Summit of the Americas
(トリニダード・トバゴ、包括的な米州サミットを支持)
トリニダード・トバゴのAmery Browne外相は、「カリブ諸国共同体(CARICOM)」と自国は第9回米州サミットが排他的ではなく包括的であることに賛成であると述べた。 / 週末、「東カリブ諸国機構(OECS)」の首脳はこの問題を議論するために会合した。アンティグア・バーブーダとセントビンセント・グレナディーンは、グアイドへの招待やキューバのミゲル・ディアスカネル大統領の除外を受け入れないと指摘した。 / アンティグア・バーブーダのガストン・ブラウン首相は、米国のベネズエラおよびキューバに対する政策を拒否するほか、同国は元議員のグアイドをボリバル国家の大統領として認めないことを明らかにした。 / 1994年から3~4年ごとに開催されている米州サミットが、今回は米国の主催で開催されることになった。しかし、バイデン政権がとった態度は、その開催に疑問を提起している。 / ボリビアのエボ・モラレス元大統領は「米州サミットが失敗しようとしているのは、ラ米カリブ諸国の政府に対話の意志がないからではなく、我々の民族に対する米国の傲慢さと軽蔑のせいだ」とツイートしている。 / 米国内には別の立場もある。水曜日(5/11)にこの問題について質問された下院外交委員会のグレゴリー・ミークス委員長は、「バイデン政権がラテンアメリカ諸国の声に耳を傾け、キューバとベネズエラを次の首脳会議に参加させることを望む」と述べている。
teleSUR Published 12 May 2022
Honduras Rejects Exclusion of Countries in Americas Summit
(ホンジュラス、米州サミットへの数カ国除外を拒否)
ホンジュラスのシオマラ・カストロ大統領は、6月6日から10日にかけて米国ロサンゼルスで開催される米州サミットへのニカラグア、キューバ、ベネズエラなどの国々の除外を拒否した。
Prensa Latina May 11, 2022 Published by: Ana Luisa Brown
Bolivia to be absent from the Summit of the Americas
(ボリビア、米州サミットを欠席へ)
ボリビアのルイス・アルセ大統領は、「米州サミット」を、自国の価値観や地域のニーズを代表しない排他的な会議であると考え、欠席する予定である。
Peoples Dispatch May 10, 2022 by Marco Fernandes (写真:ALBA-TCP首脳たち)
Why Latin America needs a new world order
(なぜラテンアメリカは新しい世界秩序を必要とするのか)
ラテンアメリカは新たな冷戦を望んでいない。この地域はすでに何十年にもわたる軍事支配と緊縮財政に苦しんでいる。ラ米カリブは平和を望んでいる。 / 世界はウクライナの紛争を終わらせることを望んでいる。しかし、NATO諸国は、ウクライナへの武器輸送を増やし、“ロシアの弱体化”を望むと宣言することで、紛争を長引かせようとしている。米国はすでにウクライナの武装のために136億ドルを割り当てていた。バイデンはさらに330億ドルを要求したところだ。それに比べて、2030年までに世界の飢餓をなくすのに必要な額は年間450億ドルだ。 / ラ米カリブは平和を望んでいる。このプロセスは、新自由主義的な緊縮財政の津波によって引き起こされた民衆の反乱のサイクルが、進歩的な政府の選出につながった20年前に始まったものである。ベネズエラ(1999)、ブラジル(2002)、アルゼンチン(2003)、ウルグアイ(2005)、ボリビア(2005)、エクアドル(2007)、そしてパラグアイ(2008)である。これらの国々にキューバとニカラグアが加わり、2004年にALBA-TCP、2008年に南米諸国連合(UNASUR)、2011年にラ米カリブ諸国共同体(CELAC)という地域組織が設立された。これらのプラットフォームは、地域の貿易と政治的統合を促進することを目的としていた。しかし、米国は、加盟国の政府転覆を図り、ワシントンの利益になるように地域ブロックを分割することによって、このプロセスを弱体化させようとしたのである。 / ブラジルは、その国土の広さと政治的な関連性から、これらの初期の組織で重要な役割を果たした。2009年、ブラジルはロシア、インド、中国、南アフリカとともにBRICSを結成した。それは、世界の貿易と政治の力関係を再編することを目的とした新しい同盟となった。 / だが、ブラジルは、エリート層と連携し、議会、司法制度、メディアを利用して、2016年にルセフ大統領の政権転覆、2018年にルーラ大統領(当時大統領選でトップ)の逮捕を成功させた。 / 潮目の変化 近年、ラ米カリブでは、進歩的な政府の新しい波が押し寄せている。地域統合の構想がテーブルに戻ってきた。4年間首脳会談が行われなかったCELACは、2021年9月、メキシコのAMLO大統領とアルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領のリーダーシップのもとに再開された。2022年5月のコロンビア大統領選挙でグスタボ・ペトロが勝利して10月のブラジル大統領選挙でルラが再選を果たせば、数十年ぶりに中南米4大経済圏(ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビア)は、ラ米カリブ統合支持派を中心とした中道左派によって統治されることになろう。ルラは、大統領選で勝利すれば、ブラジルはCELACに復帰し、BRICSにも積極的な姿勢で臨むと述べている。【そこにアルゼンチンも加盟する予定。】 / NATOがロシアを制裁するための最大規模の連合を作ろうとした際に、全会一致を欠いた。このNATOのプロジェクトは、Global Southを中心に反発を呼び起こした。戦争を非難する政府(アルゼンチン、ブラジル、インド、南アフリカなど)でさえ、NATOの一方的な制裁政策に同意せず、平和的解決のための交渉を支持することを望んでいる。 / 人類は、不平等、飢餓、気候危機、新たなパンデミックの脅威など、緊急の課題に直面している。それらを克服するためには、南半球の地域連合が世界政治に新たな多極化を導入することができなければならない。
teleSUR Published 10 May 2022
Mexican President Not to Attend a Non-Inclusive Americas Summit
(メキシコ大統領、非包括的な米州サミットには出席しない)
火曜日(5/10)、メキシコのAMLO大統領は、米国がすべてのラテンアメリカ諸国を招待しないなら、米州サミットに出席しないと発表した。 / 「全員が招待されない場合は、・・・私は行かない。外相が代表として行くだろう」と述べた。
NEW COLD WAR May 9, 2022 By Benjamin Norton
Brazil’s Lula Proposes Creating Latin American Currency to ‘Be Freed of US Dollar’ Dependency
(ブラジルのルラ、「米ドル依存から解放される」中南米通貨の創設を提案)
(2022年5月4日、Multipolaristaに掲載された。) ルラは5月2日の集会で演説し、大統領に復帰した場合、「ドルに依存し続けることはできないので、ラテンアメリカに通貨をつくる」と述べた。その通貨は、スペイン語で「南」を意味する「スール」と呼ばれることになると明かした。 / ルラは、ラ米カリブの国々は自国の通貨を保持しながらも、米ドルに交換する代わりに「スール」を使って二国間貿易を行うことができると説明した。 / この通貨の目的は、ラ米カリブの統合を深め、地域の経済的主権を強化し、米国への依存を弱めることである、とルラは述べた。 / ルラはまた、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカを統合したBRICSシステムを復活させ、欧米の金融覇権に対抗する独立した経済アーキテクチャを構築すると公言している。 / ウーゴ・チャベスの汎ラテンアメリカ通貨「スクレ」創設の試み ルラが提案した「スール」は、ラテンアメリカの進歩的な政治家が共通通貨を作ろうとした初めての試みではない。 / ベネズエラの革命家ウーゴ・チャベスは、ラ米カリブ諸国の左派政権による経済連合、「米州ボリバル同盟(ALBA)」の一員として、国際通貨を開発した。この通貨は「スクレ」と呼ばれ、2009年にベネズエラ、ニカラグア、キューバ、ボリビア、エクアドルの5カ国で採用された。 / 2012年のピーク時には、スクレはこの地域の年間二国間貿易で10億ドル以上に使用されていた。しかし、2013年のチャベスの死、2014年の商品価格の大幅下落、2015年の米国のベネズエラ制裁発動、チャベスの後継者ニコラス・マドゥーロに対する暴力的クーデター未遂などを受け、2016年までにこの通貨は使われなくなった。
【ルラの新通貨提案は「INTERNATIONALIST 360°(MAY 3, 2022)Lula Wants a Latin American Currency(ルラはラテンアメリカ通貨を望んでいる)」で既にとらえて「要点のみ」として「5.12報告」に入れている。】