映画「母 小林多喜二の母の物語」が公開され、上映されています。(三浦綾子原作 山田火砂子監督 (株)現代ぷろだくしょん)
http://www.gendaipro.com/haha/
その中で、小林多喜二が拷問され虐殺された直接の原因が、彼が書いた短編小説『一九二八年三月十五日』に対して警察の怒りを買ったことであったということでが明らかにされます。
1928年3月15日は、共産党員とシンパに対する全国一斉検挙が行われ、1600人もが逮捕される大弾圧事件でした。
映画では特高警察が、警察の検挙と拷問の実態を鮮明に書いた事への報復であることを明言します。そして多喜二の文章を読み上げながら、その通りに多喜二を拷問し、死に至らしめるのです。
後に治安維持法は「国体の変革=天皇制の打倒」を掲げるものは極刑に処すというように改定されました。でっち上げ逮捕、拷問が当たり前のように行われていました。しかし、当時としても、裁判もなしに、拘置所で「容疑者」を拷問の末虐殺するというようなことは認められていませんでした。
だから特高警察は多喜二の死について釈明の記者会見を開くという場面も出てきます。
他方小林多喜二の虐殺死は、その後の反政府運動を封じ込め弾圧する上で猛威をふるうことになります。「お上にたてついたら小林のようになるぞ」と。
まさしく多喜二に対して特高警察が行ったことは、言論活動、文筆活動に対する弾圧であり、報復でした。それはまた現場の特高警察の暴走でした。
共謀罪法は、罪の対象や捜査が警察の裁量に委ねられることが大きな危険として指摘されています。巨大な権力をもった警察・公安が、政権の意を受け、出版社や新聞社、あるいは文筆家やジャーナリストに対して敵意をもち、「共謀」を企てたとして動いたらひとたまりもありません。真実を報じることができない暗黒社会がやってきます。
今年の憲法記念日5月3日は、憲法が施行されて70年の記念日であるとともに、朝日新聞阪神支局の小尻記者が、右翼団体を名乗る何者かに殺害されて30年の日でした。
阪神支局襲撃から30年(朝日新聞)
事件は右翼団体による凶悪な言論圧殺でした。30年を経て作られようとしている、国家権力による言論圧殺・運動弾圧を合法化する悪法、それが共謀罪法にほかなりません。「沖縄二紙をつぶせ」との自民党若手勉強会での発言や朝日新聞などを反日・売国メディアとしてバッシングするなど、政府に都合の悪いことはしゃべらせない、自粛させる--そのような風潮と政策の延長にこの共謀罪法はあります。
映画「母 小林多喜二の母の物語」は、戦前・戦中の事件から現在を警告しています。
(ハンマー)