米軍がいる限りイラクは混乱し続ける。全面撤退すべき。

　米軍の戦闘部隊が8月31日をもってイラクから撤退する。だが米軍はいまだに5万人も駐留しており、イラク治安部隊の訓練や武装勢力の掃討作戦の支援を行うとともに、いつでも戦闘可能な状態に入っている。悪名高い無人爆撃機も温存されている。撤退とは名ばかりである。
　しかも民間軍事会社の傭兵を7000人に倍増し、戦闘行為を遂行させようというのである。民間軍事会社の傭兵こそは軍規にも交戦規定にも縛られず、イラク人の拘束、虐待、拷問、無差別殺りくなどの一端を担ってきた。また、米兵でないことから、死んでも米兵犠牲者にカウントされない。米兵死者が4400人を超えた状態で、オバマ大統領は、11月の中間選挙にむけ、何とかこれ以上米兵の死者が増えて支持率が下がることを食い止めたかったのだ。
　イラクでは新政権成立の見通しさえ立っていない。問題はシーア派とスンニ派の宗派対立ではない。シーア派を重用する米軍とそれに不満と反発を募らせるスンニ派、つまり、権力や職が宗派によって差別されることが「宗派対立」を生み出しているのである。これに武器や資源などの様々な利権構造が絡む。マスコミは「米軍撤退による治安悪化の懸念」をかき立てているが全く逆だ。イラクの混乱の根本原因は米軍の駐留と支配である。
　米軍が駐留し、イラクを支配し、権益を確保し、米国に有利な傀儡政権をつくろうとする限り、イラクが安定することはない。イラクはイラク人のものである。オバマ大統領がすべきことは、イラク戦争の誤りを認め、謝罪し、賠償を行うことだ。米軍は戦闘部隊だけでなく、一切の部隊が撤退すべきである。民間軍事会社の軍事行動をやめさせ、今すぐ撤退させるべきである。
※イラク：「米軍、即刻去れ」　厳戒続く街・シーア派拠点サドルシティー（毎日新聞）
http://mainichi.jp/select/world/news/20100830ddm007030121000c.html
※最後の戦闘部隊撤退　イラク米軍　５万人に縮小（産経新聞）
http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/100819/mds1008192322006-n1.htm
※イラク残留米軍５万人「戦闘任務可能」　現地司令官示唆（朝日新聞）
http://www.asahi.com/international/update/0823/TKY201008230078.html
※民間警備員を７０００人に倍増＝イラク米軍撤退で－国務省（時事通信）
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201008/2010082000127

（ハンマー）