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「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

紹介『未解決の戦後補償--問われる日本の過去と未来』(その2)

2012-12-13 | 本・番組・映画など

紹介『未解決の戦後補償--問われる日本の過去と未来』(田中宏ほか著 創史社)

(つづき)

“賠償問題は、日韓条約、日中共同声明で解決済み”ではない 

 よく問題にされる“賠償問題は、日韓条約、日中共同声明で解決済み”という論理に対して歴史的に反論しているところは押さえておきたい。
 72年の日中首脳会談で確かに中国側は、日本の経済援助と引き替えに中華人民共和国政府としての賠償は放棄したとされる。だが、日本側が「いかなる賠償も放棄」と迫ったのに対して中国側はそれを拒否し、最終声明文で「いかなる」の文言は削除された。本書では「サンフランシスコ講和条約」の成立過程と対比させ、日中共同声明に個人の賠償請求権放棄は入っていないことを説得的に語っている。
※「いかなる」問題は、今夏に放送されたBS“北京の5日間-こうして日中は握手した”で、田中角栄首相の「ご迷惑」発言や「日華条約で解決済み」など、周恩来首相を激怒させた出来事などとともに言及されている。
http://www.youtube.com/watch?v=HjUYwQ_NVXE

 また、1965年6月の「日韓基本条約」および「日韓請求権並びに経済協力協定」にある「両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、・・・完全かつ最終的に解決された」との文言について、当時から被害者と政府との補償問題を消失させるものではないとの解釈を外務省自身が行っている。
 そもそも国家が個人の権利を放棄させることはできない。これらで問題にされた賠償放棄はあくまで「外交保護権」(国民が被った損害を国家として損害賠償を求める外交上の権利)の放棄とされ、個人の賠償請求権の消滅ではないとされる。
※日韓条約については“NHKスペシャル.日韓条約 知られざる交渉の内幕”(2005年放送)を参照。日本の政府高官に植民地支配に対する反省や謝罪がないどころか、本気で「いいことをしてやった」と思っていたことがわかる。「賠償」か「経済援助」かをめぐっての交渉が難航し「棚上げ」されたことも描かれている。 .
http://www.youtube.com/watch?v=OYPesQ6TSgA

 韓国では2000年代に入って市民運動の力で日韓会談文書の公開を実現していった。それを通じて05年8月、韓国民官共同委員会が「1910年韓国併合は無効」との立場から「植民地支配に直結した損害賠償請求権が協定で消滅したと見ることは出来ない」との見解を発表し、日本への個人補償要求へと大きく舵を切った。
 さらに11年8月には韓国憲法裁判所が、日本軍「慰安婦」と在韓原爆被害者問題での韓国政府の不作為を「違憲」と指弾した。そして今年12年5月、大法院(韓国の最高裁判所)が、三菱重工、日本製鉄の徴用工について「原告等の被告に対する請求権は請求権協定で消滅しなかったために、このような請求権を行使できる」と明確にし、両国で「解決済み」のように宣伝されてきた日韓条約と請求権協定の解釈に重大な判断を加えている。

 これには、反人類的な戦争犯罪、人道に対する罪に時効はないということもつけ加える必要がある。ドイツでは2000年に、ドイツの強制労働被害者への補償のための法律が制定され、00~07年にかけて、176万5000人に総額7100億円が支給されていることを紹介している。重要なのは、国としての姿勢、国家責任、国家補償なのである。

おわり

(ハンマー)

 


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