MAICOの 「 あ ら か る と 」

写真と文で綴る森羅万象と「逍遥の記(只管不歩)」など。

早春の美味「野蒜」

2010年03月04日 | たべもの・料理
万葉集巻第16、長忌寸意吉麻呂歌八首より。

国歌大観番号3829

詠酢醤蒜鯛水葱歌・・[酢(す)・醤(ひしほ)・蒜(ひる)・鯛・水葱(なぎ、水葵)を詠む歌]

醤酢尓 蒜都伎合而 鯛願 吾尓勿所見 水葱乃羹物

(醤酢に 蒜搗きかてて 鯛願ふ 吾にな見せそ 水葱のあつもの)

ひしおと酢に野蒜をつきあえて、鯛を欲しいと願っている私に見せないで欲しい。水葱の吸い物を

上記の万葉集の歌に見られるように、野蒜は万葉の時代から「ひしほ」と酢に和えて食べられていた。現代ではひしほより美味しい味噌に変わってはいるが、日本古来からの伝統食なのである。

早春、枯れ草の中などに針のような細い「野蒜」の緑の葉を見つけると、なんとなく味わってみたいと思う。そう思うのはもしかすると日本人が古来から引きついてきたDNAのなせる技なのかもしれない。もっとも韓国には栽培種があるらしい。
早春の野蒜は葉も柔らかですべてを食べることが出来るのがいい。味噌汁の具にしても美味しいのだそうだ。

今回は畑の柔らかい盛土の上に生えていたもので、手で引き抜くことが出来た。しかもこの時期にしては大玉だったことから、成長すると更に大きな玉となったに違いない。肥えた土の中ではピンポン玉ほどにもなるというが、私はまだそのようなものには遭遇していない。

盛土が柔らかだったためか、30cm近い根まで引き抜くことが出来た。全体では90cm近いものだったが、今の時期ではなかなかこの大きさのものは見られない。


野蒜の一塊だけを採ってきたが、写真でわかるように球根の大きさがまちまちで年数の経過がわかるようである。やはり大玉は辛い。


野蒜は葱と同じ仲間なので葱坊主のようなムカゴをつけ、そのムカゴが真下に落ちて増えることから、一塊となって芽を出していることが多い。
今回収穫した球根の状態から察すると、大きな玉は3~4年経過したものであり、最小のものは昨年落ちたムカゴが発芽したものであろうと思われる。

採取してから余り時間を置くと辛くなってしまうが、小さな球根はゆでてしまえば辛味も薄まり、酢味噌和えにすると美味しい。

大きな玉はさっと湯通ししてから味噌漬けにしてみたが、一夜漬けでは辛味がまだ抜けきれずに残っていた。浅葱や葱のように蕎麦の薬味として使えば、野趣溢れる辛味を楽しむことが出来るかもしれない。

明日は晴れて暖かいという。野原に出て蓬や芹を摘んでみてはいかがでしょうか
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