緊急事態宣言が出た時点で、茶道のお稽古もお休みに入り、
各地の茶会も中止になりました。
その間、裏千家お家元はHPからビデオメッセージを発信されておりました。
実は私は最近このメッセージを知り、最新版からバックナンバー2回分位を聞き終えたところです。
最新の5月26日メッセージでは、大変興味深いお話をされていたのでご紹介します。
既にご存知の方も多いかもしれません。
*******************************
緊急事態宣言が解除されたといっても、それはまだ退院を許された病人のようなもの、
大変な状態は逃れたけれども、これからしっかり健康になるために自己管理をして一日一日を過ごさなければならない。
100年前にもスペイン風邪が流行り、人々が不安になった頃があった。
その時代の裏千家 家元は、曾祖父の十三代圓能斎鉄中(1872~1924)。
そのころ、疫病などもあり、衛生観念が向上する中で、濃茶の回しのみを気にする人がでてきた。
そこで、圓能斎は濃茶を銘々に一碗ずつ点てる点前として、
「各服点」を考案した。
圓能斎が好まれた「各服点」は、祖父の十四代無限斎碩叟(1893~1964)(=淡々斎)が、
著書 ”風興集” の中で解説している。
簡単に説明すると、五人の客を招いた場合、
亭主は一碗目までいつも通り濃茶をねる。
正客に一碗を出したら、水屋に戻り、長盆に残りの4名様の茶碗(中には一人分の濃茶を入れておく)をのせて入り、順に点てて召し上がっていただく。
坐忘斎お家元自身も、この「各服点」は1-2回しかお稽古していない。
圓能斎の2代前にあたる玄々斎精中の時代は江戸から明治に変わる激動の時で、外国人との交流が増える中で点茶盤による立礼(椅子に座って茶を点て、飲む点前)を新たに考案された。
そのころは、色々ご批判もあったようだが、実際にやってみた人たちはその良さを感じて、今や立礼は茶道の中でも大事なお点前のひとつになっている。
それと同じように、時代の必要に合わせ、圓能斎も「各服点」を好まれ、考案された。
大寄せで「各服点」を行うのは難しいかもしれないが、でも、工夫したらできるかもしれない。
茶道界も全てを再開することはまだ難しい。
土地柄、場所ごとの事情もあるが、一歩ずつ着実に進んでいくことが大事。
していいことと、してはいけないことを見極めること。
だから、皆で茶を楽しむために「各服点」を一つの選択肢として考えていきたい。
この日の床の間の軸は、玄々斎の画賛。
藤の花の下をツバメが飛ぶ図で、徐々に梅雨が近づいていることを表している。
季節が移るということは、油断すると体調を崩す時期、皆さまもお気をつけてお過ごし下さい。
****************************
このメッセージを聞いて、「各服点」というお点前があったということを初めて知りました。
コロナによる自粛になってから、濃茶の回しのみはやめましょうという話は
耳にしていて、これからは薄茶と同じように一人ずつ飲むような流れになるだろう
と予想はしていました。
濃茶を一人前ねるというのはなかなか難しいことですが、精進するのみですね。
以前、濃茶の回しのみの記事で書いたように、利休様以前は、濃茶も一人ずつ点てていたので、そのころに戻るということになるのでしょう。
そもそも、一碗を皆で分け合って回して飲むという形式は、客同士の結びつきを強くするものだったわけですが、コロナという感染症によって、これからは人同士が距離を取ることが常識になっていく。
少々寂しい気がしますが、コロナのおかげで、「各服点」というお点前を私たちも学ぶことができるかもしれないわけで、楽しみでもあります。
これからお家元がどのように「各服点」を確立されていくのか、発表されるのか、待ちたいと思います。
伝統や基本は大事にしつつ、その時代に合わせた変化というのは必要だと思います。
「各服点」について書かれているという ”風興集” は淡交社から発刊されています。
私も読みたくなって、入手しました。
また読みましたらお知らせしたいと思います。
風興集
https://www.tankosha.co.jp/ec/products/detail.php?product_id=168
<ご参考>
濃茶の回しのみ
https://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/8b0e7a9d31161112b40d8ddacfb6a55c
茶室内の距離感
https://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/041adf9571bc9ca94569b7cb356adca5
各地の茶会も中止になりました。
その間、裏千家お家元はHPからビデオメッセージを発信されておりました。
実は私は最近このメッセージを知り、最新版からバックナンバー2回分位を聞き終えたところです。
最新の5月26日メッセージでは、大変興味深いお話をされていたのでご紹介します。
既にご存知の方も多いかもしれません。
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緊急事態宣言が解除されたといっても、それはまだ退院を許された病人のようなもの、
大変な状態は逃れたけれども、これからしっかり健康になるために自己管理をして一日一日を過ごさなければならない。
100年前にもスペイン風邪が流行り、人々が不安になった頃があった。
その時代の裏千家 家元は、曾祖父の十三代圓能斎鉄中(1872~1924)。
そのころ、疫病などもあり、衛生観念が向上する中で、濃茶の回しのみを気にする人がでてきた。
そこで、圓能斎は濃茶を銘々に一碗ずつ点てる点前として、
「各服点」を考案した。
圓能斎が好まれた「各服点」は、祖父の十四代無限斎碩叟(1893~1964)(=淡々斎)が、
著書 ”風興集” の中で解説している。
簡単に説明すると、五人の客を招いた場合、
亭主は一碗目までいつも通り濃茶をねる。
正客に一碗を出したら、水屋に戻り、長盆に残りの4名様の茶碗(中には一人分の濃茶を入れておく)をのせて入り、順に点てて召し上がっていただく。
坐忘斎お家元自身も、この「各服点」は1-2回しかお稽古していない。
圓能斎の2代前にあたる玄々斎精中の時代は江戸から明治に変わる激動の時で、外国人との交流が増える中で点茶盤による立礼(椅子に座って茶を点て、飲む点前)を新たに考案された。
そのころは、色々ご批判もあったようだが、実際にやってみた人たちはその良さを感じて、今や立礼は茶道の中でも大事なお点前のひとつになっている。
それと同じように、時代の必要に合わせ、圓能斎も「各服点」を好まれ、考案された。
大寄せで「各服点」を行うのは難しいかもしれないが、でも、工夫したらできるかもしれない。
茶道界も全てを再開することはまだ難しい。
土地柄、場所ごとの事情もあるが、一歩ずつ着実に進んでいくことが大事。
していいことと、してはいけないことを見極めること。
だから、皆で茶を楽しむために「各服点」を一つの選択肢として考えていきたい。
この日の床の間の軸は、玄々斎の画賛。
藤の花の下をツバメが飛ぶ図で、徐々に梅雨が近づいていることを表している。
季節が移るということは、油断すると体調を崩す時期、皆さまもお気をつけてお過ごし下さい。
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このメッセージを聞いて、「各服点」というお点前があったということを初めて知りました。
コロナによる自粛になってから、濃茶の回しのみはやめましょうという話は
耳にしていて、これからは薄茶と同じように一人ずつ飲むような流れになるだろう
と予想はしていました。
濃茶を一人前ねるというのはなかなか難しいことですが、精進するのみですね。
以前、濃茶の回しのみの記事で書いたように、利休様以前は、濃茶も一人ずつ点てていたので、そのころに戻るということになるのでしょう。
そもそも、一碗を皆で分け合って回して飲むという形式は、客同士の結びつきを強くするものだったわけですが、コロナという感染症によって、これからは人同士が距離を取ることが常識になっていく。
少々寂しい気がしますが、コロナのおかげで、「各服点」というお点前を私たちも学ぶことができるかもしれないわけで、楽しみでもあります。
これからお家元がどのように「各服点」を確立されていくのか、発表されるのか、待ちたいと思います。
伝統や基本は大事にしつつ、その時代に合わせた変化というのは必要だと思います。
「各服点」について書かれているという ”風興集” は淡交社から発刊されています。
私も読みたくなって、入手しました。
また読みましたらお知らせしたいと思います。
風興集
https://www.tankosha.co.jp/ec/products/detail.php?product_id=168
<ご参考>
濃茶の回しのみ
https://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/8b0e7a9d31161112b40d8ddacfb6a55c
茶室内の距離感
https://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/041adf9571bc9ca94569b7cb356adca5