咲人は私の足を指していた。
ヒールから覗く私の足には、ちょっとした傷があった。
私は言葉に詰まった。
「あ、えっと…これは……」
見れば、咲人はデカイ目を更に見開いてそこを凝視している。
い、いや、そんな大変なもんじゃないんだけど……汗
「えっと、これは何でもないの。ただの傷っていうか……」
「痛くないのか?」
「うん、全然。ただの靴擦れだったんだけど、なんか治りが悪くてもうトシだからアトになっちゃったっていうか…」
「どれくらい前にできたんだ?」
「え?!えぇーと多分…数ヶ月前かな……」
「数ヶ月!?そんなに長い間治らないのか!?」
「(ひぇ〜汗)で、でも、痛くないから気にならないし……」
「でも治らないなんておかしいだろ!」
だけでは済まず、咲人は
薬は塗ったのか?
病院へは行ったのか?
いつもどんな靴履いてるんだ?
この靴のせいなのか?
と、それはもう矢継ぎ早に真剣に質問してきた。
私はたかが靴擦れがアラサーだから治りにくいだけなものについて質問攻めに遭い、
すっかりタジタジしてしまった。
咲人は訊いた。
「メイサ、触ってみていい?」
「えぇっ!?」
と驚いたものの咲人が真剣に心配しているのがわかったので、私はおずおずとOKした。
咲人は跪いて、私の足を両手ですくい上げた。
そして、え〜何でなんだ…とか呟きながら、その靴擦れ派生(笑)をしげしげ見つめたり、
優しく指でさすったり、まるで本当に何かの研究員か何かみたいだった。
私はなんとも言えない表情でそれを見つめていた。
この謎の執着はすごく咲人らしい。咲人はすごく細かくてしつこい男だ。
でもこれがどうでもいい子の足にあったら、こんな風にする気はしない。
何はともあれ、会ったばかりの男に足をしげしげとチェックされているのはどうも可笑しかった。
私は苦笑した。
「ねぇ、あなたって普段そんなに女友達の足を触るの?」
「え?うーん……」
咲人はちょっと笑った。
「君が触っていいって言ったからだろ」
「いや、そうじゃないじゃん(笑)」
と日本語で言ったので、彼は何?ときいたけど、
私は何でもないよ、もういいよ(笑)と答えた。
はぐらかしたようだけど、その距離感も嫌じゃなかった。
白いけれど煌々とした月の下で私達は色んな話をした。
日本ではどんな仕事をしていたかとか
咲人の家族の話とか。
終始彼は彼らしく、細やかでちょっとキザで、笑えた(笑)
どんなに話しても彼の見た目が変わる事はなかったんだけど(そらそうだ)
でも
すごく不思議だった。
いくらずっと話してきたからって
初めて会ったこの人ともう18時間は一緒にいる。
ずーーーーーーーーっと英語で話している。
なのに
全然大変じゃないんだよなぁ。
嫌じゃないんだよね。
むしろ
完璧にやってくれてるんだよなぁ…………
「咲人」
私は足を止めた。
アスファルトの上に、真っ黒な私の影が長く伸びていた。
現実もこれくらい脚長ければいいのに。
笑顔で振り向いた咲人の影も、長く長く伸びていた。
月明かりの下で、私達は2人きり、私の部屋に向かっていた。
私が帰り方を知らないから(爆笑)。
私は言った。
「咲人、あの……ありがとう」
私は、黒くて長い脚に目を落としたまま続けた。
「あなた、本当に今日私のためにすごくいろんなことしてくれたわ。
沢山考えてくれたのね。こんなに急だったのに……
あなた、完璧だったわ。ずっと……」
私は顔を上げた。
咲人と目が合った。
「本当に……感謝してるの」
咲人は
微笑んだ。
そして言った。
「You are very much welcome」
何度も何度も電話で聞いた
キザでセクシーな声で言うそのセリフ。
続きます。
ヒールから覗く私の足には、ちょっとした傷があった。
私は言葉に詰まった。
「あ、えっと…これは……」
見れば、咲人はデカイ目を更に見開いてそこを凝視している。
い、いや、そんな大変なもんじゃないんだけど……汗
「えっと、これは何でもないの。ただの傷っていうか……」
「痛くないのか?」
「うん、全然。ただの靴擦れだったんだけど、なんか治りが悪くて
「どれくらい前にできたんだ?」
「え?!えぇーと多分…数ヶ月前かな……」
「数ヶ月!?そんなに長い間治らないのか!?」
「(ひぇ〜汗)で、でも、痛くないから気にならないし……」
「でも治らないなんておかしいだろ!」
だけでは済まず、咲人は
薬は塗ったのか?
病院へは行ったのか?
いつもどんな靴履いてるんだ?
この靴のせいなのか?
と、それはもう矢継ぎ早に真剣に質問してきた。
私はたかが靴擦れ
すっかりタジタジしてしまった。
咲人は訊いた。
「メイサ、触ってみていい?」
「えぇっ!?」
と驚いたものの咲人が真剣に心配しているのがわかったので、私はおずおずとOKした。
咲人は跪いて、私の足を両手ですくい上げた。
そして、え〜何でなんだ…とか呟きながら、その靴擦れ派生(笑)をしげしげ見つめたり、
優しく指でさすったり、まるで本当に何かの研究員か何かみたいだった。
私はなんとも言えない表情でそれを見つめていた。
この謎の執着はすごく咲人らしい。咲人はすごく細かくてしつこい男だ。
でもこれがどうでもいい子の足にあったら、こんな風にする気はしない。
何はともあれ、会ったばかりの男に足をしげしげとチェックされているのはどうも可笑しかった。
私は苦笑した。
「ねぇ、あなたって普段そんなに女友達の足を触るの?」
「え?うーん……」
咲人はちょっと笑った。
「君が触っていいって言ったからだろ」
「いや、そうじゃないじゃん(笑)」
と日本語で言ったので、彼は何?ときいたけど、
私は何でもないよ、もういいよ(笑)と答えた。
はぐらかしたようだけど、その距離感も嫌じゃなかった。
白いけれど煌々とした月の下で私達は色んな話をした。
日本ではどんな仕事をしていたかとか
咲人の家族の話とか。
終始彼は彼らしく、細やかでちょっとキザで、笑えた(笑)
どんなに話しても彼の見た目が変わる事はなかったんだけど(そらそうだ)
でも
すごく不思議だった。
いくらずっと話してきたからって
初めて会ったこの人ともう18時間は一緒にいる。
ずーーーーーーーーっと英語で話している。
なのに
全然大変じゃないんだよなぁ。
嫌じゃないんだよね。
むしろ
完璧にやってくれてるんだよなぁ…………
「咲人」
私は足を止めた。
アスファルトの上に、真っ黒な私の影が長く伸びていた。
現実もこれくらい脚長ければいいのに。
笑顔で振り向いた咲人の影も、長く長く伸びていた。
月明かりの下で、私達は2人きり、私の部屋に向かっていた。
私が帰り方を知らないから(爆笑)。
私は言った。
「咲人、あの……ありがとう」
私は、黒くて長い脚に目を落としたまま続けた。
「あなた、本当に今日私のためにすごくいろんなことしてくれたわ。
沢山考えてくれたのね。こんなに急だったのに……
あなた、完璧だったわ。ずっと……」
私は顔を上げた。
咲人と目が合った。
「本当に……感謝してるの」
咲人は
微笑んだ。
そして言った。
「You are very much welcome」
何度も何度も電話で聞いた
キザでセクシーな声で言うそのセリフ。
続きます。