タイトルは「かたばみとおうごん」と読みます。
表紙からは魔法使いものかな?と思う印象でしたが、全然違いました。
ネタバレを含むので、ネタバレを好まない方はこれから先は読まないことをおすすめします。
さて舞台は1849年のアイルランドから始まります。
荒涼とした大地です。
私は呑気に「ダウントン・アビーのバイオレット様が生まれた頃かしらねぇ」と思っていました。
同時期の日本はまだ黒船さえ来航していないなぁ、とか。
読んでいくうちに、ジャガイモ飢饉だと気が付きました。
私は日本史好きですが、世界史は日本史ほどの興味は持てなかった分野です。
でもジャガイモ飢饉によってアイルランドからアメリカに移民として移り住んだ人々が多かったことは知っていました。
私が子どもの頃、テレビニュースで北アイルランドのテロ活動が報道されていました。
大人になってから映画「デビル」(ハリソン・フォード、ブラッド・ピット演のハリウッド作品)を観て、北アイルランドの問題が長引いていること、テロが身近にある生活に驚くばかりでした。
単純な私は、イギリスとは女王の元に統一されているし、元は大英帝国として世界の覇者だったのに?と、この映画で自分の視野の狭さを思い知らされたのです。
そして昨年私がドハマリした「ダウントン・アビー」はイギリス貴族と使用人たちのドラマですが、この中でアイルランド出身の登場人物がいます。
北アイルランドの歴史の中で、どうしてもイギリスからの独立を願う人々の存在が描写されています。
ダウントン・アビーは今から100年ほど前の時代です。
そしてこの「片喰と黄金」。
時代は今から170年ほど前です。
ジャガイモ飢饉は、ジャガイモが病害で収穫できなくなったことが5年ほど続きました。
この時、アイルランドの人口の半分くらいが土地を捨てて、飢饉で死ぬか、アメリカへの移民になったと言われています。
ヒロインは貧しくとも前向きな14歳の少女。
そしてその従者(ヒロインより年上で背が高い男性)が1人。
この2人がアイルランドの農地を捨てて、ゴールドラッシュのカリフォルニアを目指す物語です。
その旅路で様々な人に出会います。
作者が後書きでも書いていますが、本来出会うはずのない人々にも出会っていて、歴史考証はちょっと甘めです。
でも歴史モノの漫画やラノベで考証が甘いのは、まぁ、ありがちだよね、と思うのであまり気になりませんでした。
それよりもアイルランドって、イギリスの植民地だったんだ、ということに気がつきました。
タイトルの片喰(かたばみ)は、アイルランドを象徴する植物から。
黄金は、カリフォルニアのゴールドラッシュから。
2人の旅路は始まったばかりですが、これからの展開がとても楽しみです。
そして私は19世紀の世界史をもう一度学んでみたくなりました。