34歳になったとはいえ、高度不妊治療(体外受精)に踏み切るのは、とても
勇気のいることでした。心身への負担、治療に失敗した場合子どもを諦める決断をしなくてはならない恐怖、治療と仕事との両立のストレス、高額な医療費など躊躇する理由に事欠きませんでした。
それでも、この問題にケリをつけたいという覚悟の方が勝り、本格的な治療への取り組みを決めました。
わたしが選んだのは、表参道にあるクリニックです。
ここは「不妊治療の最後の砦」とも言われており、他の病院で体外受精に失敗した方々も流れ着いているようでした。つまり、このクリニックで上手くいかなければ後がないということになります。(実際はさらに転院される方もいらっしゃいますが)
またこのクリニックは、ホルモン注射を沢山打つ高刺激系のクリニックとしても
有名でした。
このクリニックに初めて行った時、ドクターから「1年で結果を出しましょう!」と言われました。これは「1年経っても結果が出なければうちのクリニックでは
難しい」という意味にも取れましたが、自信に満ちたドクターの発言に少し未来が開けたような気がしました。
体外受精では、ホルモン注射で卵巣を刺激し、卵巣から一度に複数の卵子を取り出します。
それを精子と受精させ、受精卵を子宮に戻します。
このクリニックでは、受精卵をすぐに子宮には戻さず、約5日間分割させて
胚盤胞(はいばんほう)と呼ばれる状態で凍結させます。
※胚盤胞になるまで分割した状態で凍結するのは、受精直後の
受精卵よりも着床率が高いためです。
そして、子宮の状態がよい時期が来るのを待って、凍結した胚盤胞を子宮に戻して着床につなげるのです。
※採卵後は卵巣が腫れ、ホルモンバランスが乱れることから子宮環境が万全でないと言われています。そこで、採卵直後は移植せず、最低一周期は子宮を休ませてから移植フェーズに入ります。
以下、このクリニックの場合の採卵、移植プロセスを簡略化させて書きました。
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<採卵周期> 卵巣から良質な卵子を複数取り出すフェーズ
ホルモン調整(採卵の1ヶ月以上前からピルを服用して子宮の状態を整える)
↓
採卵(約2週間前からホルモン注射を1日1~2本注射。
採卵手術では麻酔をして卵巣から複数の卵子を取り出す)
↓
受精卵(摘出した卵子とあらかじめ準備しておいた精子を受精させる)
↓
胚盤胞(受精卵を5日分割させる)
↓
凍結
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<移植周期> 凍結させた受精卵(胚盤胞)を子宮に戻すフェーズ
ホルモン調整(移植の1ヶ月以上前から子宮の状態を整えるための薬を服用する)
↓
胚移植(凍結しておいた胚盤胞を子宮に戻す)
↓
妊娠判定(胚移植の10日目に結果が分かる)
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採卵周期では、ホルモン注射の刺激で卵巣が腫れ上がり、あと一歩で腹水が溜まって入院というところまで行きました。
採卵手術後は、お腹や背中まで痛くなったり、抗生物質の影響で膣炎になるなど心身へのダメージが大きかったです。
治療の結果ですが、
1回目の移植で、陽性判定が出ました。
あまりの嬉しさに、実家の母や会社のメンバーにも報告したのですが、翌週クリニックで検査をしたところ、卵の成長が止まっていることが分かりました。初期流産(化学流産)というやつです。
わたしでもかすかに妊娠できるということが分かったことは嬉しかったですが、
やはりとても落ち込みましたし、何よりも家族が傷ついているのを見て泣きたくなりました。
2回目の移植は、あまり期待はしていなかったのですが、やはりダメでした。
この治療期間は、会社に迷惑をかけてはいけないと思って、いつも以上にアポを詰め込んで働いていました。忙しい方が落ち込まなくて済むとも考えていましたが、つらい気持ちを封印していたせいで、この後心身のバランスを崩すことになります。
2回目の移植が陰性に終わった後、仕事がさらに忙しくなりました。
治療を再開したいのにストレスで体調を崩してしまい、内科や心療内科のお世話になることに。
そして、妊娠しないまま35歳になりました。
治療を再開したのは、仕事を大幅にセーブしてからでした。
仕事量を減らしたことで、生活のリズムが整い、気分も随分と軽くなりました。
すると、採卵の結果が前回(34歳の時)に比べて格段に良くなり、
3回目の移植でようやくきちんと(?)妊娠することができました。
紆余曲折がありながら、妊娠できたことはわたしにとっては奇跡のような出来事です。
ですが、安定期に入ってから流産された方々の経験を何度か伺っているため、
「幸せいっぱい」という気持ちにはなれず、このまま無事に出産できるかどうか正直とても不安です。
いまは何があっても受け止める気持ちで、できるだけ大らかに過ごしたいと考えています。
今後は、妊娠のことも織り交ぜながらブログを更新していきたいと思います。
ひきつづきどうぞよろしくお願い致します。