九州リーグそしてその先にあるチャレンジリーグの舞台を目指すヴェルスパ大分レディース。このチームをHOYOスカラブ時代からこよなく愛し、影ながら支えてきた知将アレッサンドロ・デル・ヨシマツ。
今週末に控えたチャレンジカップを前にインタビューを飾る人物として、これ以上の男はいないはずだ。
記者『ズバリお伺いします。ヴェルスパ大分は強豪熊本星翔に勝てますか?』
アレックス「あらゆることが起こり得る、それが恋愛じゃよ、サッカーじゃよ。」
この問いは知将に対して愚問すぎたものだった。
『では、強豪と呼ばれるチームが格下チームに負けることがあります。いわゆるジャイアントキリングはなぜ起こるのでしょうか?』
「街中を歩いておって、美女と呼ばれる女性が「え?なんでこんな男と・・・?」といった場面に遭遇することがあるじゃろ。あれがジャイアントキリングと呼ばれるものじゃ。しかしながら、ワシにはその起こし方はわからん。分かっておったらとっくに美女を捕まえておるわい!」
『えっと…サッカーにおいてのジャイアントキリングのお話を頂いてもよろしいですか?』
「おぉ、それは失礼した。ただ、クソ面白くない話になるが良いのかのぅ。
まず必要なのは小木矢作の精神で臨み、互いに褒めあうことじゃ。
強豪と戦うとなれば必要以上に力が入るもんじゃ、走ったりするもんじゃ。「無駄走り」と「無駄な走り」は違うんじゃよ。人間という生き物はスタミナが無限にある訳ではない。ここは自重するところ、行っていいところ、見極めることが必要じゃ。ただ、ヴェルスパには経験の浅い選手が多い。故に周りの声が必要になる。ここで重要なことは「褒め殺すことじゃ」、決して貶してはならん。褒めて、褒めて、「行ける!私も戦えるかも!」といった雰囲気を作れるかが試合序盤の課題になるじゃろう。
恋愛でもそうじゃろうが。好みど真ん中ではない女性でも「実は以前から気になってました」と告げられようならば、次の日から「あれ?」と気になり始めるもんじゃ。男とはそんなもんじゃ。男とは単純なもんじゃ。じゃから…」
『あ、すみません、お話の途中なんですが…レディースです、女性です。』
「…ワシは男じゃ!女の気持ちなんぞ分からん!分かっておったらとっくに美女を捕まえ…」
『えっと、簡潔にまとめますと、序盤は「この試合、私たちでも戦えるんだ!」といった雰囲気を作り出すため、互いを鼓舞することが大切ということですね。』
「うむ、その通りじゃ。次に重要なのはチームの長所を最大限に生かし、かつ、欠点を隠すことじゃ。
ヴェルスパの長所は(ピーーーーー)じゃ。じゃから、(ピーー)を(ピーーー)して(ピー)することが適切と言えよう。欠点の話をするのであれば(ピーーー)の部分は…」
『すみません、明かせないのなら話さないで下さい(笑)』
この問いに対しての知将の答えは疑問すぎたものだった。
「ここはオフレコな部分が多いんじゃ、仕方ないじゃろうが。
なら、要点だけ述べておこう。選手には「勇気を持って戦え」と伝えたい。もっとも重要なのはミスを犯さないこと。そして、数少ないチャンスを無駄にしないことじゃ。
そうじゃな、ちと分かりやすい話をしよう。いいか、ピッチを縦に4分割したとしよう。
①自陣ゴール付近のエリア、②自陣センターサークル付近のエリア、③相手センターサークル付近のエリア、そして④相手ゴール付近のエリアじゃ。
ミスを犯しては行けない確率は①では100%、すなわち100%の確率で成功するパスやドリブルでなければ選択してはいかんという意味じゃ。②は75%、③は50%、④は25%じゃ。要は自陣から遠ざかれば遠ざかるほどミスを犯してよい確率は上がるということじゃ。相手ゴール前④では、25%でも「行ける!」と自分自身で思えば、積極的に仕掛けるべきじゃ、シュートを狙うべきじゃ。
先に述べた「数少ないチャンスを無駄にしない」と矛盾するように感じるかもしれんが、そうではない。数少ないチャンスが訪れたとき、確率が低いかもしれんが、ゴールを狙うべき選択を恐れるなということじゃ。
恋愛でもそうじゃろうが。いいか、告白して「付き合えるか」「付き合えないか」は二分の一じゃろうが。しかし、告白しなければ0%じゃ。告白すれば…仕掛ければ…シュートを打てば何かが起こるかもしれんのじゃ。この気持ちがジャイアントキリングを起こすに最低限、必要なことじゃ。」
『これだけ語ることができて彼女がいないのが不思議やなぁ、あと、二分の一はちげーだろーがよ!…あっ、心の声が聞こえちゃいましたか?え、えっと…では、もし、アレックスがヴェルスパを率いて熊本星翔と戦うのであれば、どういった戦術を用いるのでしょうか?』
「うむ、熊本星翔は進学校と聞いておる。大学への進学を選ぶ生徒が半分を超える割合だそうじゃし、まずはチャレンジカップと同日に行われるセンター試験の影響で何人かが欠場になることを祈ろう。」
『最低な戦術ですね…』
「あとは中盤で試合を組み立てる7番村上選手、10番中嶋選手への対応じゃな。特に左サイドでの中嶋選手のドリブルは目を見張るものがある。1対1で止めるのは非常に困難なため、あえて4人のマークをつけようと考えておる。そうじゃ、大友中学が大空翼に対し、4人のマークをつけたアレじゃよ。6番の山口選手も遠目から狙ってくる力を持っておる。よって、この3人に4人ずつマークをつけ、相手の展開を膠着させるつもりじゃ。」
『膠着する前に…横着ですね。アレックスの国のサッカーは何人制なんですか!?』
「細かいことは言うなや。ちっちゃい男じゃのぅ。」
『センター試験に頼るあなたも十分小さいと思いますが…』
「まぁ、マークの話は置いといてじゃ。戦う姿勢を持たない選手はワシのチームでプレーする資格は無い。秘められた闘志も結構だが、相手に少しでもプレッシャーをかけたい、味方を奮い立たせたいと思うのであれば、ぜひ、ピッチ上でその闘志を全面に出して欲しい。プレーもそうじゃが、戦う姿勢に満足できなければ、ワシはその選手を二度と使わん。それくらいの覚悟で試合に臨んでほしいと思っておる。」
『妙に説得力が出てきましたね…それでは最後にチームの選手に向かって一言お願いします。』
「そうじゃな…ヴェルスパは諦めることがないチームだと思っておる。最後まで戦い続けるには相手のチャンスをできるだけ減らし、自分達のチャンスを最大限に生かすしかない。言葉にすると至ってシンプルじゃが、それが勝利を手にする鉄則じゃ。
格下のチームが強豪チームを倒す!こんな面白い勝負事が他にあるかよ!」
『ありがとうございました。九州リーグを賭けたは今週末にキックオフです。』
1月14日(土)チャレンジカップ1回戦
佐賀市健康運動センター天然芝
ヴェルスパ大分vs熊本星翔高校(10:30)