休暇の初日に足首をひねってあまり動けなくなってしまったため、読書で気を紛らわせて時間を潰しました。
この『アルビオンの夜の女王』は2年ほど前に買って読んだものだったのですが、内容をほぼ100%忘れていたので読み直してみました。まあよくあるティーン向けのライトノベルと言ってしまえば身も蓋もないのですが、実にそういう感じの作品です。『アルビオン』というタイトルの通り舞台はイギリスで、主人公は(昼の)女王陛下の双子の姉で魔力を持つというセシア。アルビオン王国は、魔女狩りをするエウローペ大陸とは異なり、魔力を(一般には極秘で)護国の柱とし、魔術関係の問題にあたる青薔薇騎士団という戦闘集団とファウストという魔術師を集めて魔術研究をする機関を擁しており、セシアは青薔薇騎士団のトップを務める「夜の女王」ということになっています。彼女は契約者を3体(吸血鬼、人狼、フランケンシュタイン博士に改造されてしまった人間)従えて、日々人間に悪さを働く悪魔や魔物と戦っています。「黒世界」と呼ばれる悪魔や魔物たちの住む世界から後継争いが嫌で人間界に逃げてきたという魔王の第4王子ラゼリオン(最初は「ファントム」という偽名を名乗る)がセシアを気に入ってしまい、真名を明かして求婚します。このせいで他の王子たちが次々人間界にやってきて問題を起こす、というのが大まかなストーリーです。
ラゼリオンが自分の強大な力を暴発させてむやみに死体の山を築かないように引きこもり、常に読書をしているという性癖と、意外にも真剣にセシアを愛しているということが結構いい味を出しています。セシアの方は典型的なツンデレ不器用キャラですが、だんだん彼に惹かれていく辺りはまあ少女小説の王道ですね。ただ、5巻も続いた割には結婚もしないし、魔王継承問題も全然解決しないというあまりすっきりとした簡潔でないことは残念です。セシアの執事であり、謎のハンドパワーを持つ彼の正体も謎のまま、というのも残念。
娯楽として結構読めるけど、さほど印象に残らないというのが正直な感想です。だから2年かそこらでストーリーをほぼ忘れてしまっていたのでしょう。
マンガもそうですが、ライトノベルも玉石混淆ですね。少女小説の中でも「おおこれは!」と印象に残り、思わず折を見て読み返したくなる作品もあります。私にとっては、氷室冴子の『なんて素敵にジャパネスク』と雪乃紗衣の『彩雲国物語』あたりがそういう作品です。谷瑞恵の『伯爵と妖精』も結構好きです。最近では石田リンネの『おこぼれ姫と円卓の騎士』がお気に入りです。次巻で完結するらしいので、そうしたら書評でも書こうと思ってます。