昨年の終わりのことだったか、朝日新聞の広告に
「知る 見る 味わう 和菓子を愉しむ集い」を見つけた。
早速、主催の全国和菓子協会のHPを検索。
これはもう是非行かなくては!と応募。
日程も確認して、この日なら大丈夫と即応募したのに、日々の忙しさにすっかり忘れていた。
年が明けて封筒が届いて、当選を知った。
スミマセン。でも、結構こういう風に忘れている方が当たったりするもので。
3772名もの人が応募して、午前・午後の部 各130名の中に選ばれたのだった。
なんというラッキー。友人を誘って行ってまいりました。
会場の京王プラザホテルの中にはお雛様も飾られていました。
コロナ前までは、和菓子バイキングのような形で、様々なお店の和菓子を頂けたようなのですが、
今回は感染対策をしっかりして、着席スタイル。
和菓子は最後にお土産で頂く形でしたが、大満足。
栄太郎総本舗社長 細田眞氏の開会のご挨拶。
全国和菓子協会専務理事 藪光生氏による講演 和菓子文化「五感で愉しむ」
全国和菓子協会認定和菓子職人による「和菓子の製造実演」
そして、お楽しみ「和菓子のおみやげ」で、名店10店の和菓子を引換券と交換。
閉会となった。
今日は、講演 和菓子文化「五感で愉しむ」について
日本の言葉の美しさは俳句の季語からもわかる。
例えば、
春の山 → 山笑う
夏の山 → 山滴る
秋の山 → 山彩る・山装う
冬の山 → 山眠る
言葉の感性の中で日本人は生きている。
夏になると葛で作った和菓子がよくみられる。
でも、実は、葛は85%がでんぷんで冷やすと固くなる。これを老化するという。
葛の菓子は冷やすべきではないのに夏にあるのは、葛で作った菓子を見て”涼を感じるから”である。
他にも、日本には風鈴があるが、風をチリンという音に変えて涼を感じ、楽しんでいる。
同様に、日本人は和菓子を五感(視覚・触覚・臭覚・味覚・聴覚)で愉しむ。
〇 視覚 見る
練切は客の連想を広げる。
同じあやめという菓子でも様々な表現があり、写実的に作られたものや、ただ、絞りにしただけのものもある。
客がそれを見て感じ取る。
〇 触覚 舌触り
洋菓子は、例えばチョコレートなど、口に入れると下や口の中全体にまとわりつく。
それを珈琲や紅茶で洗い流す。
一方、和菓子は、口の中にそれほど残らない。
抹茶自体の味を味わうために口の中に残らないようにできているのである。
餡子というのは、でんぷん質だが、でんぷんそのものが口に入るのではなく、
餡粒子(でんぷんの幾つかが包み込まれている粒子)が残るように餡を作ることでさらりとした
口溶けになっている。この餡粒子を壊さないように餡を上手に練るのが職人の腕の見せ所。
〇 臭覚 香り
和菓子は洋菓子に比べて、ほのかな香り。
どちらかというとそのものから香りが立ち上がってはいない。
これは、茶席との関係。
和菓子は抹茶の香りを超えないように作っていて、茶との共存を図るためである。
ほのかな和菓子の匂いを感じ取る力が日本人にはある。
それは、平安時代に御簾越しに香りによって人を感じる文化があったことからもわかる。
日本人は匂いに敏感だから、消臭スプレーや部屋の芳香剤などの種類も多岐に渡るのではないか。
〇 味覚 味わい
さて、おなじみの桜餅。
皆さんは、桜の葉っぱごと食べますか?それとも別々に食べますか?
(ちなみに、私は別々に食べる派です。しょっぱい葉っぱと甘い和菓子を一緒に食べるのは嫌い。)
その昔、おもしろゼミナールというNHKの番組で鈴木アナウンサーが、桜餅は葉っぱごと食べるのが
正しいという話を全国放送でしてしまったが、実は、葉ごと食べるのは邪道。
好みだからどちらが正しいというのはないが、別々に食べる方がお勧め。
理由は、桜の葉は塩漬けされることで、クマリンという物質によって匂いがでてくるが、結構香りが強いので、できれば、桜の葉の匂いがうつった御餅を味わってほしい。移り香を楽しんでほしい。
有名な長命寺の桜餅は、3枚の葉で桜餅がすっぽりくるまれている。
これは、HPにもあるが、空気があたるとお餅が固くなるのを避けるため。
長命寺の名は、徳川家光が鷹狩りの後、腹痛をおこし、ここで水を貰って休んだところ治ったことからついたんだとか。
(確かに長命寺のHPにも葉ははずして召し上がっての記載があった!
とりあえず、私の食べ方はよかったみたい。まあ、美味しく食べられればどちらでも!)
〇 聴覚 音を感じる
ポリポリ、パリパリという沢庵を食べる時のような音は、和菓子にはない。
ではなぜ聴覚で愉しむというか。
多少こじつけっぽいが、和菓子につけられた菓銘をきくのである。
例えば、梅の菓子には様々な呼び名がある。
此の花
東風(こち) 菅原道真公にちなんで
菅公梅
飛び梅 など
薄墨羊羹 → 名木 薄墨桜を感じられる羊羹にしているから
狩場の月 → 天皇陛下の狩場近くの和菓子屋さんで作られた菓子だから
日本の菓子は生活文化(年中行事や季節)に根差したもの。
季節ごとの菓子(柏餅、桜餅、水羊羹など)や季節を表現する菓子(梅、初午、桃、おぼろ月など)
中でも練切は、季節を形どった菓子で、職人の個性が表れる。
職人の個性を楽しむことが和菓子を愉しむことにも繋がる。
練切餡は、つくね芋を蒸したものや求肥を餡に加えてねばりを出し、細工しやすくしたもの。
また、和菓子はその地方独特なものも多い。
それによってふるさとを感じるというのも大切なこと。
松江の山川、東京の人形焼、切山椒、大根饅頭、うど餅、うど饅頭など。
和菓子は芸術的と言われるが、やはり最終的には食べ物である。
皆さんも、どうぞ愉しんで下さい。
愉快にたのしんでほしいと、愉にしました。
愉しく為になるお話でした。
私の思い出の和菓子といえば、
大学茶道部に入って初めて参加した茶会で使われたささまさんの「紫陽花」
母が大好きで必ず毎年食べた花園万頭さんの「柏餅」
単純に大好きで毎年食べる道明寺製の「桜餅」や「栗羊羹」
季節ごとに出会う度に、食べる度に、どんな和菓子にも感動し、笑顔で頂いています。
皆さんの季節ごとに食べる和菓子、思い出の和菓子は何ですか?
次は職人さんのお話を。