どうしても横浜駅西口のムービル(旧相鉄ムービル)で映画が見たくなった。平成18年5月の閉館を大々的に報じられたために、ほとんどのハマっ子は閉館したものと思っている。まして、相鉄から経営が東急レクリエーションに移り、一番の集客地域である相鉄沿線で広告を目にしなくなったからなおさらだ。12月に再オープンしたものの、行ってみれば何が変わったのか、少しもわからない。売店がコンセッションとやらになったぐらいで、今流行のシネコンに近づいた気配がない。チケットは2階の売場で購入するが、指定席制ではなく自由席だった。シネコンの良いところはチケット購入と同時に座席が確保される安心感にある。反面、伝統的な「入替なし」になっていて、途中入場するお客さんもいた。その意味で鑑賞する映画は「オリヲン座からの招待状」に決めた。浅田次郎の原作といえば、一杯のかけソバをはじめとして、涙腺ウルウルのストーリーに決まっている。日本的情緒を大切にしている作家だ。時代背景は昭和30年代とくれば、わかっちゃいるけど同年代に幼少期を過ごした私には、身につまされるものがある。京都・西陣の景気をもろに受ける下町の一角にあるオリヲン座。100席ほどの映画館が舞台だ。これを経営する老夫婦が閉館の案内と最終上映の招待状を出すところから話しが始まる。映画がテレビに人気をとられていくという雰囲気はニューシネマパラダイスと共通の何かを思わせる。純愛がテーマで、宮沢りえのためにストーリー展開がされていることを強く感じる。それに応えるかのような演技で「たそがれ清兵衛」とダブった。ラストには中原ひとみがその役を引き継ぐが、どうしてもその間の老朽化していく映画館をどう切り盛りしたのか納得できない状態で終わってしまう。伏線に「阪妻版無法松の一生」の映画のストーリーがからんでいるので、ご覧になられる前にぜひ無法松の一生を見ておいた方がいいし、戦後の復興期と、いじめや差別、偏見が当たり前だった時代の背景もあらかじめ知識にいれておいた方が感動のボルテージも違ってくる。とにかく映画好きなら一度は見ておきたい作品だろう。ともあれ、ムービル5には座席が300席はあるのに観客は6人。ちょっと経営的にやばい。オリヲン座もかくありなん。席は昔ながらの、前に人が座ると頭で見えなくなるようなフラットで同列型の並び方だ。背もたれも直角に近く、1時間を超えるとつらくなってくる。どうせなら、1列ずつ席を外し、前の列を半席分位置をずらすと、伸び伸びできていい。ほかには、2席ずつにして間の1席を荷物置き場にするなんてのも、買い物がてら横浜駅に来たカップルに受けるかもしれない。また、映画自体がそういう処理をしているのかもしれないし、禁煙や通路等が灯きっぱなしのせいかもしれないが、スクリーン上の映像が少々ポワンとボケている。それならこの際、ムービル全体を昭和30年代風に改装して、雰囲気をオリヲン座風にして、全体をレトロパークにしてみてもいいんじゃないか?GENTOのように中途半端ではなく‥‥と思う一夜だった。がんばれ!ムービル。
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