5月12日、大阪市浪速区の教育フォーラム「学校選択制・中学校給食を考える区民の集い」に参加しました。
参加者は約70名。
区長の説明は、「浪速区における小学校の現状」に時間が割かれていました。
「1979年と去年の比較で、児童の数は1/3に減った一方、小学校は1校しか減ってない」、
「1校あたりの児童数は平均128人で、大阪市平均の1/3。他区との比較でもダントツに少ない」、
「大阪市学校適正配置審議会の答申(2010年)は、11学級以下の小学校を統合すべきとしているが、浪速区の小学校9校はすべて11学級以下」
などなど。
この後に学校選択制の説明が続きましたが、こう聞けば誰が考えたって「学校選択制は統廃合のため」と思います。
当然、「選択制は統廃合のためなのか」と質問が出ました。
ところが出席していた教育委員会の事務方は、「学校選択制と統廃合は関係ない」と繰り返します。
じゃ、「選択制の説明会なのに、なぜ小学校の児童数が少ないという説明をするのか」と聞くと、
「選択制を抽象的に考えるのではなく、具体的に浪速区の現状を踏まえて考えてほしいから」という答えでした。
しかし、いくら「統廃合とは無関係」と建て前を並べ立てたところで、橋下市長は「学校選択制で選別にさらし、統廃合を促す」と公言しているのです。
浪速区の事情は、図らずも(図って?)橋下と維新の本音を明るみに出したのでした。
ただ、発言された住民は、必ずしも統廃合そのものに反対ではない感じでした。
小学校の子どもが少なすぎるのは問題で、統廃合は必要だが、それは時間をかけて、納得の上で進めるべき。
「人気投票」のような乱暴なやり方には反対という感じです。
こうした心情の背景にあるのは、地域への愛着です。
古くからの町なので、当然学校の歴史も長い。
参加者はお年寄りが多く、小中学生や就学前の子どもを持つ人は少なかったんですが、自分たちで地域の子どもたちを見守ってきた誇りのようなものを感じました。
「子どもたちがバラバラの学校に通うようになれば、私たちは何をすればいいのか」との声もありました。
さらに「子どもが中学生の時警察のお世話になったことがあるが、地域のつながりがあるから立ち直れた」という声も。
「学校選択制は地域のつながりを破壊する」ということが、実感として感じられました。
その他にも、
「かつて越境入学の問題があったが、努力して解決してきた。選択制で越境入学を合法化するのはとんでもない」、
「障碍児は普通学校ではなく特別支援学校に行け、という風潮がある。選択制といっても自由には選べない」、
という重要な指摘がありました。
また、「学校選択制は橋下市長の公約だったから進めるというが、当時の選挙公報を見ても選択制は書いてない」という指摘がありましたが、
教育委員会の答えは「マニフェストに書いてあった」というものでした。
この日の発言で、選択制に賛成の声は1つもなく、すべてが反対・疑問・不安の声でした。
市と区は「選択制を導入するかは区民の声を聞いて決める」と言ってますから、その通りであれば、とても導入できる状態ではないと思えます。
ところが心配なのは、まもなく区長が変わるだろうということです。橋下市長が任命する新しい区長に、この日の区民の声は届くのでしょうか。
by ウナイ