◆ケース<2> オスプレイ計画を尋ねる議員
◇行政が裁量で情報秘匿
「その辺になるとお出しできないですね」
その答えに、野党のベテラン、田中善太郎衆院議員(63)は表情を硬くした。地元では、米軍の新型輸送機「オスプレイ」が上空を飛来する計画があるとうわさになっていた。そこで防衛省の担当課長、黒田一郎(45)に議員会館まで来てもらったのだ。
住民の不安を訴えても、黒田課長は「米軍から連絡が来ているようですが、警備の観点からお答えを差し控えさせていただきたい」と歯切れが悪い。「特定秘密に指定されているのか」と聞くと「そういう情報も含まれております。ご勘弁ください」。
田中議員は特定秘密保護法の成立後、以前にも増して役所の情報が取りにくくなったのを感じていた。
翌日、与党の同じ県選出議員、佐藤成一(55)に聞いてみた。
「先生は与党だから知っておられるのでしょう」
佐藤は即座に否定した。
「とんでもない。審議官を呼んだが『私の後ろ手にお縄がかかってしまいます』なんて言う。国防族の私も形無しだ」
数日後、田中議員は新聞記事に目がくぎ付けになった。オスプレイが選挙区をかすめて飛ぶ計画がルート図付きで載っている。慌てて記者に電話を入れると「防衛省や外務省に取材してもだめでしたが、米軍のホームページに概要があって、ワシントンで特派員が取材したら割と簡単に教えられたようです」。
憲法で保障された国会議員の「国政調査権」はなし崩しになっていくのか。田中議員は顔をゆがめた。
※特集:特定秘密保護法案、成立したら−−市民生活こうなる 崩壊する知る権利
毎日新聞 2013年11月10日 東京朝刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20131110ddm010010003000c.html
(ハンマー)