横山典弘騎手が先週、中京記念を勝ちました。
そしてその勝利騎手コメントがまた実に良いですね。
ノリさんも年を取って枯れてきたというか、丸くなってきたというか、凄く穏やかですよね。コメントもわかりやすいし。
正直言うとぶっきらぼうで、いつキレるかわからないような尖った面が感じられ、典さんは今まで好きな騎手ではなかったのですが、最近そのイメージが完全に覆りました。
実は彼はツンデレだったようです。っていうかシャイな性格だと評されていますね(笑)
ダービーのダノンデサイルでもクローズアップされましたが、今回のアルナシームも3走前から調教から跨って、調教を付け、厩舎スタッフと一緒になって意見を出し合って馬を作ってきたとのことです。
こうしたことは昔は当たり前にあったのだと思いますが、「現在の騎手はサラリーマンである」なんて言葉が出てくるくらいに役割が変わってきている現代競馬。
役割が明確(細分化?)になっているとも言えるのかもしれませんが、ベテラン騎手が調教に乗るのは大体が厩舎の勝負馬であり、大体は一週前で、まぁ当週も乗る人もいるかなと言った感覚です(若手や新人騎手は当然にバンバン乗りますがね)。
これが何だか不思議な感覚がしました。昔はこれが当たり前だったんですよね。騎手も結構調教に乗っていた。でも、今は珍しくなってきているんです。
外厩でほぼ作られていて、トレセンでは調整程度にしている場合も結構あるからです。
こうして昔から綿々と続いてきている日本の調教の伝統(スタイル)をしっかりと守り、受け継ぎ、続けている典さんを本当に尊敬します。
現在、栗東トレセンのそばにウィークリーマンションを借りて単身赴任生活をしているようです。一時期、調教師試験も考えていたようですが、「生涯一騎手」に腹を決めたようだとの話です。
なぜ、栗東に拠点を移したかというと『調教から乗りたかった』からだと言います。
最近の競馬は外厩での育成や調整がメインとなり、トレセン内での調教内容も昔とは変わっているようです。
じっくりと自厩舎で調教を積むスタイルが典さんには合っているようで、それを見抜いた昆調教師の声掛けで栗東に移ったと言われています。(なのに典さんと昆厩舎の相性と言うか、馬の成績が良くないのは何故??)
武豊騎手も自分は調教に乗るのが下手と言って調教は殆ど乗りません(ビッグレース前には一週前に乗るくらい)が、典さんは違います。
調教師、厩務員、助手、様々な人と意見を出し合ってその馬の最も良い方法を一から作り上げているのです。
こうした馬一頭にしっかりと関わっていくスタイルが好きなんでしょうね。
今年、ダービーや中京記念を勝ってノリさんは再び注目されました。
そのお陰で私も典さん評価を手のひら返しして、こんな記事を書いているという訳です。
これって昔、自分が大好きだった領家厩舎に符合しないか?と思ってしまったのです。
そして、大好きなブレイクランアウトを一度も放牧に出さずに自厩舎の1馬房をずっとブレイクの為に使った戸田調教師がひょっとして目指していた事なんじゃないか?なんて思ってしまったのです。本気で自分のところでブレイクランアウトをスーパーホースに育てたかった。
私はダービーと今回の中京記念のエピソードを聞いて、改めて横山典弘騎手と言う人物を再評価させて頂いています。
彼はひょっとしたら最後の職人なのかもしれません(岩田康誠騎手も一時干されてこうしたスタイルを良く取っているようで成功例も多数ありますね)。
ノーザンファーム天栄に代表される外厩制度のデメリット(もちろんメリットも大きい)に対してこうした姿勢を見せているのかもしれません。
単に外厩で作られた馬に厩舎では整える程度のトレセンでの調整しか施さない現代の競馬に疑問符を投げかけているのかも知れませんね。
馬には個性があり、ヤエもすれば画一的な調整ではその馬のポテンシャルは発揮できません。
競馬とは人と馬の作り上げる物語(ロマン)です。
一頭一頭丁寧に育成スケジュールを組み、その馬に合わせた調整が本来は求められると思います。
今まで、典さんが乗っているというだけで馬券も買いませんでしたが、今後は買うように致します。スミマセンでした。
典さんにも出来るだけ長く乗り続けてこうした美談をたくさん聞かせて欲しいと思います。
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