2位のヴェルスパ大分、3位の八代フューチャーズの自動昇格枠を争う直接対決。
負けると勝ち点が並び、かつ2試合消化数の少ない相手なだけに今節を落とすと非常に厳しくなるヴェルスパ。
――前節に引き続き重要な一戦となる今節、解説はイジッチャ・コジム氏にお願いしたいと考えています。
よろしくお願いします。
コジム:まず、最初に言いたいのは…
考えることは大切なことだが、考えるだけではなく実際に行動することが更に大切である。
ワイフの読んでいた雑誌の「恋愛特集」にこう書かれていた。
『いつか白馬に乗った王子様に迎えに来て欲しい(30代・会社員女性)』
数年前、アナ雪と呼ばれる映画だっただろうか。
王子のために王女が城を飛び出す昨今、会社員のあなたが家に閉じこもったところで白馬の王子様が迎えに来るわけがなかろう、自ら行動するべきだと思ったのだよ。
そこでレディース諸君にも言いたい。
勝ちたいと思っているだけの選手ではこの重要な試合に勝つことはできないだろう。勝ち取りたければ自らが考え、そして行動に移して欲しいものだ。
――ありがとうございます。
前回に比べ、スムーズに耳に入ってくる言葉をいただきました。それでは間もなくキックオフです。
試合は開始早々に動きを見せます。
相手陣内中盤右サイドでボールを受けた熊谷からバイタルに落ちてきた斎藤へと楔を入れる。逆サイドから斎藤に寄ってきた吉岡へとテンポ良く渡り、吉岡はショートドリブルからシュートコースを作り出し右足一閃。横っ飛びするGKのグローブの先を抜け、枠ギリギリに突き刺さった。今シーズン初ゴールが貴重な先制点となる。
コジム:サイドへと相手の意識を向けてからの早い中央展開。素晴らしい流れだったよ。
――更に松本の前線からのチェックからパスカット、こぼれた所をバイタルの三砂が拾い、デルピエロゾーン吉岡の前スペースへとラストパスを送り込む。
中央へと切れ込んだ後の吉岡右足、GKが一歩も動けない豪快なシュートを再び突き刺す。
コジム:先制後、ボールは回せていたものの詰めの甘さが出てしまった。
ゴール前釘宮のボレーは飛車のように真っ直ぐと舞い上がり、松本のコントロールシュートもポストの角に嫌われ、「香の車役は君たちではないと私だ!」と吉岡が魅せたゴールは圧巻だった。最金、ジャパニーズ将棋を覚えたので少し引用したくてね、歩歩歩。
――香車(きょうす)と読みますので、今日の主役と言うことでしょうか。
さて、2点リードで後半を迎えるわけですが…
コジム:現有戦力をいかに引き出し、相手を上回るのか。
それが前半、前線で起用した吉岡の2得点として表れた。首脳陣の素晴らしいチーム分析力だ。
「現状分析とその有効活用」において私が一目置いている女性の話は今後のチームの戦い方の良い例えになるだろう。ハーフタイムの間、少しそのお話しをさせて欲しい。
ある日、その女性は男性の運転する車と事故を起こしたのだよ。互いの車は大破したものの、幸いなことに2人は無傷だった。
――え?車の事故ですか?サッカーに関係があるのでしょうか?
コジム:だから、あなたは浅はかなのだよ。
私の話にはいつも意味があると思ってもらいたい。
女性:私たちは幸運ね、車はもうダメだけど私たちは幸いにも怪我はないみたい。
男性:そのようだね。
女性:車は大破、でも私たちは無傷、これって奇跡だと思わない。
きっと私たちをめぐり合わせる神様の演出だったのよ!私はそう思うわ。良かったら今度また会う約束ができないかしら?
男性:それは良い考えだ!私もこの神様の演出を歓迎するよ。
女性:それともう一つ奇跡が起きているの。見て、このダッシュボードに入れていたワインも無事なの。これは神様が「2人でお祝いをしなさい」という演出じゃないかしら。
そう言うと女性はワインを男性に手渡し、男性は頷きながらキャップを開け、半分ほど飲み干して女性に返した。
女性はワインを受け取るとキャップを閉め、そっと男性に返した。
男性:どうしたんだい?君は飲まないのか?
女性:えぇ、だって、もうすぐお巡りさんが来るもの。
――あっ!!
コジム:フットボールにおける勝利とは、様々な情報や行動、アイデアなどそれら全てを混ぜ合わせることで達成できるものであり、ぜひ後半はそのような戦いを見せ、相手を追い詰めて欲しいものだ。
――改めて知る女性の恐ろしさの奥深さですね。
危険な得点差と言われる2-0で後半を迎えましたが、試合を決定付ける貴重な次の得点はヴェルスパに入りました。
相手陣内サイドでの熊谷のパスカットからチャンスが生まれ、熊谷が「ワ、ワシの屍を超えていけ…」と倒れこみながらダイレクトで出したボールをライン際で受けた釘宮がCK付近まで侵入、中央から受けに来た斎藤へとターンしながら落とすと、サイドからゴール方向を向いていたリボーン熊谷へとダイレクトで落とす。
熊谷もダイレクトでライナー性のクロスをDFとGKの間に入れるとタイミング良く飛び出した三砂がワンバウンドしたボールを左足のダイレクトでGKの逆を突き、今日の"初シュート"をしっかりとゴールへ流し込みました。
コジム:吉岡と松本の入らないシュートが増える中、その二人を囮に三砂が決めたゴールは正に彼女が冷静に状況を分析した一撃必殺のゴールだった。
シュート数7の吉岡「せやな(笑)」
シュート数6の松本「せやな(笑)」
飛び出しとクロスに合わせたタイミングは共に完璧でしっかりとGKの動きを見た素晴らしいシュートだった。
この試合は一部中だるみした時間はあったものの、全体を通して非常にテンポの良い戦いだったように思える。
ボールも人も良く動き、相手のウィークポイントへ素早くボールが展開され、選手一人ひとりが自分の考えとチームの考えを融合させ、しっかりと行動していた。その行動に見合った結果だと私は思います。
――昇格を争う相手との直接対決に勝利したことは非常に大きいと思います。
次節トリニータ戦までは3週間空きますので、しっかりと疲労を取って欲しいものです。
コジム:実は今週末には福岡で佐久間一行のLIVEがあるのだよ。
ただ、同じ場所・時間に皇后杯九州予選も行われるため、どちらを観戦しようか非常に迷っている。柳ヶ浦vsヴィクサーレ沖縄は非常に魅力的なカードだ。
ただ、そんな迷いも日本に接近している台風が吹き飛ばし、白紙にするのだろうか。それはそれで寂しいものがある…
――台風とヴェルスパの今後の行方に注目と言うことで今回は締めさせていただきます。
それではまた次節。
○ヴェルスパ大分 3(2前半0)0 八代フューチャーズ○
得点者:吉岡(斎藤)、吉岡(三砂)、三砂(熊谷)