メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

セクシーな男、現る。

2018-08-04 20:16:44 | 咲人
咲人からメッセージが来たのは、私がメラメラと負けん気を燃やし、やけウンチになっていた時だった。
彼は私がフォローした男達の1人で、仁と同じ国籍で、28歳の男だった。
プロフィール写真から察するにまあまあイケメン、と言うか、私のタイプぽかった。





ピロリン





『Hey Meisa, Thank you for following me!』





お、昨日フォローした子からだわ。





待ち受け画面に表示されたメッセージは定型文と呼べるくらい平凡な文章だったので、私は何も期待せずに続きを読むボタンをタップした。
しかし、液晶に映し出された文章は予想以上に長いものだった。






『先に言っといた方がいいと思うんだけど、俺は定期的に日本語を勉強できる相手を探してるけど、勉強し始めたばかりで全然日本語が上手くない。でも確実に、ネイティブスピーカーに質問しなきゃ解決しない問題があると思ってる。
あと、もし君が英語のネイティブスピーカーを探してるなら、俺は適さないと思う』






おぉ。
真面目で優しくない?
超いい人じゃん。
ていうか、本当に勉強してそう。




私はすぐさま返事を書き始めた。





『Oh Sakito, You’re so kind and honest!
お気遣いありがとう!正直あなたの日本語レベルは全く気にしないから安心して。何か質問があれば何でも聞いてね。』


『やったね!でも俺は見返りとして何をすればいい?君が日本語を教えてくれるなら、俺は君に借金することになるよ(笑)』


『ははは、借金(笑)たしかにね。でも問題ないわ。私はあなたがあなたの国の人間だから連絡したの』


『詳しく教えてくれ』


『私の経験と知識から判断するに、あなた達はすごく英語が上手でしょ?』




たしかにね、と彼は答えた。
私は軽快にタップを続けた。





『だからあなたでも大丈夫だと思ったの。というわけで、私があなたに求めるものは…』

『何?』

『英語で電話したりチャットしたりして、スピーキングの練習をさせてくれることよ :)』





すぐさま彼はイイね、完璧!と返信して来た。






『いつ電話する?明日時間ある?』

『明日の夜なら時間ある!というか……』





ちょっと急すぎ?嫌がられるかなぁ。
でもまぁ私のいいところは、何でもやってみるところ!
ポチポチポチ





『今時間あるんだけど、少し話してみるのはどう思う?(笑)』





オッケー!とすぐに返事が来て(いいのか!)私達は電話することになった。
正直私は、初めて咲人と話した時のことをあまり覚えていない。
今は文に書き起こしているから記憶を辿れているものの、書き始める前は全然詳細に思い出せなかった。
ただ、2つだけすごく印象的だったことがある。
その1つは、彼の声だ。





「Hey」






彼が電話に出た瞬間、耳に何かが勢い良く滑り込んできた。






お!



ちょ、超いい声してる!!!






彼の声はすごく良かった。
セクシーで、クールで、それでいてとっても聴き心地の良い声だった。
正直日本にいた時はほとんど男の声に興味がなかったのだけど、
言葉力が微妙というシチュエーションに置かれてからは(笑)
彼らの声も魅力の1つとして捉えるようになったような気がする。




セクシーボイスの咲人が提供してくれた話題は、たしか、どんな仕事をしているとか、いつが休みだとか、いわゆる当たり障りのないものだった。
だけれど、彼はたくさん質問してくれたり私の拙い英語を懸命に聞き取ろうとしてくれたり、とても親切な印象だった。
加えて、彼が教えてくれたいくつかのバックグラウンドは、個人的に結構好ましかった。




たとえば




シェアハウスが主流の街で、一人暮らししていること。
その理由を、特にない、と言い切るところ。
やっている仕事。
それをつまらない仕事だと言い切るところ(笑)
そしてそれらを話す時の、落ち着き払った、どこか皮肉っぽい、ちょっとエラそうな話し方が気に入った。





予想通り、カナリ流暢だし、聞き取りやすいな。
やっぱりこの国の人は相性がいいみたいね。。。
人柄も良さそうだし、この子とパートナー組めたらいいなぁ。




と、当初の目的(負けん気ヤケウンチ)を忘れ、真剣に勉強のことを考えていた。
咲人が私と定期的にやり取りしたいと思ってくれたらいいな、と思っていた。
そんな彼と1時間ほど話した時だろうか。
彼がある提案をしたのだが、それが2つ目の、私がよく覚えていることだ。






「あの、咲人…」

「何?」






私は一瞬言い淀んだが、眉をひそめてたずねた。





「その…眠いの?声から察するに相当眠そうよ」

「あぁ……実はかなり眠い(笑)」

「ごめーん!!眠いのに付き合わせて!!知らなかったのよ〜!」

「いやいやいや良いんだよ。俺が電話するの承諾したんだし」

「そうだけどぉ、悪かったわ」

「いや、いいんだって…。えっと、ところで、明日は君は忙しいの?」





ふいに咲人にそう聞かれ、私はキョトンとした。





「いいえ?」

「そっか。じゃあ、明日また話さない?」






えっ

ホント????






「えっと、あの、、、あなたがよければ、私は………」






言葉を選びながら答える私に、咲人は笑って答えた。





「待てよ。俺が話したいから、聞いてるんだよ」







なっ




なんて良い人なの……!!!




当然私は話したかったので、勿論!ありがとう!と強く答えた。
彼はなぜだか知らないが楽しそうに笑っていた。





そしてその翌日に





事件が起こった。






続きます!

戦いが始まった

2018-08-03 08:59:08 | 
「あ、そうそう。彼、来なくなったの?」




と、梓は食べ終えた弁当に蓋をしながら訊ねた。
今日のランチは韓国料理のテイクアウト。
梓オススメのビビンバを買って公園でいただいている。
食べるのが遅い私はモグモグと口を動かしながら頷いた。
へー、残念だねぇと梓が軽く言うので、私は急いでナムルを飲み込んだ。




「残念よ!し、か、も!アイツの態度最悪!!!」

「おぉ、穏やかじゃないね。どうしたの」





そう、彼というのはもちろん仁さんなのだが、彼がしたことは到底常識から外れている。
話はこうだ。
会いにくる日こそ約束したものの、飛行機やホテルを予約したように見えない。
3週間前には「本当に来るの?」「勿論!俺が信じられない?」、
1週間前には「そういえばホテルと飛行機予約した?」「まだだね。メイサの教えてくれたエリアのホテルがいっぱいだから他のところを探さないと」「仕事の都合つけたいから早めに知りたいな」「明日の夜までに連絡するよ」ってな会話をした。





「……で?」





嫌な予感、と梓の顔に書いてある。
私は盛大にブスッとして答えた。





「ゴメン、チケットがいっぱいだから延期しなきゃいけない。次はいつ空いてる?って言われた」

「Oh No...」

「でも本当に悪いのはそれじゃないの」

「え?」

「その後の対応なのよ」





そう。
彼が1ヶ月も前からしていた約束を破ったのは相当ムカついた。
当然会うのを楽しみにしていたし、彼なんて「俺が信じられない?」なんて笑っていたのに。
こちとら梓にツアーコースをリサーチしたし、美容院にも行ったし…etc
で!も!
それでも私は恨み言ひとつ言わず「Oh... わからないけど、次は1ヶ月後かな」とだけ返信したのだ。
めっちゃ偉くない?
な!!!の!!!に!!!!!!





「もう5日返信なしなのよ!?頭おかしくない!?」





ムキーッと怒髪天を突く私に、梓は苦笑した。
まぁ、変だと思うよ。と同意して。






「いつもはもっとマメに連絡してるんでしょ?」

「あたぼうよ!自分が悪いんだから、じゃぁ次はこの日にしようとか色々やることあんじゃん!」

「ま、その通りだね。俺なら怒ってる?って聞くし」

「でっしょぉーーーー!!!なのにもぉーーーー!!!」

「はは(苦笑)メイサ、めっちゃ怒ってるね」

「Why not?」





ブスッとしてっていうかブスのまま私は憤慨していた。





「まぁ少なくとも君は週末にフリータイムをゲットしたんだからいいんじゃない?」





と言い、梓は私の前にラテを置いた。
食後のコーヒーも、彼にオススメのカフェに行った。
基本的に彼にお任せだ。
まぁそうなんだけど…と収まらぬ怒りで膨れていたが、梓は続けた。






「メイサは色んな面白い人に会ってるけど、彼らの個性は彼らの自由だよね。
でも彼の場合はダメだね。コミュニケーションは大事だからね。」

「ってことなのよ」

「わかるよ。多分若いからじゃない」

「ぐっ……」

「若い子と遊ぶのやめたら?」

「そうね。あーもう本当若い子たちには疲れたぁーーー」





ため息混じりにテーブルに突っ伏す私を見て、梓はケラケラと笑った。
何よぅ、こっちは本気で苦しんでるのにぃ。涙




この5日間、仁からメールが来ないことで私に精神状態はぐちゃぐちゃだった。
一番の理由は、なぜ連絡しないのかが解せないことにあった。
理由さえわかれば、それに対応する方法を考えたり、待てる。
でも、これは一生連絡しないつもりなの?それとも一時的なの?
あとあと、なんで自分が悪いのに連絡して来ないの?
気まずいから?面倒臭いから?
それとも
実はもっと前から来る気なんかなくて、わたしにも愛想を尽かしていたのだろうか。



賢い梓にそんなくだらないモヤモヤを相談することはできず、
このランチの会より前に女友達や他の男友達に相談していた。
彼らは口を揃えて仁はおかしいと言い、
「彼が君を傷つけるならもう関係を絶った方がいいんじゃない」と男友達は言った。
メイサによるけど、とも言ったけど。
(この男友達についてはまたのちに書きたいと思います。)




梓と分かれ、トボトボと歩く道は往来が激しい。
孤独は賑やかなところで増すことがある。
男友達や梓にそいつオカシイと言ってもらったお陰で、どんどん仁をダメなやつだと思えてきた。
ダメだと思えたら諦めるのが簡単になってくる。
だけど…





私は携帯を取り出し、例のアプリを開いた。
この5日間、仁のプロフィールページを見なかった日はない。
彼の写真を見つめ、何度もため息をついた。
他のユーザーからのレビューも目に入る。
私と話していない5日間のあいだに、彼は5人もの人からレビューをもらっている。
レビューはある程度チャットするか電話しないと投稿できない。
つまり、私には返事しないくせに5人の人間とたくさん連絡する時間はあるってことだ。





流石に傷つくわ。
私のこと、どう思ってんの?





悲しくて、泣きそうになった。
レビューはたいていどーでもいいルックスの女の子だったりするけど、
こういう時はネガティブに派生してしまうものだ。
そのうちの1人がまぁまぁキレイなだけで胸がちぎれそうな気持ちになり、
そしてクソムカついた。








……そーかよ



そーかよそーかよそーかよ




くっそーーーーーーーーーー!!!!






私はざっと検索ページを開き、そこそこ見栄えのする男の子達を手当たり次第にフォローした。
彼らの日本語レベル、英語ネイティブか否かなんてどうでもいい。
あっという間に十数人の男の子達をフォロー完了し、9割の子達が連絡してくれた。





まだまだ。





今度はフィルターをかけて検索した。
フィルターは勿論、仁と同じ国籍であること!





なかなか好物件がヒットしなかったが、努力の甲斐あって3人の男の子をゲットした。
ハンサム、まぁまぁハンサム、普通。
でも仁に嫌な思いをさせるには十分だ。





ものの3日で、私のプロフィールには11件のレビューがついた。
5日で5件?は、笑わせないで。
誰だと思ってんのよ。





あんたなんかに





負けない。







続きます。





プレイボーイとデート②Kissはどこにするものか

2018-08-02 14:13:38 | 雅留
雅留を探しに改札へ向かうと、すぐにそれらしい男の子を見つけた。
写真で予想した通り、背が高くて頭が小さくて、四肢が長い。
日本なら確実に褒められそうなスタイル。





「Hi」




意を決して声をかけた私を振り返り、彼は微笑んだ。
やばい。






めっちゃカッコイイじゃん





タイプですよーーーーー!!!!




「Hi Meisa, nice to meet you.」




と言って雅留は私を抱きしめた。
まぁ、この国ではハグはただの挨拶なわけなんだけど。
すぐに雅留はこの後の予定やら何やらについて話し出したけど、あまり聞き取れず、
もう少しゆっくり話してくれない?とお願いした。
しまった、という反応をして、ゴメンわかったよ、とスピードダウンしてくれた。





「綺麗な建物ね」





彼が連れて行ってくれたのは博物館の中のカフェだった。
9つも下の彼は、「君は払わなくていいよ」と不敵に笑ってシャンパンをおごってくれた。
シャンパングラス片手にお互いのことなど話していたが、彼は終始、こんな感じ。












「君の方が綺麗だよ」







あ、いやいや車じゃないけど。
背もたれに腕かけてんですわ。



雅留は十分にグッドルッキングだったのだが、なにせ9つも下の大学生。
こちとら笑い皺とほうれい線がきい気になりだしたアラサーアジア人。
ドキドキしていいものか、いなすべきなのか、正直微妙!
いやーだって私が高校生のとき小学生っしょ?
いやいやいやいやいや




「あ、ありあがとう。あなたっていつもこんなふうに女の子を口説くの?」

「まぁそうかな。嫌い?こっちのほうがいい?」




と笑い、今度は私の手をとった。
正直もうどっちでも委員だけど(いいのか)
当たり障りのないメールをして数ヶ月。
出会ってものの30分。
彼が私を好きなわけがないのにガンガン押してくるので正直戸惑いが隠せない。
仕事中ならそんなもんヨユーでスルーもしくはじゃんじゃんその気にさせちゃうんだけど、
いかんせんプライベートでは処女みたいな私なのだ。





「あなたは普段どんなものを食べるの?何か宗教はある?」

「うーん、アジア料理が結構好きかな。君は?」

「私も!辛いもの(HOT)好き?」

「好きだよ」






雅留は微笑んだ。





「君みたいなHOT(セクシー)なものがね」





9つ下だよね?





「私はそんなにセクシーじゃないわ(貧乳のアジア人体型だし)」

「セクシーだよ。たくさんの男が君に言い寄ってるでしょ?背が高い男だけ受け入れてるの?」

「まぁ確かに背が高い子が好きだけど…でも男の子の方が容姿でパートナーを選ぶでしょ」

「女の子だってそうだろ」




そうかしら?と、ふと彼の横顔を見つめると、感嘆のため息が漏れそうになった。
なんてキレイな横顔なんだろう。
めっっっちゃキレイ!!!!!
私のボタンみたいな鼻とは全然違うわ。(泣)
確かにこの顔じゃなかったら手を繋ぐのも腕を回されるのも違う印象なんだろうな。←正直
ていうかこんなキレイな子が私に何の用なんだ?!





カフェでの振る舞いはいちいち生意気だったけど、
色々な所を案内している時も変わらずマセていて。
とてもじゃないけど日本の9つ下の男の子と同じには思えなかった。



マセているっていうのはネガティヴな表現だけど、
もう少し的確に表現すると、彼は本当にスマートだった。
落ち着いているし、知識も豊富だし、女の子のことをちゃんとケアできるし(気が利くのよ)。
あと、多分育ちがいいんだろうけど品がある。
加えて、腕こそ回したものの、変に触ってくることもなければ、
道で手を繋ごうともしなかった。
兎に角、スマートだった。




ふーん。
なんか楽チンだなー。
可愛いし。(ていうかタイプ)←




もうちょっと仲良くなりたいかも……







「じゃぁね」





彼は伝えてあった時間通りに駅まで送ってくれた。
お家に連れ込まれちゃうかもぉーという私のアホな心配は全くの無駄だった。
うぅ、恥ずかしい。



改札口の近くで向き直り、彼はサヨナラのハグを求めて来た。
私はまだハグに抵抗があったけど(日本人だしハンサムな年下の男の子相手だし)、
ぎこちなく彼のリクエストに応えた。
私を抱きしめたまま、雅留は頬にキスをした。




わっ



ラッキー!←こら





私が笑ってごまかしていると、彼は私を見つめ言った。







「君も俺にサヨナラのキス、してくれる?」





えっっとぉー…





「ホッペに口紅がつくわよ?」

「構わないよ」





私はあまり口紅がつかないように気をつけながら、彼の頬にキスをした。
すると彼は言った。





「何なら俺は、唇にしてくれてもいいんだけど?」






…………。



ふーーーーーーーーーーーーーん。






私は彼の背に手を回したまま背伸びをして、
とても軽く彼の唇に触れた。
瞬間、雅留は私を強く抱き寄せた。
彼がキスする番だった。
キスの合間に、彼は私に訊ねた。





「Older sister って、日本語でなんて言うの?」

「お姉さん、って言うのよ」

「オネエサン、ね」





私を離すと、行って、と雅留は笑いもせずに言った。
背を向け、チラッとこちらを見て呟いた。





「Bye bye, sexy oneesan.」





颯爽と去って行く彼を、私はポカーンと見送った。
い、行くなよとか、好きだよとか、そういう甘い感じじゃないのね…
なんつーか……その……





ニューキャラクター(笑)




その後も雅留は頻繁にメールをくれた。
何度かデートを重ねた。
終始ちょっとキザでカナリ発情していたけど(爆笑)とにかくずっとスマートだった。←いや発情でスマートってなに




正直に言うと、私は彼といる間ずっと
「どうして私に構うんだろう」と思っていた。



彼くらいハンサムでスマートなら、そこら中に彼女候補がいる。
実際絶対彼はプレイボーイだ。




私は英語もろくに話せないし、肌もよれてるし(泣いてなんか…嘘です泣いてます)
何も好き好んでこんな謎のアジア人と付き合わなくてもいいんじゃねーの?と思っていたのだ。




だけど雅留はずっと、キレイだ、セクシーだ、君は僕のものだと夢中に見えたし、
たくさん親切なことをしてくれた。





だから、彼が私のことを見た目だけで好きになっているんだろうと予想しても
それでも尚一緒にいる価値があると思った。
だってそうでしょう?




優しくて、ハンサムで、スマートで、
ニューカマーの私に対してその街出身で知識豊富で



私が勉強しなきゃいけない言語のネイティヴスピーカーで



私には彼氏がいなくて







仁さんと同時進行だったけど。







続きます。