バリ島土着の人々はバリヒンドゥ教一色だ。このバリヒンドゥーはインドに発生したヒンドゥがバリに伝来したものだが、インドのそれとはかなり趣が異なると聞く。何が具体的に異なるのか詳細はしらないので今後の興味のある探求テーマとなる。最も興味をそそるのは、ある宗教あるいは一派が伝来してその土着の信仰と結びつき、どのような変遷と混淆を見るのかという点にある。
葬儀の際に棺を運ぶ牛のはりがたや街の角でときおり見かける赤い性器を剥きだしにした黒い犬の像、カエルの石像などがアニミズムの現れか。日本のお盆に似て先祖を祭る風習のガルンガンとクンニガン、病気や災難が降りかかった時に一番に頼るのはバリアンで、ときにブラックマジックやホワイトマジックを使い、呪術的だ。そして子どもが生まれると先祖の誰それの生まれ変わりだといって輪廻転生を信じる。左手を不浄、山を清浄、海を不浄と考える。
このように教義よりも儀礼を重んじ、その儀礼の中にインド・ヒンドゥ教には見られないアニミズムや祖先崇拝、バリアンの存在などが色濃く残っている。