雑学王

　ふと振り返ると何気なく生きてきたようで、それなりに色々な知識や経験を蓄積してきたものだと思う。ブログを書くにあたり、ひとつの課題について考えそれにまつわる記憶を辿っていると、思いがけないところで繋がる。なんとも面白い。点でしかなかった知識や経験が線となって繋がり広がっていくのだ。思えば、大人になれば新しい経験が少なくなる一方で、積んだ膨大な知識や経験をいかようにも繋ぐことができるわけで、年の功とはこのことなのだろうと思う。新鮮な感動は減るが、蓄積と繋がりによる新しい発見に感動することは増えていくのかもしれない。

　私は新しいことには興味はあったが、自分で追い求め行動するタイプではなく、本をたくさん読むタイプでも、熱心に集中して極めるタイプでもなかった。高校までの私はどちらかというとものぐさだった気がする。決まった通学路を通うだけで若さの特権ともいえる行動力がない上に、視野も、知識も狭くて、今思えば有り余る時間を何をして過ごしていたのだろう。高校1年の頃から行きたい大学だけは決まっていて、その合格を目指して高校3年の時はがむしゃらに勉強し頑張った。やればやるほど模試で数字となって効果が表れ、嬉しくて仕方がなかった。そうして私は第一志望の大学合格を果たした。唯一誇れることといえばそれくらいだろうか。

　そんな私の行動転機となったのは大学での出会いにある。
　私の所属した学部学科は大学には珍しく1クラスしかなく、しかも５０人ほどで男性が少し多いながらも男女ほぼ半々、実験もあり、付き合いの密度が比較的濃かった。未だに全てのクラスメートの顔と名前を思い出すことができる。振り返ってクラスメートは温厚で素敵な人が多かったと思う。皆でバーベキューをしたり、ビリヤードをしたり、幸せな時間満載の大学時代だった。
　その中の一人だったT君は、同級生ながら私より3歳半年上だった。彼を見た時の第一印象は、目が綺麗な人だな、だった。自宅が近所同士だったこともあって、仲良くなり、一緒に通学するようになった。彼は行動派で、山登りに行ったり、バックパックひとつ持って旅に出る素朴で優しい人だった。
　行動範囲の狭かった私は色々なところへ連れ出してもらった。そして、様々な楽しみ方や場所があることを知ると共に、彼の雑学知識の多さに驚いた。年齢が上だというのもあっただろうが、何を話してもへぇ、ほぉの連続。彼の御蔭でそれまでより勉強もそれ以外の行動も貪欲になり、視野が広がったと思う。社会人になってからも私は様々な習い事をした。新しい知識や友人に出会うことは何より楽しく充実した時間だった。
　
　結局彼とはお互いどこか惹かれあっていたのにタイミングが合わず、つきあうこともなく、別々な道を歩いている。今私が貪欲に知りたいと思ったり、ブログを書き続けているのも彼が世の中には色々なことがあって、興味をもって行動したら楽しいよと、態度で示してくれたからかもしれない。

　そんな風に思い出していたら、茂木健一郎さんのクオリア日記でこんな記事に出会った。そういえば、私も大学の頃、どうにもならない思いや感じたことをただだたノートに書き連ねていたことがあった。部屋を整理していたらそのノートがちょうど出てきたことも手伝って少しばかり感傷的な気分になった。内容は違うけれど、皆同じような道をたどっているのだ。あのような青春時代があってよかった、と思う。

あの日と同じような気分がどこかになければ
http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/2007/01/post_6b92.html