[映画紹介]
メキシコ。
麻薬と殺人が日常と化した
アメリカ国境近くの 町・マタモロスの小学校。
子供たちは犯罪と隣り合わせの環境で育ち、
教育設備は不足し、
意欲のない教員ばかりで、
学力は国内最底辺。
6年生の半数以上が卒業を危ぶまれている。
そこへ、出産のため辞職した6年生の担任の代役として、
地元出身のセルヒオ・フアレス・コレアが赴任してくる。
新任教師のフアレス先生は、
生徒の好奇心を尊重する
型破りな授業を始め、
子供たちは探求する喜びを知っていく。
昔のままの教育方針に固執する教育委員会は、
ファレスのやり方に難癖を付ける。
しかし、全国統一学力テストの成績は良好となり、
そのうち10人は全国上位0.1%のトップクラスに食い込む・・・
2011年に起きた実話だという。
あの教育方針で、どうかと思うかもしれないが、
実話の重さは大きい。
子供たちの劣悪な環境も描かれる。
犯罪に手を染める兄に悩む少年。
乳飲み子の妹たちの世話に明け暮れる子供。
廃品回収業の父を助ける優秀な女子。
このパロマ・ノヨラという子は実在の人物で、
図書館を訪れた生徒を哲学書コーナーに案内する役で、
本人が出演している。
ファレスの教室で、
未来を望むことのなかった子供たちが、
可能性や夢に出会い、
瞳がきらきら輝きだす。
比重の計算で、人間の体積を求める方法を
自分たちで発見する。
クズ金属の買い取り価格をごまかされるのを、
パロマが、暗算で正しい価格を提示する場面もある。
国家の重要な使命の一つは、
子供に対する教育だが、
ともすれば、型どおりの教育になりがち。
その方向に一つの光明をもたらす作品。
メキシコで300万人を動員し、
2023年No.1のヒット、
かつ、メキシコで歴代の興行成績1位を記録。
アメリカでも限定公開かつスペイン語作品にも関わらず
初登場5位の快挙をとげ、絶賛の嵐を受けた。
サンダンス映画祭で映画祭観客賞を受賞。
監督・脚本は、クリストファー・ザラ。
この人、ケニア出身だという。
現在はグアテマラ在住。
長編2作目。
フアレスを演ずるのは、
「コーダ あいのうた」(2021)で合唱部の顧問を演じた
コメディアンのエウヘニオ・デルベス。
本作でメキシコ映画ジャーナリスト賞の作品賞&最優秀男優賞を受賞した。
校長先生役のダニエル・ハダッドも味のある演技。
子供たちも達者。
5段階評価の「4」。
ヒューマントラストシネマ有楽町他で上映中。
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