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昨日の東京国際映画祭(3)「一枚のハガキ」、「ふたたびSwing me again」

2010年10月27日 | 映画
©2011「一枚のハガキ」近代映画協会/渡辺商事/プランダス

昨日の東京国際映画祭は日本映画を2本観ました。「一枚のハガキ」、「ふたたびSwing me again」の2本です。どちらもテーマは重いのですが、それを跳ね除ける明るさがあります。


まず「一枚のハガキ」は新藤兼人監督の最新作。
戦争のあと残された人々に焦点を当てた映画です。

主人公の戦争未亡人に大竹しのぶ。その夫の戦友ではがきを託されたのが豊川悦司
山中の貧しい農家で義父と義母とともに暮らす嫁は、戦死した夫の代わりにその弟と再婚させられるが、その弟も戦死してしまう。極貧の中、義父は心臓発作で、義母は後追い自殺し、独りぼっちとなった嫁。町の世話役(大杉漣)が妾にしようと言い寄ってくるが寄せ付けない。
そんな中、戦死した夫から託された一枚のはがきを持って、戦友が訪ねてくる…。

よく考えればとっても辛く暗い話なのですが、微塵も感じさせないのはさすが新藤監督。人々のバイタリティーというか、生きることへの執念のようなものが感じられるのです。
そのバイタリティーをラストの一面の麦畑が象徴しているように思えました。



©2010「ふたたび」製作委員会

2作目の「ふたたび Swing me again」は表題にあるように、若い頃ジャズマンだったおじいちゃんが、当時の仲間と再会しながら、もう一度スイングジャズを演奏するという内容ですが、背景にハンセン病の人の受けてきた差別と辛さ、悲しみが描かれています。古くは「ベン・ハー」、最近では「もののけ姫」などの映画で描かれてはいますが、まだまだあまり知られていない差別の実態を、観客は孫と一緒に知っていくつくりの作品になっています。

死んだと言われていたが実はハンセン病で島に隔離されていたおじいちゃんの役には財津一郎。いろいろあって孫と旅をすることになるのだが、その合間に、健常であった祖母が祖父と引き離され、実家の離れで暮らし、赤ん坊であった自分の父からもあわせてもらえなかったことを孫は知る。その孫のガールフレンドも親から言われ別れを告げてくる。
怒りを感じながら孫はおじいちゃんの昔の仲間へ会う旅を韓国人看護師とともに続けるのです。

もちろん、ジャズの演奏もおじいちゃんたちが若い頃に吹き込んだというLPレコードに入っているというメインのラテン・ジャズ調の曲がとてもカッコイイ! ラストは神戸に実在するジャズクラブ「SONE」のオーナーとして渡辺貞夫がゲスト出演してSAXを演奏しています。
ところで、この監督の塩谷俊さんって俳優さんとしてよく出ていた印象があるけど、監督や俳優学校の先生になっていたんですね~。知らなかった。

重いテーマの2作品でしたが、派手さはなくても誠実なつくりのこういった映画が日本映画の中で作られ続けてほしいと思う夜でした。


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