
この3連休は、私にとってもまさに春の嵐であった

まずは土曜日。お彼岸のお墓参りを済ませ、三田屋弾き語りの仕事は夕方5時入りで、5時半から3回ステージ。お彼岸だから法事も多いのか、お客様も夜にしては多い。張り切って歌い始めたのだが、音響機材のメンテがいまいちで、モニターが歌う度にブチブチと凄い雑音を奏でる


接触不良はその日の運だ

ああ…、お願いだから、そろそろ安心して歌える環境を整えて頂けんかいのう

男女一組のお客様が、結婚記念日でご来店下さったという訳で、お祝いのメッセージを添えて、ラブラブの曲『ラビング・ユー』をプレゼントした。どんな状況にもくじけず、心を込めて歌わにゃあかんのやでぇ~

と、自分に言い聞かせながら…。

日曜日
一応晴れてはくれたが、凄い風

山田直毅氏とのユニット『ラ・モンターニュ』で、芦屋マルクトの野外イベントに参加した。交通渋滞もありぃので、入りが少し遅れたが、なんとかステージには間に合った。曲もざっとは決めていたのだが、電子ピアノをセッティング中から、楽譜が風で舞う舞う

クリップで留めれば平気さっ

と思いきや、この日の突風には何の役にも立たず、しまいにはガムテープで固定させる有様。私が山田さんの歌の伴奏をするはずだった、マイフェアレディの挿入歌「君住む街角」も、楽譜が3枚で譜面台からはみ出る為に急遽カット

オープニングの「バラ色の人生」と「Yesterday Once More」だけは楽譜を貼り付けられたが、あとの「オリビアを聴きながら」と山田さんの歌で「地下鉄の切符切り」と「君は薔薇より美しい」そして2人の「ラストダンスは私と」「ろくでなし」はすべて楽譜なし


山田さんもさぞかし大変だっただろうと思うが、突風によろめきながら、踏ん張って歌い続ける私の目からは、絶え間なくポロポロと涙が溢れてくるのであった。いやはや、歌に感情移入したせいではなく、物理的?いや生理的現象で、紫外線と風のなせる業であった。ただ、ただ、昔のレコード大賞発表後に歌手が歌うシーンのように、マスカラやアイラインが涙で溶けて、タヌキの目になっていたりした、あの状況は避けたいもんだとひたすら祈りながらのステージであった。風と戦いながらの30分は、長かった…

月曜日
時々登場するナオの○十歳のバースデーパーティ。新神戸のクラウンプラザホテルのバーを貸し切りだ。クリスマスパーティもここであったが、あの時とは顔ぶれが全く違う。ナオの付き合いの広さにおののく私であった。
なんとも高級感あふれるというか、重厚な空気に包まれ、私は緊張してしまった。知らない人達との相席。しかも中にはフランス人の若い男性も2人(超ハンサム

)。人見知りの激しい

私だから、最初のうちは携帯を触ったりしながら、開宴をひたすら待っていたが埒が明かず、同席の方々の話の輪に、自ずと入り込んでいくしかなかったのだった。前の2人の女性は、ナオと同じジャズボーカル教室の生徒さんらしい。フランス人は、一人はフランスとドイツのハーフ、もう一人はスペインとフランスのハーフ。大阪と神戸でフランス語の講師をしているらしい。私もだんだんと図太くなってきて、身振り手振りも交えながら、下手な片言英語でいろんな会話を楽しんだ(苦しんだ

)。
そして、ナオが生バンドで5曲歌った後、「私、お色直ししてきますので、その間、上野山みどりさんの、シャンソンの弾き語りをお楽しみ下さい


」と、いきなり指名されたのだ。たくさん歌手がくるから、みんなに一曲ずつ歌ってもらうわと聞いていたので、まあ、余興コーナーがあるのねくらいにしか考えてなかったのだが、実際には私の他には、神戸ジャズコンテストで準グランプリを獲得したジャズシンガーだけであった

なんだかクリスマスの時のような、訳の分からん盛り上がりはなく、紳士淑女らの拍手と熱い視線を一斉に浴びてしまい、トイレに立とうとして立ち上がっただけの私は、そのまま腹をくくってステージに向かった。前とピアノの配置も違い、横を向いて歌わなければならない。リクエストの「百万本のバラ」のイントロを弾き、歌いだそうとしたその時、ピアノ伴奏が狂い始めた

なにかが変だ

絶対変だ

でも原因不明。コードも次々とおかしくなる

あってはならない事だが、演奏を中断してもう一度初めからやり直した

皆さんは暖かい拍手を下さったが、心の中は惨めさで一杯

なんとか多少誤魔化しながらも歌い終えた。どんなに動揺し、ピアノが変になろうと、不思議と歌は間違えずに歌えるもんだ。「すみませ~ん

」と司会者に謝りながら帰ろうとすると、「もう終わりですか

ナオさんの着替えがまだなようなので、時間あるんですけどぉ

」と言う。名誉挽回じゃ

てなもんで、すぐさまカーペンターズの曲をやらせてもらった

そして席に戻ったのだが、恥ずかしいやら何やらで、穴があったら入りたい心境とはこの事だ。
3時にお開きとなり、同席したフランス人の彼らとしばし話した後、握手をして店を出た。頭の中は、イントロの後の箇所で、いったい何がどうなったかを知りたい気持ちで一杯だ。即行バスに飛び乗り、一目散に家に帰った私は、すぐさまエレピにかじりついた。ようやく原因が判明した

右手の場所を間違えていたのだ


オクターブ低い為に響きがいつもと違って濁った音になり、緊張していた私は、その奇妙な響きに一瞬にしてパニくってしまったのだった

椅子の高さやマイクスタンドの位置やらピアノの角度やら、言い訳を言い出したらキリがない。なんだか、トラウマになりそうな悲惨な出来事であったが、時間は巻き戻し出来ないのだから、とにかく反省材料にしてもっと精進する方向に気持ちを立て直そうぞ

とはいいつつ、この3連休は応えましたがな…、ノウテンキの私でも…