秋と言えば、通俗的かもだが、ぼくは珈琲を思い出す。
毎日、数件はカフェに入るもんね。まあ一年中入るけれど、特に秋は・・・
珈琲がとりわけ美味しく感じるのではないかと思う。
でも、散歩には、一休みの時が必要だ。
と、ここまで前号の書き出しである。
JJおじさん、つまり植草甚一氏のことなんだけれど、30代にぼくはこの作家と出会いすっかり好きになって、このかたの本をよく読んだ。
一風変わった文章を書くこの作家の生き方というかテイストというのかライフスタイルがすっかり好きになったのだ。
サラリーマン時代から、友達も特につくらず一人写真や散歩、本へののめりこみを深めつつあったぼくはこのいっぷうかわった作家の文体が大好きになったのでした。
きっと、外国の雑誌を山ほど買い込むことから、この作家の文章は始まるんだろうか、ジャズのレコードも山ほど買い込むらしいと知った。
それで、独特の、JJおじさんスタイルの文体が生まれるんだろうと30代のぼくは邪推した。
映画も、よく見る方のようであった。
なにしろ、東宝だったと思うが、かって映画会社に勤めていたJJおじさんと一緒に勤務したある方からお聞きしたのであったが、目立つこともなく、でも特に親しいわけでもなく・・・という地味なお人であったとか。
で、喫茶店、当世風に言えば、カフェともいういまのぼくの散歩に欠かせない散歩必須アイテムもスタイルも、実はJJおじさんからぼくは学んだのだった。
あれから、ゆうに40年以上は経つんだろうか。そうなるのかあ。
時は流れ、人も流れ流れて、ぼくの人生も流れ流れてゆきまする。
今ではすっかり仲良しのぼくのガールフレンドも、MJBの珈琲がすっかり好きになったらしく、緑のおおきい珈琲缶を抱えて、よく美味しい美味しいといって吞んでいるようなのでありますよ。今でも、MJBの大きい珈琲缶、売ってるんだねえ。何杯も飲みたくなるのだとか・・・
彼女も十分魅力的で頭の良い方なのですが、JJおじさんもそう、実にシャープな方でして、だからなおさら興味も惹かれこの作家のことになると、どんなことも書いてみたくなるのであった。
でも、なんと、考えられないことにぼく自身が、JJおじさんのバリバリ現役で活躍されたころの齢を越えたのですよねえ。ビックリ。
なんということだ。アタマもボケ気味、身体もあっちが痛いこっちが痛い。
まあ、歩くことがかろうじて必要以上の老化を防止しているのかそれだけで生きて乙昨今、ぼくならこう言います。
「ぼくたちには、植草JJおじさんが必要なんだ」
さて・・・
参考までに、ぼくの手元に、
植草甚一スクラップブック14
「ぼくたちにはミンガスが必要なんだ」
という本がある。(晶文社刊)
とてもジャズを勉強するにも良い本であると信じます。
この作家の本ならどれでもおすすめですよ。
フォト・文 石郷岡まさお