音楽監督ジョナサン・ノットと独奏に神尾真由子を迎えた重厚なプログラムだ。一曲目はエルガーのバイオリン協奏曲ロ短調作品61。この一年の間にこの決してポピュラーでない協奏曲を聞いたのはこれが何と三度目になる。昨年9月に竹澤恭子+高関健で、今年5月に三浦文彰+沖澤さやかで、そして今回だ。これは決して追っかけて聞いて回っている訳ではない偶然な巡り会いなのだ。更に偶然にも今年5月初旬の英国旅行に際して訪れた街がGreat Malvern。エルガーはこの隣町の生まれで、この街をとりまくMalvern Hillsはエルガー最愛の風景だったのだ。そんな訳で帰国後はエルガーに只ならぬ想いを深めているので、実に楽しみにして当日を迎えた。神尾は真っ向から曲に対峙して、超絶技巧を駆使し、肢体を一杯にくねらせて常に情熱的に音を紡いでゆく。ノットもそれに負けじとその激しい音楽に対峙する。確かに熱量の極めて高い凄い演奏だった。しかし、そうした音楽が50分近くも続くとさすがに辟易としてしまったというのが正直な感想だ。エルガーって、もう少し陰りがあっても良いと思う。とりわけミステリアスな書き込みのあるこの曲なのだから尚更である。そんな中で、2楽章終盤に聞こえてきた一瞬の密やかな音楽が珠玉のように思われた。休憩後はブラームスの交響曲第2番ニ長調作品73。それはノットなのだからさぞかしエッジの立った演奏になるだろうという予想を見事に覆す穏やかな音楽だった。常に穏やかに、楽しげにというのが今回の「テーマ」だったのではないかと思わせる程、指揮するノットは何時も微笑みを絶やさなかった。4曲の中では最も穏やかな曲調であるこの2番だが、それでも激しく厳しく響く部分がないではない。しかしそうした部分でも極力穏やかに円やかに表現しようとしていたように見えた。これは一つの解釈として立派であるが、最後の最後になっていつものノット調が少し顔をだしてしまったことはご愛嬌だった。二日目は「穏やか・円やか」がより徹底されて更に完成された演奏になりそうな気がする。今日はとりわけ上間主席の柔らかなホルンと竹山・荒・吉野の首席陣による木管アンサンブルの美しさが全体の雰囲気を引き立てていた。
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