2012年1月5日。
G1通算6勝、牝馬としては歴代2位の女王・ブエナビスタ号の競走馬登録を今日、抹消したとJRA(日本中央競馬会)が発表した。
生まれ故郷である北海道安平町ノーザンファームに繁殖馬として、再び帰ることになった。
いつも優しい眼差しで、賢く、落ち着きのある馬だった。ところが、いざゲートが開くと、持ち前の瞬発力と切れ味の鋭い末脚で、男馬相手に負けん気の強さも見せてくれた。
昨年の千葉県船橋市にある中山競馬場での「第56回有馬記念」。
ファン投票1位で女馬として唯一、出走したブエナビスタ。
5歳牝馬のブエナの引退レースは、クルスマスのドリームレースだった。
勝ち馬だけに許される、メインスタンド前でのウイニングラン。
ホワイトクリスマスの雪が降りしきる中山競馬場で、カクテル光線を浴びながら、勝利の雄叫びを上げる、若き三冠馬・オルフェーブル号だけが、そこにいた。栗毛の三冠馬が、黄金世代と呼ばれる古馬たちに引導を渡し、日本最強を誇示した瞬間だった。
頭(こうべ)を垂れながら、地下馬道へ引き上げるブエナ。
3歳の若き三冠馬に敗れたブエナが泣いているように見えた。厩務員に引かれ、力無く歩く様は、枯れ、燃え尽き、精根が尽きた女王だった。
雪が降りしきる中山競馬場で、ブエナから僕は目線を切り、一刻も早くこの場から立ち去りたかった。
ブエナに「お疲れさま」としか言えない、情けない自分がそこにいた。
涙がこみ上げて来そうだったので、足早に立ち去った昨年の有馬記念。
でも、中山競馬場で2度もブエナに会うことができた。
最強女王・ブエナビスタ。
「皇帝・シンボリルドルフ」や「芦毛の怪物・オグリキャップ」とともに、いつまでも僕の心の中で走り続けるだろう。
そして僕自身、まだ足を踏み入れたことのない北の大地で、お母さんになったブエナビスタ号に、また会える日はそう遠くないと思う。
「お疲れさま」でなく、そのときは穏やかな気持ちで、きっと、こう言葉をかけるだろう。
「ブエナ、元気そうだね。」
ブエナ、たくさんの素晴らしい絶景(ブエナビスタ)を本当に、心からありがとう。
いつも応援ありがとうございます。