お母さんを施設へ迎えに行き、診察券、先生へのお手紙、病院医事課へのお手紙を預かる。

先日デンバーに住むお母さんのお姉さん、わたしの伯母ちゃんが送ってくれたダウンベスト。サイズも合っているし、色もよく似合っている。
お母さんは介護老人保健施設にいる。介護老人保健施設というのは病状が安定した人が、機能維持・改善のためのリハビリを中心とした介護を受け、在宅復帰を目指すところ。
病院と老人ホームの中間のような施設。施設長は医師だ。要介護1~5の方が対象。
なので、施設で受診できない病気や怪我は施設外の病院で診てもらう。お母さんの場合は整形外科と眼科は施設外へ通院。今日は昨夏に圧迫骨折した骨の経過観察だ。
受診の前にレントゲン撮影。金具のついた下着や服を着ていると検査着に着替えないといけないが、お母さんはもうブラジャーもしないし、肌着にカットソー。ズボンもゴム。なので、コルセットを外せばそのまま撮影してもらえる。
先生が「どう?調子。痛い?」
お母さん「痛いと言えば痛いし、痛くないといえば痛くないですね」(他に言い方ないかしらね)
先生「そんなに痛くないってこと?」
お母さん「・・・」(無視かい!)
レントゲンを見ながら。
先生「いいね、骨固まってるよ、ここ見て。他の骨とは違って潰れちゃってるけど、このまま固まってるからそんなには痛くないと思うよ」
お母さん「まだ生きられますか?」
先生「ええ?もちろんだよ、骨じゃ死なないよー(笑)あー、でも背骨が全部折れたら背中がすごく短くなっちゃうから、そしたら死ぬかもね」
お母さん「・・・」(お母さん、返事して!)
先生「だいぶいいから、次は3ヶ月後でいいかなー。」
クラークの女性「5月8日です」
先生「でね、僕もういなくなっちゃうから、次の先生にちゃんと申し送りしておくからね」
お母さん「先生、どちらにいらっしゃるんですか?」
先生「僕?川越の病院」
お母さん「川越?川越のどこですか。」(食いついた!)
先生「赤心堂ってとこ」
お母さん「川越街道のそばですね」(先生、ごめんなさい、話長くなるかも)
先生「えー?そう?」
お母さん「そうですよ、駅を降りたら右行って右ですよ」
先生「右行って右・・・ああ、確かに!詳しいね」
お母さん「昔その辺りで勤めていたんで」
先生「そうなんだ、どんなお仕事?」
お母さん「・・・」(お母さん!)
わたし「保険の外交ですー」
先生「あは、そうなんだねえ」
食いついたかと思うと、興味が失せるのかガン無視。これは何なんだ?認知症のなせる技なんだろうか?
2019年の65歳以上の人口は全体の28.4%だそうだ。そして、令和元年6月の厚生労働省老健局の資料では2012年度の高齢者人口に対して15%が認知症患者だったものが、2025年度には高齢者人口の20%が認知症を発症すると推計している。5人に1人だ。わたしが65歳になる2031年度にはさらに増えていることだろう。
これからは整形外科の先生でも認知症患者の相手、うまくできないといけなくなるね。
最近のお母さんはとても明るい。自宅にいるときよりも良い顔をしている。老健施設でもよくしてもらっているのだろう。
病院から施設に帰る時に自宅マンションの前を通ったけれど、帰りたい、家に入りたいとは言わなかった。「今は誰が住んでいるんだ?Aくん(わたしの弟、お母さんの三男)か?」とだけ。ちょっと複雑な気持ちになったけれど、きっとこれでいいのだ。

先日デンバーに住むお母さんのお姉さん、わたしの伯母ちゃんが送ってくれたダウンベスト。サイズも合っているし、色もよく似合っている。
次回の診察は5月8日の金曜日だ。N村先生、お世話になりました。あちらの病院でも益々のご活躍、お祈り申し上げます。